「オニの出張」。

週末は久し振りに、行きつけの「Bar Breton」で食事。このブラッセリーは、何でこんな所に?と云う場所に在るのだが、シェフのシリルの腕は文句無く素晴しく、NYでは珍しい日本人好みの薄い味付け、季節の素材を生かしたメニュー、そして何よりも「野菜」が驚く程美味しい。新鮮なのは云うまでも無いが、どの料理に使われている野菜も「本来の」味がきちんとするのだ。或る意味「京都フレンチ」の様で、こう云うフレンチ・シェフはNY広しと云えども、そうは居ない。ハッキリ云ってこの味は、「DANIEL」や「JEAN GEORGES」等では決して味わえない…ガンバレ、シリル、俺が付いてるぜ!

さて、旨いものを食べたにも拘らず、疲れが出たのか日曜は朝から具合が悪くなり、38度の発熱…しかし月曜早朝からの「オニの出張」は外せない。厚着をし、水をガブガブ飲み、大汗をかいて熱を下げようと試みる。出来る事と云えば、一日中寝続け、2時間毎に汗だくのシャツを着替える事位だ。最終的にはその甲斐(勿論、妻の献身的な介護)も有り、夜中の2時頃には何とか熱も37度まで下がって、早朝4時半には、迎えの車に疲労困憊の体を引き摺り乗り込んで、JFKへと向かった。

いつも驚くのだが、流石世界の経済の中心地ニューヨーク、朝の5時半でも空港は大混雑で、圧倒されてしまう。セキュリティーに列を成す人々は皆ハイパーで、「何でコイツら、こんな朝から元気なのだ?」と、ある種怒りを覚えつつ、こちらは弱った体を引き摺っての南部への「6時間弱」のフライト。もう、耐えられん…何で俺はこんな仕事をしているのだ…中原昌也万歳!!6時間のフライト中は、薬のせいでまどろんだり、近藤富枝氏の「荷風と左団次」を読んだりして、やっと目的地に到着した。

空港を出るとそこは別世界、人々は半袖シャツを着て、とてもNYと同じ国とは思えない。時計の針を戻し、タクシーに乗る。見慣れぬ赤い山やサボテンを眺めながら、愛想の無いドライバーの運転で、某所に到着。タクシーから体を引き摺り下ろして建物に入ると、知ってはいたが、そこにはスンバらしいお宝が筆者を待ち受けていた!!あぁ、本当に来て良かった…。詳しく内容を書けないのが非常に残念だが(あー、書きたい!!:笑)、見応え充分、金額もかなり大きい作品…もうタマラン。疲れがほんの一寸、軽くなった気がした。

名残を惜しみながら、午後再び空港へ。今度は5時間のフライトで、北の州へ向かう。もうウンザリ、である。結局気が付くと、1日で「国内便」に11時間も乗っていた。そして、こんな時に限って飛行機が遅れる(笑)。このフライトも、薬でウツラウツラしている内に目的地に到着したが、もう時計は夜10時をとっくに廻っており、ホテルに着くと11時過ぎ。ルーム・サービスでスープでもと思ったが、ルーム・サービスも何と11時オーダーストップ。神は我を見放したか!(「八甲田山」の北大路欣也の声で…って、古いね:笑)…気が付けばもう日が変わっていた。

そうは云っても、神様に取り敢えず今日一日ブッ倒れずに来れた事を感謝して、オバマの居る方に向かって手を振り、ベッドに倒れこんだ。

この出張、オニである(涙)。