信仰の「フィギュア」。

気が付けば、何と今日から3月…そして東京下見会が、無事終了した。

今回も2日間で180名に及ぶ方々に来て頂き、レギュラーの「日本・韓国美術」セールと、アジア宗教美術の特別セール「信仰の美」の両セールからの、ハイライトを観て楽しんで頂いた。

今回の展示作品はと云うと、能面や鼓胴、鎧を含めたレギュラー・セールからは、目玉の紙本著色八曲一双の大作、「津島天王祭礼図屏風」(18世紀初頭:30万ー35万ドル)を展示。

愛知県天王川で500年以上の歴史を持ち、かの信長も愛したと云うこの川祭りは、厳島の「管絃祭」と大阪「天満天神祭」と共に三大川祭の一と呼ばれ、毎年7月の第4土曜の夜に行われる「宵祭」と、その翌朝の「朝祭」でクライマックスを迎える。

右隻には津島五社の舟に飾られた、盛大な赤い提灯も華やかなその「宵祭」、左隻には祇園祭の山鉾の如き、能の演目を象った山車を載せた舟が描かれ、両河岸では歌舞舞台や象の見世物小屋、出店等、当時の風俗が活き活きと描かれる。色の状態も頗る良く、特に微に入り細に入り描かれた山車の文様等は、この屏風の注文主の嗜好がハッキリと窺える素晴らしい出来映えだ。

また「信仰の美」からのハイライトは、セールのトップ・ロット、明永楽年間の薬師如来坐像(15世紀:200万ー250万ドル)や、サックラー(スミソニアン博物館サックラー・ギャラリー)家からの出品で有る大理国の釈迦如来坐像(11ー12世紀:150万ー200万ドル)、そして鎌倉期阿弥陀如来坐像(12ー13世紀:50万ー60万ドル)の、「日中三金銅如来坐像」の揃い踏み。

然しこう並べて観ると、中国と日本では同じ仏教を基とする金銅如来坐像でも、こんなにもテイストが違うのかと思う。特に永楽年製の薬師は、現在中国マーケットの「ストライクど真ん中」な作品なので、落札価格に期待が持てそうだ。

また絵画の方では、鎌倉期(13ー14世紀)の「金剛薩埵坐像」(40万ー60万ドル)や、南北朝期(14世紀)の「春日宮曼荼羅図」(10万ー15万ドル)が展示され、個人的には「日本神道代表」の宮曼荼羅がオススメで有る…欲しいっ!

と云う事で、「信仰の美」セールの下見会は無事終了した…が、今日のダイアリー・タイトルを覚えている賢明な読者なら、今日の本題はこのオークションでは無く、信仰の「フィギュア」で有る事に気付いて居るに違いない。

さて先週、インフルエンザに苦しめられて居た或る日、筆者が何時も「憂国」の想いを共に語り合って居る或るアーティストから、「孫一さんもきっと気に入る、プレゼントを送りました!」とのメールを受け取った。

そしてその小包が届き、早速開けて見ると、其処には何と「空也」が…。

あんこ好きの筆者へのプレゼントで「空也」と云えば、それは云う迄も無く「最中」…では無く、それは「空也上人像」のフィギュアなので有った!

オリジナルの「空也上人像」は京都六波羅蜜寺所蔵の重文で、運慶の四男康勝の作とも伝えられる鎌倉彫刻の傑作。念仏を唱える口から「南・無・阿・弥・陀・仏」の六体の阿弥陀如来が現れた、と云う伝承をリアリスティックに表現した、写実彫刻の粋で有る。

その「空也上人像」を克明に写したこの18cm.程の大きさのフィギュアは、説明文に拠ると18のパーツから為り、いやこれがホントに良く出来て居て、早速神保町の我が家の「床の間スペース」(本棚と本棚の間の壁空間)に飾って有る山本糾の写真作品「聖滝」の下に古材板を敷き、その上にこのフィギュアを飾って見ると、これまた何とも味が有って、スゴく良く見える!

なので、この空也上人フィギュアのクローズ・アップを写メで撮って、ニューヨークで留守番中のマヨンセに送ってみたら、返事が直ぐ来て云うには「これ、次のオークションに出る作品?」…フィギュアの恐るべき精巧さが窺えるだろう。

その後、延期された検査前日の静かな夜、このプレゼントの贈り主と近所のバーで相変わらずの憂国談義やら、「もう1つのフィギュア」(笑)浅田真央話等をして過ごしたが、その日が偶々「2.26」だったのも何かの縁。

そして昨夜は昨夜で、古典芸能家元と三宿の寿司屋Kで食事。Kでも結局日本の行く末に関する話に終始したが、その前の晩、今ストーンズと来日中のダリルがY氏と共にKに来た事を聞き、これまた吃驚。

最近NHKの会長や経営委員、元首相や首相補佐官やらの、信じられない軽薄・低レヴェルの舌禍事件が多いが、この空也上人の様に阿弥陀様の如き有難い言葉を口から吐き、市井の人々に尊敬されるリーダーの登場を心より望みたい。

無理だろうなぁ(嘆)。