さらば「キング」…また会う日まで。

オミクロン株の猛威に人々は怯えつつも軽んじ、感染は広がり続け、未だ終息しない…そんな中、こんな事で久し振りにダイアリーを更新するのは悲し過ぎるのだが、書かずにはおられない。

それは先週の火曜日に届いた「キング」と呼ばれた男の逝去の知らせで、2週間近く経った今も僕は立ち直れずにいる。

彼と初めて会ったのは、恐らくは31年前のニューヨーク。大学で教えて居た父が、サバティカルでニューヨークに1年間住んだ時に、広告会社を辞めたばかりで美術業界にも入って居なかった僕が、鞄持ちとして付いて行った年の事だった。

僕より2歳下のキングは、日本一と云っても過言では無い古美術商の長男で、当時既にニューヨークにギャラリーを開いて居た。彼の父上と僕の父が美術業界で知己で有った事から、何かの食事の席で紹介されたと思う。そのニューヨーク滞在中の1年間に、僕は彼に何回かダウンタウンのビストロやバーに連れて行って貰ったりしたが、彼との関係性が深く増したのはそれから2年後、僕が今度はクリスティーズ・ニューヨーク日本美術部のトレイニーとして、そして2000年から17年間に渡り、ニューヨークの日本・韓国美術部門長として勤務した時だ。

「キング」は体格が良く、酒もグルメも、そして勿論モノ(美術品)も大好き且つ徹底して居て、その体格と強面に似合わず、人に気を遣い過ぎる位遣う優しい男だったが、僕は彼からニューヨークでのグルメや「クラブ」活動、カラオケ迄、遊びをどれだけ学んだか分からない。そして何よりもニューヨークでの、アメリカでの、海外での日本美術ディーラーの第一人者としての彼の知識や人脈は、特に2000年以降ニューヨークで苦しんだ僕の、公私共の救いと為った。仕事で苦しい時に、アッパー・イーストサイドに在った静かな彼のギャラリーに立ち寄り、愚痴を聞いて貰いながら美しい仏像を眺め、垂涎のお茶碗で頂く一服のお薄に、どれだけ助けてもらった事か!

その「キング」との思い出は数限りなくあるが、仕事上彼の「眼にやられた」事も今となっては良い思い出だ。例えば僕がNYに行ったばかりの頃に、某所から出してきた古い裂。染織に全く知識のない僕は、それを江戸期の袈裟としてオークションに出品して、数千ドルでキングが落札したが、後で聴くとそれは中国は元〜明時代の「印金」だった。また、これも僕が某所から出してきた桃山〜江戸初期と思われた観音図の画巻も、「キング」が落札した後暫くしたら京博の雪舟展に出て居たりして、自分の眼の無さに落ち込んだりしたが、これもキングの眼の為せる技。

その彼の日本美術への眼と愛は、長年METやクリーヴランドミネアポリス等の美術館キュレーター、ジョン・ウェバーやラファエル・バーンスタイン各氏等のコレクター、コロンビア、ハーバード、イェールやNYU等の大学の教授達の研究・収集を支え続け、その功績は計り知れない。その意味で彼亡き後、ニューヨークや米国の日本美術はどう為ってしまうのだろうとの危惧も大きい。

僕が「キング」と最後に会ったのは、確か去年9月末の事。その数ヶ月前に本人から肺癌に冒されていると聞き、京都を訪ねて一度食事をした時にはとても元気で、食欲も旺盛、抗がん剤も合っているとの話だったので、期待も抱いていた。そして今月の連休に会おうと約束していたが、その前日に「ちょっと調子が悪いので、退院したら…」との連絡があり、それきりに為って仕舞った。

 

