香港→日本:近況。

6月1日(水)
5:00 香港のマリオット・ハーバー・ヴュー・ホテルで起床。酷い時差ボケに因る頭痛と倦怠感を、David Lang「Simple Song #3」とケツメイシの「さらば涙」を聴いて癒す。

7:00 ホテルの朝食ブッフェへ。目移りする食物を横目で睨んだ末、結局フルーツを入れたヨーグルトと、アーモンド・スライス&杏入りオートミールと云うヘルシーなメニューにする…が、点心への欲望に負け、蒸餃子を食べて仕舞う。こんな自分なんて大嫌いだ…。

10:30 セール会場の香港コンヴェンション・センターに行き、中国古典絵画セールと「インペリアル・セール」に立ち会う。観ていると数点のロットに人気が集中し、ロット・ベースでは半分強しか売れない…中国人も勉強し、もう「何でも良い」訳では無いと云う証だ。

12:00 有力骨董商&後輩社員とのランチの為、コンヴェンション・センターの上階に在るレストランに初めて行く。が、その店は何と中華では無く、アジアン・フュージョンで味もイマイチだったが、見晴らしが素晴らしかったので、また来ようかとも思う。

16:00 顧客から出して来た、後2日で契約が切れる寸前のプライヴェート・セール用「唐三彩」作品を某業者に見せたら、何と売れた…嬉しスグル。

19:00 顧客と「C」でディナー。食事中「ダイエット」と云う言葉の意味が急に思い出せ無くなり、「人間の脳とは如何にセルフィッシュな存在か…」と首を傾げながらも、黙々と食べ続ける。


6月2日(木)
10:00 読んで居た、秋山祐徳太子著「秋山祐徳太子の母」を読了する。文中「幾つに為っても、息子は息子」な秋山の母が自分の母が被り、その有り難さに落涙する。

12:00 この日の午後は会議だらけで、考えただけでウンザリ…で、先ずは「秋の香港セール」出品予定作品に関するミーティングに初出席。呼ばれた事の無いミーティングに出るのは今でも緊張するが、このミーティングに呼ばれたのは他でも無い、最近僕が中国美術作品の仕事を取って来て居る為…組織とは実に現金なモノ。

14:00 アジア美術全般の売り買いに関わる、日本顧客に関する会議。この商売は矢張り「情報」が全て…「情報」の無い営業は、営業として失格。その為にはソーシャルな付き合いが必須で、要は時間外の時間、仕事外の仕事を如何に生み出し、興味を持ち、人生&仕事の栄養源とするか、で有る。

16:30 香港オフィスのCEOとサシ・ミーティング。

17:00 9月にニューヨークで売られる、某個人蔵宋磁コレクション中の茶碗と花入に関する打ち合わせ。茶道に関わる重要な来歴を持つ作品なので、そのプロモーションを考える。

19:00 正午からの6時間半に及ぶ、ノンストップのミーティングを終え、仲の良い顧客&後輩と、行き付けの湾仔のレストラン「L」で食事。ハニー・ポークとミル貝スープの至高の味に癒されながら、昨晩息子が生まれたと云う後輩K君をお祝いする。K君は皆から、何故出産時に奥さんに立ち会わないのだ?と非難されたらしいが、僕の父親なんか、僕が生まれても1週間だか何か会いに来なかったらしいから、翌日息子に会いに帰るK君は、至極マトモなのでは無いか?(笑)


6月3日(金)
8:00 後輩K君と香港空港に向かい、免税店で僕は来週バースデーを迎える友人へのプレゼント、K君は頑張った奥さんへのお土産を買う。

15:00 成田空港で某番組のディレクターの出迎えを受け、3人で車で東京へ。

19:00 銀座で重要顧客と、シブいステーキハウスでの打ち合わせディナー…鮭の燻製やアスパラサラダ、ヴィシソワーズ、ランプ&サーロインを頂く。物凄く美味いが、物凄く高いに違い無い(と思う)。

21:00 顧客行き付けのクラブを2軒ハシゴ。2軒目では、別の顧客の長年の贔屓だと云う美しい女性が僕等のテーブルに付いたので、かなり盛り上がり、その結果矢張り何事も「プロフェッショナル」はスゴい、と云う事を実感する(笑)。


6月4日(土)
9:30 起床し、青汁シェイクとバナナを食べながら、長い友人のクラシック・ギタリスト、益田正洋君の素晴らしい新譜「グラナドス:ギター版による12のスペイン舞曲」を聴く。益田君はジュリアード音楽院時代からの付き合いで(拙ダイアリー:「テロとアランフェス協奏曲」参照)、長年彼の情熱的な演奏はラテン系の音楽に向いていると思って居たが、最近は演奏に大人の落ち着きが出て来た様に思う。このCDを聴きながら、平野啓一郎の新傑作「マチネの終わりに」を再読するのも一興。

