備前 VS. 萩?

メリクリ。

株価の高騰&クリスマスの浮かれ気分も良いが、かなり気になるニュースが…それは陸上自衛隊の弾丸1万発が、南スーダン国連軍に提供された事で、これは明らかに「武器輸出三原則」に抵触する物だし、持ち回り閣議と云う余りにも簡単な遣り方決定した事、そしてその決定理由が「例外措置」だった事に重大な危惧を覚える。

国連からの弾丸の提供要請?…笑わせる。日本が断ったって、アメリカが出してくれますよ。こんな調子で「例外」を積み重ねる事に拠って、歯止めが無くなるのは火を見るより明らか…徹底的な議論が望まれる。

さて先週は東京にも初雪(初霰)が降り、寒さが厳しくなって来た。

真冬にはマイナス15度に為るニューヨークの方が、温度的には圧倒的に寒いのだから、日本の寒さなんてヘッチャラだろう…と良く思われるのだが、豈図らんや、日本に来たら来たで「日本は寒いなぁ…」と熟く思う。例えば冷蔵庫を「解凍機」として使うエスキモーに取っては、日本の寒さなんて鼻糞レヴェルだろうから、と云う事は、皮膚感覚とは何しろ「ネイティヴ」な物かも知れない。

そんな寒い中マヨンセと向かったのは、移転の決まった松濤の観世能楽堂で開かれた、関根祥六師の会「閑能会」。

時間の関係で、関根師のお謡「蒔之段」とお孫さん祥丸君の能「舎利」だけを拝見したが、関根師もお元気で、祥丸君に至っては若々しい舞と共に、とても芸大2年生とは思えない落ち着きと声の素晴らしさに感服した。

そして連休中は、夫婦で「西への旅」に…先ず向かったのは、夏以来の再会と為る備前の陶芸家K氏の元だ。

この夏闘病中だったK氏は(拙ダイアリー:「備前でのご馳走」参照)、体調も回復され、お元気なご様子で一安心。居間に通され、先ずは来年早々に地元の百貨店での「新作展」に出品される茶碗を拝見すると、その後は早速この日のご馳走「猪」を頂く事に。

先ずは「猪肉の網焼」…ドングリだけを食べて育った猪肉は全く臭みが無く、生姜醤油や塩で頂くと、サッパリして居て幾らでも食べられる(笑)。その後は鍋と為り、肉、牛蒡、豆腐、青菜を味噌出汁で頂くが、これも幾らでも食べられるので本当に困る(笑)。

最後は3人とも白飯に汁、具共ぶっ掛けての「猫飯」をし、大満足で食了。そして、先程拝見したモダンな新作2腕と力強い旧作の3碗が、お菓子と共に運ばれて来た。

今回のK氏の新作は、何処かインダス文明の土器を思わせるプリミティブな外観だが、然しK氏が崇拝する長次郎の趣きも垣間見えるこのシリーズは、K氏の溢れ出る創作意欲の賜物で、恐らくこれから益々進化をして行くに違いない。また旧作の方は、筆者が父の死の時に東京の展覧会で観た頃のシリーズ作品で、K氏の傑作の一つ。ズッシリと手に馴染む迫力満点の茶碗で、美味しいお茶を頂く。

食事後は、大音響でジミ・ヘンやマリア・カラスを聴いたり、古美術界の四方山話をした末、K氏所蔵の茶味深い涎物の大名碗でもう一服頂き、次回迄のK氏の健勝を祈りながら備前を後にした。

そして我々の「西への旅」は、その後岡山からの新幹線「さくら」を雨のそぼ降る新山口で降り、車で萩に向かう…マヨンセの実家に滞在する為だ。

萩での楽しみは、陶芸家一家のマヨンセの家族の元気な顔を見る事と、矢張り「食べ物」(笑)…で、萩と云えば魚だが、先ずのご馳走はお寿司。

だが、楽しみにしていた頑固オヤジの店「Y」(拙ダイアリー:「『頑固オヤジ』と『軟弱言論テロリスト』参照)が何と閉店(廃業?)して居て、仕方無く別の店から出前を取って頂いたのだが、あれだけ昼間に猪を食べたにも拘らず、これ又大層旨く、別腹を地で行きパクパク食べて仕舞う。

翌日はお馴染みの饂飩屋「どんどん」でお昼を食べた後、昨年102歳で逝ったマヨンセの祖父をお詣りし、その後は余りの寒さに「何故、萩で?」と思いつつも、ユニクロで12点1万2000円(!)の買い物をする。

そして夜は、河豚尽くし…河豚は下関が有名だが、その下関の河豚の殆どが萩から行って居る事からも分かる様に、萩の河豚は本当に美味しい。鉄皮から始まり白子、鉄刺や唐揚げ(個人的には河豚は、「唐揚げ」が一番旨いと思う)、そして鉄ちり、雑炊迄河豚コースを堪能した。

因みに、何故河豚の皮を「鉄皮(てっぴ)」、刺身を「鉄刺(てっさ)」、鍋を「鉄ちり(てっちり)」と呼ぶか、ご存知ですよね?…河豚は「当たると死ぬ」事から「鉄砲」の別名が有り、「鉄砲の刺身」略して「鉄刺」、「鉄砲のちり鍋」略して「鉄ちり」なので有る。ここ最近「王将」や北九州の銃撃事件が有ったので、念の為。

さて、此処迄読み進んだ賢明な読者には、今日のダイアリー・タイトルの「備前と萩の『対決』」が、決して「焼物」の事で無い事は明白…最高の備前の茶碗と最高の萩茶碗が比べられ無い様に、最高の備前でのご馳走と最高の萩のご馳走対決もまた、当然甲乙付け難いので有った。

「緋襷」も良いけど「貫入」も、「猪」も良いけど「河豚」もね(笑)…幸せな西への旅でした!