「キング」こと、K.Yさん

「キング」とは「夜の帝王」の意味で皆で付けた名でしたが、貴方はNYに於ける日本美術の「キング」でも有りました。今から四半世紀前、千葉市美術館のレセプションの帰りに総武線快速の中で、僕が最初の結婚をする事を貴方に告げた時の君の驚愕と満面の笑みが、今でも忘れられません。そして付き合いが近付いたり離れたりしても、いつでも貴方はニューヨークでの僕の師匠、ライバル、同志、友人でした。

僕が2017年に帰国し、貴方が去年帰国を決め、これから日本で頑張ろうと云う時の貴方の訃報は、僕の心にポッカリと大きな、塞ぎ様の無い穴を開けて仕舞いました…が、僕等貴方の同志は、貴方の分まで頑張らねばならないと思いを同じにして居ます。

もう直ぐ還暦な僕等は、もう少ししたらそちらに参りますが、どうぞ貴方の父上、そして貴方と同じ日に逝った僕の父と一杯やって居て下さい。それまではニューヨーク時代に貴方が愛用し、乞うて譲って貰った黄伊羅保茶碗で一服頂きながら、また会う日を楽しみにする事にします。

合掌。

孫一

PS:米国の美術誌に、彼の追悼記事が出ました。改めて追悼の意を表し、此処に掲載します。→https://www.asiaweekny.com/blog/asia-week-new-york-celebrates-life-koichi-yanagi

 

ーお知らせー

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第11回、「アート・ミッション・ポッシブル 2022」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB242KU0U2A120C2000000/)が掲載されました。独断で今年必見の展覧会を紹介しています。ご一読下さい。

*1月28日付「日刊工業新聞」ウィークエンド版内「コンテンポラリーの嵐」(→https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00626083)で、恥ずかしながら現代美術コレクターとして取材されました。上下2回の掲載で、次回「下」は2月25日掲載予定です。ご一読を。

*12月27日発売「婦人画報」2月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載6回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a38740815/art-yamaguchikatsura-220114/)。今回は天王洲WHAT Museumで開催中に「大林コレクション」展を取り上げました。ぜひご一読ください。

*「陶説」2022年新年「酒器特集号」(→https://www.j-ceramics.or.jp/tosetsu-new/)に寄稿致しました。下戸なワタクシですが、憧れの酒器について書かせて頂きました。ご一読を!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第10回、「『傷』と『繕い』の日本文化」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB175N30X11C21A1000000/)が掲載されました。今回は日本文化の大きな特徴である、「金継ぎ」に就いて。ご一読下さい。

*11月1日発売「婦人画報」12月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載5回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a38169828/art-yamaguchikatsura-211112/)。今回は楽美術館で開催中の「赤と黒の世界」に出展中の、長次郎作黒楽茶碗「萬代」を取り上げました。ぜひご一読を。

*いつ見てもタメになる、ロバート・キャンベル先生の公式YouTube、「四の五のYouチャンネル」の最新回、「大正時代の掛け軸を現代に蘇らせた!」(→https://youtu.be/rPBiG2LHjVw)がアップされました。今回は先生が見つけた痛んだ掛軸が、表具師によって綺麗に生まれ変わると云うお話。僕も少しだけ出演しております。是非ご覧ください!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第9回目、「私的美術品立国論ノオト」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB112GX0R11C21A0000000/)が掲載されました。閉塞する我が国の美術行政と、国際美術品マーケットでの立ち位置に関して、個人的意見を書きました。ご一読を!

*10月10日付「産經新聞」朝刊内、「新仕事の周辺」に掲載されました(→https://www.sankei.com/article/20211010-TCXWXQ2EMVIVZGIS2ZE53JSMQI/)。ご一読ください!

*5月25日発売の雑誌「GOETHEゲーテ)」(幻冬社)7月号内「相師相愛」(→https://goetheweb.jp/person/article/20210606-soushisoai58)にて、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏との対談が掲載されています。是非ご一読下さい!

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました。是非ご一読下さい!

