機内からの動向報告。

6月6日(月)
7:00 起床。僕等の世代に取っては、今日6/6は「悪魔の日」。今時の若者の中では、「オーメン」や「ダミアン」を知ってる人も少ないと思うが、僕等の天使「代官山の女王」のバースデーでも有る…気張らねば!午後ラジオ出演時に掛ける、映画「グランドフィナーレ」のサントラを用意する。

13:00 渋谷に赴き、地域FM「渋谷のラジオ」のスタジオへ…その女王がパーソナリティを務める「代官山のアートストリート」に出演(此処で聞けます!→http://23.gigafile.nu/f235d71ba3fdd48f1b10a324d0f3d5592-0615)。オークションでの値付けや、日本美術の現在、日本文化教育等の話をする。放送中には、同席の大木少年氏のウクレレでハッピー・バースデーを唱和し、女王の誕生日を祝う。僕からのプレゼントは、上海灘の「干支付き『箸』」、掛けた曲は勿論「Simple Song #3」。

15:30 青山のスパイラル・ガーデンに向かい、開催中の「池内美術伍拾周年 レントゲンヴェルケ廿伍周年記念合同展 半 肆半」(歴史も長いが、展覧会タイトルも長い:笑)を観る。受付に居た務氏に挨拶し、早速あるがせいじや山本タカトの作品、一休の書や青井戸茶碗等を拝見する。一休さんが良かった。

19:00 学生時代には霞町に在った中華バー「C」@白金台にて開催の、女王&アーティストK氏の合同バースデー・パーティーへ。出席者は女王、女王の娘さんでこの秋オペラシティで展覧会が開催されるYさん、アーティストK氏&A女史、アーティストN氏&M夫人+Uちゃん、そして僕の7.5名。このメンバーは、相変わらず超盛り上がるなぁ。

23:30 カラオケに行くと云う皆を振り切り、ダッシュで自宅に戻り電話会議…辛スグル。


6月7日(火)
8:30 前日行われた舛添都知事の会見をニュースで見て、腹立たしいやら情けないやら。大体「マムシ」だか何だか知らないが、元検事とか云っても弁護士に為っちまったら、あんなモノなのだろう。が、そもそも彼らは「第三者」なんかじゃ全く無く、舛添本人に金で雇われた単なる「舛添弁護団」じゃないか⁈…恥を知れ!と云いたい。

10:30 オフィスにて、某重要顧客とのミーティング。

11:00 最近獲得した、来年3月のNYのAsian Art Weekで開催予定のオークションに出品予定の大仕事の為の、マーケティング、プレスを含む社内ミーティング。

12:30 お濠端に在るホテルのレストランのテラス席で、顧客とランチ。この顧客から出して貰った唐三彩がプライヴェート・セールで売れたお礼と、偶々この日が顧客の誕生日だったと云う事で、グラス・オブ・シャンパンを頼み、ダブルお祝いをする。

17:00 代官山のレストラン「O」に、今晩会う顧客に渡す為の「レーズンウィッチ」を取りに行く。此処の「レーズンウィッチ」は、同名他店舗のモノ、同名異工のモノを含む、他の何処のモノよりも格段に美味い。一瞬自分用に一箱買って食べちゃおうかと思ったが、耳元の天使に止められ我慢する…エンジェルに感謝。

19:00 都内某ホテルの高級フレンチ「L」で、重要顧客達と食事。以前出したプロポーザルの問題点・改善点を聞き、改善案を討議する。こう云ったシチュエーションの食事で何時も思うのだが、味は美味しくとも気が気でなく、金額に見合う味に思えない…(涙)。

21:30 その内の顧客1人と、銀座のクラブ「F」へ…銀座の夜は、またこうして更けて行く(笑)。


6月8日(水)
11:00 交詢社で開催された、僕が理事を務めるアダチ木版画伝統技術保存財団の理事会に出席。理事会後の懇親会では、浅野秀剛大和文華館館長や山下裕二先生、日野原健司太田記念美術館主任学芸員等と歓談。

