「来ちゃった…」。

今日は何と、筆者とマヨンセの10回目の結婚記念日。我ながら良くぞ10年も持った物だが、これも全てはマヨンセのお陰…「感謝 」の一言に尽きる。

そして今日の話題は、結婚記念日には「相応し過ぎる」話題なので、悪しからず(笑)。

さて、火曜の夜に短期滞在の日本から帰って来たニューヨークには、信じられない事に再び「雪」が舞い、その上昨日は米国内地方都市に日帰り出張…国内と云っても、飛行機で4時間も掛かるのだから、もう「ゆーとぴあ」状態で有る(「もう、イヤッ!」って事だ)。

然し、今回の超短期日本出張での幸いは、ANAの機内映画ラインナップが非常に良かった事で、行き帰りに観た4本はと云うと、「アメリカン・ハッスル」「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」「47RONIN」、そして「小さいおうち」で有った。

この4作は何れも其れなりに面白かったのだが、先ず「アメリカン・ハッスル」は俳優陣の演技が素晴らしい。特に大好きなエイミー・アダムズとジェニファー・ローレンス(2人共、「獅子座の女」だ!…拙ダイアリー:「ワタクシが『獅子座の女』に弱い理由」参照)は、全く違うタイプだが綺麗な上に個性的、そして「ヅラ」を付けたハゲデブ親父で、全然カッコ良くない癖にその女優2人を妻と愛人にして居る詐欺師役の、クリスチャン・ベールの演技も中々良い。

次の「ウルフ…」が個人的には1番面白く無かったのだが、それは単にスコセッシ作品だからかも知れないし、レオ様の演技が「ギャツビー」同様一寸過剰だったからかも知れない。

「47RONIN」は思いの外面白くて、彼処迄「忠臣蔵」を弄ってSF化した力量はスゴく、称賛されるべきだと思う。実は筆者はこの作品の脚本が出来た時に読んで居て、それは一寸した時代考証を制作会社に依頼されたからなのだが、完成版を観てみると時代考証もへったくれも無かった(笑)。

そして「小さいおうち」は、期待しないで観たのが良かったのか、ストーリーは何と無く有りがちと思ったが、倍賞千恵子松たか子、そして「カンヌ」を獲った黒木華の演技が中々宜しくて(然し何故か、室井滋が名優「ヘレン・ミレン」に見えて困った:笑)、ちょっと涙して仕舞った。

さて、以上今回ANAで観た4作品だが、これらの作品には偶然にも「隠された共通点」が有った…それは「浮気」だ。

アメリカン…」の主人公は妻と愛人を持つ。「ウルフ…」の主人公は、株で大金を得て女と遊び捲り、妻に愛想を尽かされる。「47…」の吉良上野介浅野忠信)には妖女の愛人が居ながらも浅野内匠頭の娘を貰い、そして「小さい…」では、主婦(松たか子)と夫の会社の同僚との恋がテーマだからだ。

と云う事を踏まえて、此処からが今日の本題…「カニエ」で有る。

「『カニエ』と云えば?」と聞かれて、「ウエスト」と応える人は若い。その反面、「ケイゾウ!」と応える筆者の世代はハッキリ云ってオッサンだが、先日その大好きだった超個性派俳優の蟹江敬三が、69歳と云う若さで亡くなった。

蟹江の存在感は何時でも特異で、この人が刑事だったり殺人犯だったりするだけで、画面がギュッと引き締まったが、筆者にとって蟹江と云えば「熱中時代」のお巡りさん役と、何と云っても「Sweet Season」での松嶋菜々子の父親役に尽きる。

この「Sweet Season」は1998年にTBSで放映されたドラマで、不倫カップルを演じる主人公に、連続ドラマ初主演と為った松嶋菜々子椎名桔平、松嶋の両親に蟹江敬三市毛良枝、椎名の妻をとよた真帆が演じて居る。

しかしこのドラマは、配役から想像される所謂「トレンディ・ドラマ」とは一線を画して居て、娘の不倫と父親の過去の不倫、長男の死、隠し子の登場、記憶喪失、離婚の修羅場、そして其れ等の事件に因る双方の家庭崩壊と再生がテーマの、重くも美しい「不倫純愛」ドラマだ。

が、何しろ当時人気抜群だった松嶋菜々子が、イメージ・ダウンを恐れずに上司と不倫をする女子社員役を演じた事と、サザンオールスターズのテーマ曲「Love Affair〜秘密のデート」が話題に為り、筆者も毎週欠かさず観て居た程の人気だった。

蟹江の娘松嶋は、会社の上司で妻帯者で有る椎名と不倫(彼等に取っては「純愛」)をして居て、蟹江はそれを止めさせようとするが、実は自分も若い頃地方に単身赴任中に愛人を作った過去が有り、娘も其れを盾にして反発して居るので、強く出れない。

ドラマではその後、蟹江の浮気が切っ掛けで長男を亡くした事、その浮気相手に子供が居た事等が視聴者に知らされるが、遂にはその息子(井ノ原快彦)が訪ねて迄来ると云う暗目のドラマの中で、蟹江はその父親役を好演して居る。

然し、然しで有る…蟹江の演技も然る事ながら、実はこのドラマで最も素晴らしいのは松嶋菜々子が発する、今日のダイアリー・タイトルと為って居る台詞、「来ちゃった…」なのだ!

或る日椎名は、2人だけの初めての旅行に松嶋を京都に誘う。その誘いに松嶋は悩むのだが、新幹線の発車ベルが鳴っても松嶋は席に現れず、椎名は居ても立っても居られずに席を立つと、其処へ松嶋が現れ、椎名の眼を見ながら一言だけ「来ちゃった…」と告げる。クーッ、その時の松嶋と彼女の台詞が、もう史上最高に可愛い過ぎるのだ!(結婚記念日だと云うのに、興奮状態で申し訳有りません:笑)

男なら一生に一度位は、当時の松嶋菜々子レベルの可愛い女の子を「道為らぬ」旅行に誘って、来るか来ないかヤキモキした末に「来ちゃった…」と云われてみたいのでは無いか?若し云われてみたくない男が居たら、云っちゃあ悪いが、そんな奴は「男」じゃ無い!(興奮冷めやらず…:再笑)

誠に「結婚記念日」に相応しい話題だが(笑)、機内で観た「浮気」映画に拠って思い出された、この台詞…名優蟹江敬三氏のご冥福を祈りながら、また自戒を込めながら、そしてマヨンセと周りの人々に感謝しながら、今日はこの辺で。