*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

謹賀新年

新年明けまして、おめでとう御座います。

中々更新できませんが、本年も宜しくお願い申し上げ候。

桂屋孫一拝

 

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*1月28日付「日刊工業新聞」ウィークエンド版内「コンテンポラリーの嵐」で、恥ずかしながらコレクターとして取材されました(→https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00626083)。上下2回の掲載で、次回は2月25日です。ご一読を。

*12月27日発売「婦人画報」2月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載6回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a38740815/art-yamaguchikatsura-220114/)。今回は天王洲WHAT Museumで開催中に「大林コレクション」展を取り上げました。ぜひご一読ください。

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*いつ見てもタメになる、ロバート・キャンベル先生の公式YouTube、「四の五のYouチャンネル」の最新回、「大正時代の掛け軸を現代に蘇らせた!」(→https://youtu.be/rPBiG2LHjVw)がアップされました。今回は先生が見つけた痛んだ掛け軸が、表具師によって綺麗に生まれ変わると云うお話。僕も少しだけ出演しております。是非ご覧ください!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第9回目、「私的美術品立国論ノオト」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB112GX0R11C21A0000000/)が掲載されました。閉塞する我が国の美術行政と、国際美術品マーケットでの立ち位置に関して、個人的意見を書きました。ご一読を!

*10月10日付「産經新聞」朝刊内、「新仕事の周辺」に掲載されました(→https://www.sankei.com/article/20211010-TCXWXQ2EMVIVZGIS2ZE53JSMQI/)。ご一読ください!

*9月1日発売の「婦人画報」10月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載4回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a37450250/art-yamaguchikatsura-210905/)。今回は伊豆の「上原美術館」で開催中の「陰翳礼讃」展から、素晴らしい作行きの重要美術品の「十一面観音像」です。ご一読を!

*5月25日発売の雑誌「GOETHEゲーテ)」(幻冬社)7月号内「相師相愛」(→https://goetheweb.jp/person/article/20210606-soushisoai58)にて、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏との対談が掲載されています。是非ご一読下さい!

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

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*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

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*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

深夜の「違和感」。

本当に久し振りのダイアリー更新だ…言い訳がましいが、スペシャリスト時代には無かった仕事で忙殺されている状況で、我ながら忸怩たる想いがある。

作品に向き合い、鑑定し、調査し、査定して、その作品が行くべき所に納める…そんな日々が懐かしく、作品や持ち主との出会い、その作品のクオリティ、重要性や希少性、持ち主の希望よりも、金や売ると云う事自体が優先される様なディールには興味がないし、この商売で作品を「探して、出してくる」事以上に難しく、意義深い仕事はない。美術品は「出して来」なければ「売る」事は出来ないのだから、それが実行出来なければ、アートディールの真の醍醐味を知る事は出来ない。

そんな中最近、何十年か扱いたいと思っていた作品を売る事が出来た。この作品は、僕が2000年にNYに移り住んだ時から何時かは里帰りをさせようと思っていた重要な美術品で、持ち主と知り合ったのは、10年程前の事。NYやパリ等でお会いして、何回も何回も交渉を重ねて居たのだが、売却が実現しない侭、昨年その方は亡くなって仕舞った。

その後、ご遺族と法律家による遺産管理グループの話し合いの結果、僕の意見が採られ、この作品はオークションに掛けずに日本に戻そうと云う事に決定し、納め先も色々なご縁で決まり、無事作品も手渡された…感動一入で有る。

閑話休題。さてさて、今日のテーマは「違和感」。最近、僕が色々な事象に対して感じた違和感をメモして置こうと思うが、先ずは「日本人が獲った」ノーベル賞に就いて。

今年物理学賞を獲ったプリンストン大の真鍋先生は、90歳とは思えぬ程頭脳明晰でユーモアたっぷりな、如何にも外国に長く住んでいる日本人らしい方だ。地球気候温暖化と云う非常に重要なテーマでの受賞は、本当に素晴らしいと思う。

