誰も寝ては為らぬ…いや、寝ては居られぬ。

知らぬ間に今年も3/4が終わって仕舞い、今年の、そして人生の秋も中盤…くぉら、責任者出て来い!

…と、此方も秋が近付いて来た先週のニューヨークは、第266代ローマ教皇フランシスコの「Papal Visit」が有って街中大騒ぎだったが、今週は国連総会が有って道路渋滞が酷い。

序でに時期大統領選のディベートが始まって居るが、偶に見てみると今回程人材に乏しい選挙も無く、トランプが支持率トップの共和党等勝てる訳も無いだろうが、かと云ってヒラリーが超素晴しいかと云えば、そんな事も無い…何処の国も政治家の人材不足問題の根は深い。

そんな中仕事の方は、某有名外国美術館の購入委員会に数十万ドルの巻物や、数億円クラスの大物屏風が掛かったりと何故か順調(笑)…人生とは皮肉な物で有る。

一方夜の方もそれなりに忙しくて、建築家・音楽家・ファッションデザイナーとの焼肉から、アート・ロイヤーと食べた焼鳥、クラブ活動(音楽の方です)が目的の日本からの友人とのステーキや、現在大きな仕事を共にしている不動産会社社長との天麩羅迄、思い出すだけでもお腹一杯。

そして我が「マロンちゃん」の方も、例えば今やNYCで大人気の日本発祥ケーキ店「L」のモンブランやガトー・マロンを頂くが、矢張り甘過ぎて日本の「マロンちゃん」には敵わない…が、季節モノとして秋を感じるには充分だ。

また 僕に取って秋と云えば、「春眠」為らぬ「秋眠暁を覚えず」で、寝苦しさも影を潜めた気候の良さに、眠りに落ちるのも早ければ、かと云って朝も起き辛いのに、最近「寝ては為らぬ!」とオニの様な命令をする、冷血極まりない絶世の美女と出逢った…ご存知「トゥーランドット」で有る(笑)。

先日メトロポリタン歌劇場で観た「トゥーランドット」は、パヴァロッティ等で有名なテノールのアリア「Nessun Dorma(誰も寝ては為らぬ)」は口ずさむ事が出来る程聞いた事は有っても、僕に取っては実は初めての体験だったのだ。

何時も思うのだが、歌劇場と云う場所は、コンサート会場やイヴェント会場、映画館や演劇の舞台とは、何処と無く雰囲気が異なる。それは一寸したスノッブ感なのか、はたまた芸術性の違いなのか…僕もニューヨーク或いはヨーロッパでは、オペラに行く時だけはネクタイをして居る気がするし、他の客を見ても、NYフィルやカーネギーのコンサートの時よりも、フォーマルな出で立ちの人の数が確実に多い。

さて満員の劇場のシートに辿り着き幕が開くと、ハナからフランコ・ゼフィレッリのプロダクションの素晴らしさに心打たれる。そして「中国版『じろりんちょ』かぐや姫」の如く「3つの質問」を求婚者にし、間違えると殺して仕舞うと云う冷血無比な姫君トゥーランドットは、韃靼国の王子カラフの名を探し当てる為に民達に「寝ずに探れ」と命令を出し、それを受けてカラフが第3幕の冒頭で名アリア「誰も寝ては為らぬ」を披露する。

その後、美しくも味わいの有る歌声を持ったHibla Gerzmava(トゥーランドット役のChristine Goerkeより、素晴らしいと思った)演じるLiuの献身に因り、冷血姫は愛に目覚め、カラフは勝利を収める(Vincelo!)…と云う愛のドラマ「トゥーランドット」は、「寝ては為らぬ」等と云われる迄も無く、優れた出演者達とオーケストラの気合の入った演奏、そしてプロダクションの素晴らしさを以ってして、とても寝る暇など無い非常に充実した舞台で有った。

そして今回、初のオペラでの生「誰も寝ては為らぬ」を聴いて改めて思い知ったのは、ルチアーノ・パヴァロッティと云う歌手の異次元超え的スゴさだ(→https://m.youtube.com/watch?v=rTFUM4Uh_6Y)。

こんな歌声を聞いては「誰も寝ては為らぬ」、もとい、誰も寝ては居られぬ(笑)…それにしても初「トゥーランドット」、最高でした!


ーお知らせー
*Gift社刊雑誌「Dress」にて「アートの深層」連載中。10/1発売の11月号は「秘すれば花」な「春画」に就て。