14:00 ロシア大使館で知り合った(拙ダイアリー:「『追いかけない』歳末動向」参照)、これもジュリアード音楽院の作曲科を出ているKさんのご招待で、東京フィル「アメリカン新世界クラシックの旅」@オペラシティー・コンサートホールへ。曲目はバーンスタインガーシュウィン、アダムズ、ジョン・ウィリアムス等だったが、 奥の大好きな曲が1曲プログラムに入って居て、それはサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」。映画「プラトーン」でも使われたこの曲は、そもそも弦楽四重奏曲の第2楽章なのだが、何度聴いても何と切ない旋律なのだろう…。

16:30 初台から高円寺に向かい、「キタコレビル」に行く。此処は江幡氏のファッション・ブランド「Garter」とChim↑Pomのスペースとして有名だが、最近新たにイヴェントスペースとして再生された。其処でのイヴェント「Monkey Magic」に園子温バンドが出ると云うので、前以て予約して行ってみたのだが、肝心の園氏が洪水でヨーロッパから帰国出来なくなったとの事…残念賞。

20:00 家の隣に新しく開店した焼き鳥屋で、1人ディナー。塩っぱい。その後家に戻り、映画「Youth(グランドフィナーレ」のサントラ、プーさん(菊地雅章)の新譜、ポゴレリッチのショパン等を聴きながら、筒井紘一著「平成茶道記」と原田マハ「暗幕のゲルニカ」を読むが、知らぬ間に寝落ちして居た。


6月5日(日)
9:00 モハメド・アリの訃報に接し、ガッカリする。アリに関しては「ソウル・パワー」と云う映画が印象的で(拙ダイアリー:「『花降る絵画』と『魂の力』」参照)、見えない敵(音楽の力)にビビる人間性や、ボクシングのみならず、パーキンソン病との闘いで見せたファイティング・スピリットと共に、尊敬すべき人物だった…ご冥福を祈る。

11:00 奥神楽坂で開催された骨董祭り、「青花の会」へ。「La Kagu」を含む3箇所4スペースでの展示は、散歩がてら丁度良い。展示されて居た或る絵画に非常に惹かれ、価格も廉価だったので直ぐ買おうとしたのだが、もう売れていて大ショック。聞けば作者は何と専門画家では無いとの事…然し此処まで心揺さぶられる絵画に出会ったのは久し振りで、その寂寞感と暖かさに心を奪われる。

12:30 神楽坂を後にし、東中野へ…駅前でアーティストT氏と待ち合わせ、観世会@梅若能楽学院へ。会場では観世会の方々や、何と母親に迄バッタリ会う。拝見した曲は「経正」と「楊貴妃」。

16:30 T氏と銀座で、夜の歌舞伎の時間迄「スイーツ」のハシゴをする。先ずは数寄屋橋角の東急コンプレックスに出来た、代官山「A」のKシェフのクレープ店「P」へ。もう美味すぎる「アンミツ」クレープを頂き大満足だったが、T氏と共に大柄で黒尽くめの我々がクレープを頬張る姿は、衆目を集めて仕舞う…良いぢゃないか、大のオトナ男子が道で甘いもん食べたって!その後僕等は歌舞伎座隣の「B」カフェに向かい、大好物の「日之影栗のプリン」を食べる。「マロンちゃん」としては秋が待ち遠しい…喩えそれが寂しい秋だとしても。

18:00 プリンをエンジョイした後、2人で歌舞伎座で「六月大歌舞伎 義経千本桜」第3部「狐忠信」を観る。猿之助の早替わりや宙吊りの有る派手な演目なので、会場は満員。休憩時間には学生時代から知り合いの、江戸期から続く歌舞伎看板絵を描く家系の当代で有る女流絵師のT先生にバッタリ。お元気そうだったT先生の僕がオトナに為ってからの口癖は、「貴方は学生の時は本当にハンサムだったのに、こんなに為っちゃって…」(笑)で、この日もこの決め文句が出る。T先生の芸大の大後輩のT氏に置かれましては、1日で僕の母親とT先生と云う超強力年配女性陣に会った事に為った訳だが、大丈夫だっただろうか?そして猿之助…大層上手いが、「ドヤ感」が見え過ぎて残念、が正直な感想。あれでは周りの役者達が全て死んで仕舞う。もっとサラッと演ったら、よりカッコイイのに。

21:30 T氏と奥さんのMさんと3人で焼肉ディナー@表参道。若いT氏が大盛りのネギ飯を食べるのを横目で見ながら、必死に我慢して炭水化物を食べなかった自分を褒めてあげたい(涙)。


今日は午後から「渋谷のラジオ」に出演…バースデー・ガールの代官山の女王に殺られます(笑)。


*お知らせ*
6/6(月):渋谷区のコミュニティFM渋谷のラジオ」(→https://shiburadi.com/)の「代官山のアートストリート」(13:00-14:00)に出演します。