が、真鍋先生は米国籍で、氏の長年の研究は米国で為された物で有り、それは南部・中村・イシグロの各氏と共に、日本出身(日本で生まれた)では有るが、色々な理由で他国籍を得た後に受賞した訳だから、「日本人が獲った」とメディアが騒ぐのには少々違和感がある。特に研究者に関しては、日本の研究土壌が金銭的にも人事的にも充実していないが故に、国外に出る人が多いのだから、糠喜びするよりも反省が有って然るべきだろうと思う。

「違和感」の2番目は、「バンクシー」。先日サザビーズのセールで、バンクシーの「愛はゴミ箱の中に」が何と1858万英ポンド(約29億円)で売却された。以前ここにも記したが、この作品は嘗て「少女と風船」と云うタイトルで3年前に出品された時、104万ポンドで落札された直後に、絵の下部が額に仕込まれたシュレッダーで裁断されたと云う、偶然と云うなら「恥」、必然ならば「やらせ」な過去を持つ作品で有る。

さて此処での僕の違和感は、「ショウ」云々は兎も角、この作品の落札価格がたった3年間で18倍近くになったと云う事で、当然僕が勤めている会社もこの作家の作品を売っては居るが、それでも何処か納得が行かない。それは僕が元来古美術の専門家だからかも知れないが、30年この仕事をやっていて何時も感じるのは、『「価値」と「価格」は必ずしも一致しない』と云う事だ。

「違和感」No.3は、大英博物館に拠る所蔵北斎作品のNFT商品化。

何とBritish Musuemが、所蔵して居る北斎作品のデジタル画像をNFT化し、エディションを付けて販売すると云う。その収益は、Lacollectionと云うプラットホームと大英博物館とが割り当てるらしいが、僕が気になるのは「北斎の縁戚」が現代にも存在している、と云う事だ。

著作権は切れているかも知れないが、今回の事業は、両者がその縁戚者に一応の了解や承諾を得た上での事なのだろうか、甚だ気に為る。新作でない作品を、所蔵者とは云え他人がNFT化する事が普通になって行くのは如何?な気もするが。

そして4番目の「違和感」…それは、秋篠宮眞子様のご成婚・ご結婚に関してで有る。

初めに云って置くが、僕は皇室の存在には非常に肯定的で、日本文化の象徴として、例えば「法隆寺」の様に、或いは「世界遺産」的に残り、継承され、存在して行くべきと思って居る。国宝等の文化財、また国公立博物館・美術館の収蔵作品は、国民の文化継承と発展の為に国費(税金)で保存・修復されて居るのだから、皇室の存続も当然国費で賄われて然るべきと思う。

が、これも以前から此処で云って居る様に、文化財、或いは国立博物館・美術館所蔵の作品は、税金で買われたり、保存の為の助成を国から受けている以上、その真の所有者は国でも博物館でも無く、その費用を負担している国民の共有財産と認識すべきで有って、その意味でそれらの美術品が、本当に我々の税金を使う価値が有る作品かどうかを、国や国民が常に見極めて行かねばならない。

となると、今回の眞子様のご結婚相手で有る小室氏が、もしも国民の歓迎を得られない人物であったなら、当然ボディガード費用から始まる経費を国が出すのはおかしいと云う事に為るし、僕もそう思う。

もう一つは眞子様のお立場の理解…これは僭越ながら、殿下ご夫妻の教育の問題かも知れない。眞子様PTSDだと云われるなら、お気の毒と思うが、コロナ禍下で格差・貧困も進んでいる我が国で、眞子様がいかに恵まれた環境で国費で育って来られたかを、当人に知らしめられられないとすれば、と云う事だ。

近日開催される記者会見では、決してそんな事は仰らないだろうが、眞子様と小室氏は毅然とした態度で、「本日この時から、自分たちはボディガード、渡航費、アメリカ生活を含め、一切国費の使用をしない事を約束する」と述べるべきと思う。そうすれば、僕も両手を挙げてお二人を祝福するだろう。