13:30 都内某所に大邸宅を持つ顧客宅に、某作品のプライベート・セールのコントラクト延長の為のサインを貰いに行く。奥様が足の手術をされると云う話を聞きながら、この世のモノとは思えない程旨いイチゴのショートケーキと、今年初物の甘〜いスイカを頂く。然し80代のご夫妻はお元気で食欲満点、此方迄嬉しくなる。

16:00 ワタリウムに行き、今年の秋の「山田寅次郎研究会」の打ち合わせ。茶道宗徧流八世家元で有った山田寅次郎(宗有)は、未だ26歳の民間言論人だった頃、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が遭難した際に義捐金を届けにオスマン帝国に行ったのだが、謁見した皇帝アブデュルハミト2世に気に入られ、王宮内に日本品の販売所を開いたり日本文化教育をした後、57歳にして帰国し家元襲名、90歳の天寿を全うした「異文化配達人」で有る。この研究会のスピーカーに僕がノミネートされたのは、恐らくは僕も「異文化配達人」だからだろう。

17:30 最近行った骨董市で見つけた、衝撃的な現代絵画作品の作者に青山のカフェで会い、数点の作品を見せて貰いながら、話を聞く。この「職業画家でない」アーティストの風景画は、絵具が何層にも塗られ、画面の箇所に拠ってテクスチャーが異なる一見荒涼とした寂しい具象画。だが、僕があの時その荒涼とした風景画の前に立った時、僕は一気にその絵画の中に引き込まれ、絵の一部となり、その広大な麦畑にたった1人佇んで、風と匂いを感じて居たのだ!…そんな絵の作者に会って話を聞く機会等、そうは無い。そしてそのアーティストとの対話は、僕が絵に持った、寒く広い畑の中での一人ぼっちでも何故か暖かく、そして懐かしい気持ちを感じさせる、暖かな夕方にピッタリなモノだった。

19:00 青山のイタリアン「R」で、病院を経営する顧客夫人と食事。此処の料理は相変わらず素晴らしい。特に白エビのパスタとミラネーゼ、そしてシグナチャーの「プリン」…もう堪らん。

21:00 パトリック・ブランや杉原博司作のアートがインストールされたバー、「W」に移動。テラス席でマッタリし再び会話が弾んだが、何度来ても此処はアート好きのパラダイス。


6月9日(木)
12:00 某現代美術館の館長室長と、品川「Q」でランチ。外国経験の長い方の考え方や話は、何時も啓蒙的で共感する所が多い。「Q」の食事は最高に美味しかったが、軽いジャニーズ系のウェイターが、残念至極…何故もっと落ち着いた年齢・タイプのウェイターを選ばないのだろう?

15:30 Moho Kubota Galleryに行き、富田直樹の展覧会「郊外少年」を拝見。序でに奥で多田圭佑に拠るロシアン・イコンをベースにした作品を観る…美しい。僕は何故か、過去をモティーフとした現代作品に惹かれる。

16:30 オフィスに戻り、翌日大阪で行われる予定の重要ミーティングの為の打ち合わせ。

18:00 かいちやう宅に伺う。茶室に入ると、「季違い」だが(この言葉で横溝正史の「獄門島」を思い出すのは、 僕だけだろうか?)或る意味僕向きの、口辺の凝った造りの茶碗で一服頂く。

18:30 かいちやうと目黒のイタリアン「M」に向かい、この「M」が来年3月に移転する迄出来る限り来ようと決めて居る、恒例のディナー。ブラッターチーズ&プチトマト、しらすフリット、紫雲丹のパスタ、ミートローフ、そしてプロフィトロールエスプレッソを頂く…美味過ぎて美味過ぎて、この晩の耳元の天使は、無残にも悪魔に敗退。その意味では、日本は悪魔の巣窟だ(涙)。


