パワフルで高品質、驚愕と期待の「続編」。

日本は「シルバー・ウィーク」だったそうだが(こんな名称は初耳だけれど、何とも羨ましい…)、此方の先週末はと云うと、改装中の顧客のペントハウスを見学に行き、其処のルーフトップ・ガーデンにインストールされたパトリック・ブランの「緑の壁」を観たり、現代美術家のアトリエを訪ねて新作を観た後、イタリアンを突きながら近い将来発表する「マニフェスト」を語ったり。

或いは最近知り合った某有名ブランドのデザイナーT氏に、ミート・パッキングの店舗で見立てて貰いながら、フィッティング・ルームで「人生最長」の試着時間を過ごした末、年に一度の服の買い物をする。ここのブランドはシンプルで品が有るし、僕の体型にも合うので大層気に入りました…Tさん、有難う御座いました!

そして週明けは、コロラド州デンヴァーに出張…大きな仕事が有って、この土地には昨年から何回か訪れて居るのだが、何時も運転を頼んで居るドライヴァーのRから、行く度に「『Sushi Den』に行ったか?」と聞かれて居て、最初はNYに在る行き付けの「寿司田」の支店かと思ったら違って、どうも店名は「Sushi "Den"ver」の略らしい。

「然し正直云って、アメリカのど真ん中の海も無いロッキー山脈の麓の街で、一体誰が寿司を食いたいと思う?然も僕は日本人だよ?」とRに云っても、「私の顧客には『Sushi Den』で食べる為だけに、自家用ジェットで他州から来る人も居る位だから、一回食べて見ろ」と云い続けて居たのだが、今回顧客と美術館学芸員のお陰で、漸くその「伝説」に触れる事が出来た。

「Sushi Den」(此処のDenは「伝」だった)は市街地から離れた住宅街に在る2階建ての巨大な店舗で、隣接するバーと共に結構お洒落な造り。そしてメニューはアメリカ地方都市の和食店に有り勝ちな、餃子から寿司、ステーキからラーメン迄揃って居て、実際かなり不安に為る。

…が、出て来た寿司は、流石日本から西海岸経由で直送された魚を使って居るだけ有って、ヅケ、トロ、炙り秋刀魚、鯵、小肌、平目等文句無く美味しく、結局デザートのバナナ・クリーム・パイとコーヒー(笑)迄一気に堪能して仕舞った。デンヴァーの寿司、恐るべしで有る。

さて此処で話はニューヨークに戻り、最近観て印象に残った3つの展覧会を紹介したい。

先ずは、Scholten Japanese Artの「20th Century Japanese Prints & Paintings, the 15th Anniversary Exhibition」(既に終了)…開廊15周年記念展の本展では、橋口五葉や山村耕花の新版画や、恩地孝四郎の創作版画が並び、その質の良い擦りと珍しい絵柄に驚くと共に、自分が大正モダニスムの構図や画題が大好きな事を再確認する。

また、チェルシーのPaceで開催中の展覧会「Chuck Close: Red Yellow Blue」では、75歳とは到底思えないクロースの、見応えたっぷりのパワフルでカラフルな作品に魅了される。特にマルティプルの連作作品は、喉から手が出る程欲しく為る位超魅力的…が、僕の財布が許さないのは必然(桁が違う… に、決まってる:涙)。

そしてロウワー・イーストサイドに在る、Shin Galleryで開催中の2つの展覧会が何しろスゴい。その1つ、バルデッサリの「Come, Sweet Death」も素晴らしいが、隣接するスペースでの展示「Salon de Mass-age」が、これまた近隣から苦情が出る程の「新聞沙汰」に為る位にクレイジーなのだ!(笑)

本展は、ギャラリー・スペースをその侭超リアルでエロエロな「Chinese Massage Parlor」に設えて仕舞い、パーラーの床や個室マッサージ室の壁に、荒木経惟とRudolf Schwartzkoglerのセクシー且つ危険な香りがプンプンと漂う写真作品を展示すると云う、普通の人が知らずに立ち寄ったら、直ちに「エッチな行為」を期待する造り(笑)に為って居るのだ…11/1迄開催して居るので、是非足を運んで頂きたい。

さて、子供の頃から大の映画好きだった僕は(拙ダイアリー:「クニタチ・シネマ・パラディッソ」参照)、物心着いた頃にはヴィスコンティトリュフォーベルイマンやアントニオーニ、延いてはパゾリーニ迄観て居たし、大学生に為ると蓮實重彦先生の授業を取ったりして、アート系フィルム・スノッブと為り、ハリウッド大作やアクション物等(007シリーズを除く)は「下らん!」と切り捨てて居た。

そして前回の日本滞在でも、某美術館理事のフランス文学者の方とルノワールやエリゼ等映画話で大層盛り上がったりしたが、この方の様に勿論上には上が居るし、それと同時に、恥ずかしながら例えば「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」と云った良く出来たパニック物や、上記007シリーズ等は、変装してでも観に行きたい程好きだったりする自分も居たりする(笑)。

で今日のテーマは、最近観てヤラれて仕舞った2本のエンターテイメント作品の件…況してやこの2本はシリーズ物の「続編」映画だったので、尚更弱って仕舞ったのだが、その2本とは「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」と「マッドマックス 怒りのデス・ロード」だ!

各々、シリーズ5作目と為る「ローグ・ネイション」と4作目と為る「デス・ロード」だが、何しろ双方共に脚本が相当素晴らしい。両作品共、物語は入り組んで居るが冗長で無く、登場人物達の個性も一際光る。

俳優陣も然りで、マックス役のトム・ハーディやワイルドなセロンも良いが、「ローグ・ネイション」のイルサ役のレベッカ・ファーガソン(美しい…)やベンジー役のサイモン・ペグ、「デス・ロード」のニュークス役のニコラス・ホルト等の脇役の演技が素晴らしいし、子供を産む道具と化した「Wives」達が今売れっ子の美しいモデル達なのも、個人的には誠に嬉しい(笑)。

また特に「デス・ロード」では、車両や砦のプロダクションや衣装、黒魔術、或いは山海塾的な白塗りや黒オイルでの顔のメイク、死も恐れぬ熱狂性宗教感、環境汚染に因る不具者達迄、その独特の世界観と世紀末的アート感が徹底的に描かれて居て、飽きない処かドンドン引き込まれて仕舞うスピード感と悪魔的魅力を持つ。

また「ローグ・ネイション」の方も、「MI」シリーズを一応全作観て居る者に取ってもかなり面白い方だったので、監督は誰かと思ったら、何と名作「ユージュアル・サスペクツ」でアカデミー脚本賞を獲ったクリストファー・マッカリーで、此方も大納得。

そして「続編」はオリジナルよりも質が劣るのは普通で、例外としては「ゴッドファーザー」や「ピンクパンサー」、「007」シリーズ位しか思い浮かばないが(「寅さん」や「仁義なき戦い」ですら、第1作が最も素晴らしいのだから!)、この「ローグ・ネイション」と「デス・ロード」の2作品は、驚くべき高品質の「続編」と云えるだろう!

さて誰の人生にも、様々なエピソードと何かが終わり何かが始まる「節目」が有る筈だが、人生で云えば後半に当たる例えば「パート4」や「パート5」がこれ位面白ければ、嘸かしそのまた「続編」も楽しみになるに違いない…。

そう云う意味でも、ザ・中年の僕に大いなる勇気を与えて呉れた(笑)、パワフルな「続編」2作品でした。


ーお知らせー
*Gift社刊雑誌「Dress」にて「アートの深層」連載中。9/1発売の10月号は「平和」と云う「こわれもの」に就て。