最後に取り沙汰されて居る、眞子様の「就職先」に就いて。「メトロポリタン美術館学芸員」が有力候補、と云う様な記事が見えるが、METの学芸員は大学教授クラスのステイタスだし、その学識レベルは相当高く、申し訳ないが眞子様では到底務まらないと思う。そこで僕がオススメするのは、「ジャパン・ソサエティ」だ。

僕もNY時代に会員だったこの組織は、ロックフェラー家が中心となって、米国での日米間の経済・文化センターの役割を担って居流非営利団体で、ギャラリーでの展覧会や古典芸能の公演なども行なって居るのだが、此処なら眞子様旧皇族としての外交や、皇室文化等の日本文化の紹介も可能ではないかと思う。

眠れぬ深夜に、「XVIIIショパンコンペティション」で入賞した、オーバーアクションなピアニストとは違い、姿勢が良く、体幹がブレず、派手なアクションも無いが、音色も美しく感情の籠った素晴らしいピアニストの演奏を聴きながら、久々に更新した「違和感ダイアリー」…こんな「違和感」、早く払拭出来ると良いのだが。

 

ーお知らせー

*12月27日発売「婦人画報」2月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載6回目が掲載されました。今回は天王洲WHAT Museumで開催中に「大林コレクション」展を取り上げました。ぜひご一読ください。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第10回、「『傷』と『繕い』の日本文化」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB175N30X11C21A1000000/)が掲載されました。今回は日本文化の大きな特徴である、「金継ぎ」に就いて。ご一読下さい。

*11月1日発売「婦人画報」12月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載5回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a38169828/art-yamaguchikatsura-211112/)。今回は楽美術館で開催中の「赤と黒の世界」に出展中の、長次郎作黒楽茶碗「萬代」を取り上げました。ぜひご一読を。

*いつ見てもタメになる、ロバート・キャンベル先生の公式YouTube、「四の五のYouチャンネル」の最新回、「大正時代の掛け軸を現代に蘇らせた!」(→https://youtu.be/rPBiG2LHjVw)がアップされました。今回は先生が見つけた痛んだ掛け軸が、表具師によって綺麗に生まれ変わると云うお話。僕も少しだけ出演しております。是非ご覧ください!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第9回目、「私的美術品立国論ノオト」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB112GX0R11C21A0000000/)が掲載されました。閉塞する我が国の美術行政と、国際美術品マーケットでの立ち位置に関して、個人的意見を書きました。ご一読を!

*10月10日付「産經新聞」朝刊内、「新仕事の周辺」に掲載されました(→https://www.sankei.com/article/20211010-TCXWXQ2EMVIVZGIS2ZE53JSMQI/)。ご一読ください!

*9月1日発売の「婦人画報」10月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載4回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a37450250/art-yamaguchikatsura-210905/)。今回は伊豆の「上原美術館」で開催中の「陰翳礼讃」展から、素晴らしい作行きの重要美術品の「十一面観音像」です。ご一読を!

*5月25日発売の雑誌「GOETHEゲーテ)」(幻冬社)7月号内「相師相愛」(→https://goetheweb.jp/person/article/20210606-soushisoai58)にて、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏との対談が掲載されています。是非ご一読下さい!

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました。是非ご一読下さい!

*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

「祭典」と「夏祭り」の終焉と、怨嗟。

東京オリンピックが終わった。

日本は史上最高の58個のメダルを取り、色々な競技の中で、例えば日本が大逆転した卓球混合ダブルスの準々決勝等、大興奮した試合や感動したゲームも有り、それだけを見れば成功とは思うし、選手の努力と活躍には敬意を払いたい。

が、そもそもコロナ禍下で各国選手の準備・練習に国に拠ってかなりの差があったという不平等さ、自国開催のアドヴァンテージを考えれば、3年後のパリ五輪でのメダル獲得数が真の実力と云えるのでは無いかと思うし、「復興」も何処かへ霧散した事、如何なる日本人の中でもアスリートだけが、このコロナ禍下で夢を叶えたと云う「特権」にも首を傾げる。