6月10日(金)
8:00 ワイドショウで、昨日行われた成田屋に拠る夫人の病気に関しての記者会見を見る。忙しい日々の中で忘れがちだが、人の一生に於いて、金でも地位でも、名誉でも美しい容貌でも、そして愛ですら購えないモノがただ1つだけ有って、それが健康だ。記者会見での成田屋は立派だったが、歴史的に成田屋の家に降りかかる健康に関する災いは、並大抵では無い。そして夫人の病は、僕が大学生の頃に経験した従姉妹の死を僕に思い出させ、胸を締め付けた。美人だった僕の従姉妹は、26歳の時に乳癌を患い、凄まじい闘病の末他界した。そして雲1つ無い快晴だった葬式の日、残された彼女の幼い子供2人は元気に走り回り、未だ母の永遠の不在を理解して居ない様で、旦那は放心状態で途方に暮れて居た。棺桶の中の従姉妹の顔は、生前の美しさを保っては居たが、口は歪んで閉じて居らず、それが余りに可哀想だった僕は、何故口を閉じて上げないのかと泣きながら皆に食って掛かったら、母が静かに「苦しくて、歯を食い縛って亡くなったから、どうやっても口が戻らないのよ…」と答えた。僕は、従姉妹がさぞ苦しくて、さぞや悔しかっただろうと思い号泣し、この日は今迄でも人生で最も泣いた葬式と為った。成田屋夫人には、生き延びて貰いたいと心底願い、祈る。そして「芸事」とはそう云うモノだと思うが、こう云う時に成田屋の芸が深まる事を切に願う。

12:00 顧客の所で、数千万はするプライヴェート・セール向けの素晴らしい浮世絵版画を観る。この作品は嘗てクリスティーズが売ったモノで、こんな具合に何十年振りに戻って来る事も有る…歴史と美術品は繰り返すのだ。

13:00 東京駅で後輩と待ち合わせ、重要なミーティングの為に新幹線で大阪に向かう。車内ではそのミーティングのブリーフィングをする。

16:00 顧客の所で、4対2のミーティング…流石に緊張したが、何とか終了。これからが本番だ!

22:00 新幹線が名古屋を出た頃に某顧客から連絡が入り、東京駅に着いたその足で銀座へ直行…今回日本滞在最後のクラブ活動に精を出す(笑)。然し銀座の高級クラブは超満員で、アベノミクスの効果が有るとしたら、此処でだけの事だろう。


6月11日(土)
10:30 日本橋三越に行き、ニューヨークに持ち帰るお抹茶等を購入する。

11:30 清澄白河無人島プロダクションを訪ね、藤城さんと話しながら八木良太展「メタ考古学」を観る。が、「裸眼立体視」が上手く出来ず、作品鑑賞が出来なかった自分が情けない(涙)。

13:00 丸の内のビストロ「D」で、今年の冬に個展を開催する新進気鋭のアーティストとランチ。お互い「変わってる」と云い合うが、次の質問と為る「じゃあ一体誰と比べて?」も共通して居たので、「お互い変わり者には違い無い」と云う事に落ち着く(笑)。

15:00 そのアーティストと2人で出光美術館の「開館50周年記念 美の祝祭II 水墨の壮美」を観る。「間」が絶妙、且つ息を詰めて見ざるを得ない線、そして「描かない勇気」満点の等伯は、矢張りスバラシイ!…序でに伴大納言絵巻の細密さと絵力にも再驚嘆。

16:30 国宝クラスの作品群をガン見して疲れたので、乃木坂のカフェ「L」に移動し、一休み。アーティストとお互いのアート感を語り合うのは、誠に楽しい。その後アーティストとは別れ、オオタ・ファインアーツでの「オンバ・ヒタム」展を観る。

19:00 今回日本での最後の晩餐は、演劇界の友人と新感覚焼肉店西麻布「I」で。以前NYに居たと云うOシェフと話しながらカウンターで頂く、神戸・近江・松阪等の地方、シャトーブリアン・タン・イチボ・ハラミ・ホルモン等の部位、そしてユッケ、生ハム、スープ、煮込み、湯びき、魚介のキムチ包み、焼肉、牛丼と云う名のステーキ丼、冷麺、そしてバルサミコ・イチゴかき氷迄のバラエティに富んだ料理のコースは、旨過ぎ且つ腹一杯過ぎる肉の祭典、いや「謝肉祭」!もう耳元の天使も悪魔も関係無い…アッシェンンバッハ教授も吃驚な、「堕ちるなら一緒よ」的罪深きデカダン・ディナーで有った(笑)。


そして僕は今機内…ミナサマ、オヤスミナサイ。