しかし今回政府と都が強行した「スポーツの祭典」は、数え切れない問題点を表出させたが故に、その意味では開催に反対していた僕ですら、やって良かったと思う程だ。

先ず今回の五輪テーマの真逆を行く、日本での「差別意識」の欠如。元組織委員長の政治家、総合ディレクターや音楽担当等の過去・現在に於ける差別発言や行動、グローバル・コモンセンスの中での余りにも恥ずかしい認識不足と辞任劇は世界に恥を晒した。序でに国立競技場のコンペでのザハ案の排除、デザイン盗作、誘致買収疑惑のその後の無報道等、世界中のメディアで恥で塗り重ねた。

次には金。予算が数倍になり、兆円レベル迄膨らんだ責任は誰が取るのか?IOCも政府も誰の許可を得て、我々の税金をここまで湯水の如く使えるのだろう?こんな甘々な見積もりを出し、金の管理が出来ない責任者は、一般の企業だったらとっくにクビに為って居るに違いない。またこの「スポーツの祭典」に掛ける我々の税金の額が、文化芸術に掛ける金の何倍、何十倍で有り、これは「オリンピック」がもはや巨大ビジネス化して居るが故の、芸術投資との差に相違ない…所詮利権とはそう云う物だから。

そしてもう一点、前回のダイアリーで述べた「危惧」が現実化して仕舞った事…そう、観るに耐えなかった、開会式と閉会式のクオリティの事だ。

体協の一員としてオリンピックに毎回行って居た叔父を持ち、この50年間ずっとオリンピックを見続けてきた僕に取って、正直云って、こんなに酷いオリンピックの開閉会式のショウは観た事が無い。信じられない位に下らない展開とチープな内容…例えば、全く意味が分からない「東京の街角で行われて居る」と云うけん玉、縄跳びや盆踊り。聞き古され、使い古された今更の「イマジン」、「ボレロ」と「第九」。そして前世紀の遺物のブレイク・ダンスや、北野監督の「座頭市」以来観飽きた、江戸タップダンス。

しかし、何とも恥ずかし過ぎるのはそれだけでは無く、安っぽい演出と、支離滅裂な低レヴェルのダンスのオンパレードは続く。世界の超一流の体操・新体操やBMXの選手達の眼前で、恥ずかしげも無く披露するアクロバット。全く噛み合わない海老蔵の「暫」(勿体無い!)と、上原ひろみのジャズピアノ。唐突な大竹しのぶの寸劇。オリンピックに全く関係のない、「O・N」の聖火ランナー

どれもこれも俗悪で浅薄な知識下での「日本趣味」と「フュージョン」、「多様性」の誤解、そして「日本的エゴイズム」の成れの果てで、簡単に言えば「田舎の夏祭り」レヴェルと云って良い。僕の中で唯一良かった場面を強いて云えば、閉会式で1964年の「東京オリンピック・マーチ」が使われた時だけだった(新曲が作れなければ、何故この名曲を使わない?)。

序でに云えば、下らない「純血主義」(ザハ案の却下も)…坂本龍一バルセロナで、石岡瑛子が北京で登用されたのだから、外国人演出家や音楽家を雇ってのショウ作りを考えても良かったのでは無いか?どうしても日本人でやりたいなら、世界的アーティストで有る村上隆のキャラクター、草間弥生やCDGの公式服、杉本博司の演出、能役者に拠る「翁」等々、その誰もが依頼を受けたか、また断ったかは分からないが、夢は尽きない。

そう、今回の開閉会式は、世界に日本の文化芸術(日本が世界に誇れるのは「アニメとゲーム」だけなのか?)のレヴェルの低さと、その見せ方の下手糞さを示しただけだった訳だが、この国辱的責任は一体誰が取るのだろう?

否、今の政権も都知事も組織委も、誰もそんな責任は死んでも取らないだろうし、もっと悪い事に有名評論家や某科学者などの芸術的リテラシーの無い輩が、この劣悪クオリティのイヴェントを賞賛している位なのだから、世も末で有る。

この危惧は、これから始まるパラリンピックへも続く…パラリンピック競技は、恐らくは急激にメディア露出が減り、そこで顕見するで有ろう問題も議論する機会すら失われ、コロナは一層蔓延するだろう。

そして政府や都がオリパラ並みに金を使い、世界の人々が観に来たいと思う様な芸術イヴェントが日本で開催される日は、僕の生きている内に来るのだろうか?

お金、文化的リテラシー、スポーツなら許される主義、エゴイズム…日本国と東京都の納税者で有る僕のお盆休みは、政府と都への怨嗟に明け暮れるだろう。

 

ーお知らせー

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第9回目、「私的美術品立国論ノオト」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB112GX0R11C21A0000000/)が掲載されました。閉塞する我が国の美術行政と、国際美術品マーケットでの立ち位置に関して、個人的意見を書きました。ご一読を!

*10月10日付「産經新聞」朝刊内、「新仕事の周辺」に掲載されました(→https://www.sankei.com/article/20211010-TCXWXQ2EMVIVZGIS2ZE53JSMQI/)。ご一読ください!

*9月1日発売の「婦人画報」10月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」、連載4回目が掲載されました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a37450250/art-yamaguchikatsura-210905/)。今回は伊豆の「上原美術館」で開催中の「陰翳礼讃」展から、素晴らしい作行きの重要美術品の「十一面観音像」です。ご一読を!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第8回目、「現代・北斎・無問題(モウマンタイ)」(https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB1997Z0Z10C21A8000000)が掲載されました。今回は、現代美術家としての北斎について。ご一読を!

*「Nikkei Financial」内、「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」に寄稿している専門家の一人として、「Summer Read 2021」で、今夏のオススメ本を紹介しています(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB3045K0Q1A730C2000000)。僕の他には小川敦生、岡田暁生鴻巣友季子小川仁志、根井雅弘の各氏ですが、どれも面白そうな本ばかり!僕の推薦も含めて、是非ご一読ください。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第7回目、「美術品は『鏡』であるー私的アート購入指南」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB1267Y0S1A710C2000000)が掲載されました。アートを何処でどう買うか?のヒントをお伝えしています。是非ご一読を!

*7月1日発売の「婦人画報」8月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」の、連載3回目が掲載されました。今回はポーラ美術館で開催中の展覧会、「フジター色彩への旅」に出展中の「イヴォンヌ・ド・ブレモン・ダルスの肖像」を取り上げています。ご一読下さい!

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第6回目、「『憂世』における『浮世』への招待」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB300PG0Q1A530C2000000)が掲載されました。コロナ禍の「憂世」だからこそ、改めて「浮世」の絵画、浮世絵を紹介しています。ご一読下さい。

*5月25日発売の雑誌「GOETHEゲーテ)」(幻冬社)7月号内「相師相愛」(→https://goetheweb.jp/person/article/20210606-soushisoai58)にて、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏との対談が掲載されています。是非ご一読下さい!

*5月1日発売の「婦人画報」6月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」の、連載2回目が掲載されました。今回は静嘉堂文庫美術館所蔵の河鍋暁斎の名品と、美術館移転の奇縁を取り上げました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a36204478/art-yamaguchikatsura-210502/)。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第5回目、「美意識のスゝメ」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD1328G0T10C21A4000000)。美意識の高め方に関する、私的指南書的コラムです。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第4回目、「最後に笑うオークションの『戦士』は誰だ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD16ARI0W1A310C2000000)。アジアで売却された西洋絵画として史上最高額を記録したバスキアの作品と、オークションに関わる人々を取り上げました。

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*3月1日発売の「婦人画報」4月号内、「極私的名作鑑賞マニュアル」の隔月連載が始まりました。僕の第一回は「フランシス・ベーコン」(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a35639717/art-yamaguchikatsura-210307/)。是非ご一読下さい。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第3回、「花の色は移りにけりないたづらに 日本美術の真価は」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD271D00X20C21A1000000)。最近の日本美術マーケットについて書きました。登録が必要ですが、ご興味のある方は是非。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」での連載コラム第2弾、「All You Need is Love…and Art ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD077E50X01C20A2000000)。現在ブレイク中の「オンライン・オークション」について書きました。

*「Nikkei Financial」内「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」に、「閉じ込められている火が、一番燃えるものだ」というタイトルの、直近のオークション業界に関する連載コラム第1弾を寄稿しました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXMZO65491530X21C20A0000000)。登録制ですが、是非ご一読ください。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました。是非ご一読下さい!

*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

「類は友を呼ぶ」、或いは「リテラシー・ガラパゴス」。

本当に久し振りのダイアリー更新がこんな話題で申し訳ないが、もう我慢が出来ないのでお許し頂きたい…今日のテーマは「国辱オリンピック・パラリンピック2020」に就いて、で有る。

此処に来ての東京オリパラでのクリエーター達のスキャンダルは、このオリパラのそもそもの「嘘」で固められた出発を考えれば、然もありなん、では無いだろうか。

何処かへ消えた「復興」というテーマから始まり、新競技場のコンペでのザハ案の不可解な排除、普通の会社だったら即クビになるレヴェルでの何倍にも膨らんだ予算、盗作デザイン、差別と言い訳しかない重要ポジションの役員やクリエーター達、流行語にも為った「お・も・て・な・し」からは程遠い選手村…そして今となっては、このオリパラを強行する日本国は、世界から軽蔑の対象になりつつある。

今日解任の発表になった開閉会式のショー・ディレクターの「ホロコースト・ギャグ」に関しては、「過去のたった一言」であるとか「その後の反省活動」等を挙げて擁護する評論家も居る様だが、外国に長く住んだ身としては余りに「井の中の蛙」発言だと云わざるを得ない。

ユダヤ人にとってのホロコーストは、如何なる芸術活動に於いてもギャグにする事は許されない。そしてそれを一度でもやった者は記録され、その贖罪は行動で表さなければ、その記録も決して消える事はない。アートの世界に於いても、「ナチ略奪絵画」は何年経っても、何処に在っても、誰が持っていても、どんな理由が有っても、元の持ち主に返さねばならないのだ…僕自身、身に染みて居る現実で有る。

そして日本という国がこの事を知らず、オリパラと云う数え切れない「ユダヤ系アスリート」が出場する世界的イヴェントでの重要なポストに付く人物を、過去の言動を碌に調べずに起用した事実は、我が国が世界常識に無知で有り、「おもてなし」どころか「おもいやり」に欠ける「リテラシーガラパゴス」だと云う事を、全世界に高らかに宣言したに等しい…本当に恥ずかしく、国辱と呼ぶに相応しい。

これらの原因はオリパラ開催を勝手に決めて、コロナ禍下にも拘らず強行した前・現政権、そして「任命責任」を持つ組織委に他ならないが、この人々は「責任」を「痛感」しても、決して「取らない」。これは前政権からの常套手段的得意技だが、こう云う人達に選ばれ、チームを組んだ人々の中に「世界常識」に欠ける人物が居たとしても当然だろう。

対談で過去のいじめを得意げに話した音楽担当も、「パラリンピック」の意味と意義の理解力がなかったのだろうが、そのいじめ内容も余りに酷く、吐き気を催した。税金でこんな人間に給料が払われるのも、それを組織委が「反省して居る」として留任させようとしたのも、断じて許せない。

辞めた音楽担当もショー・ディレクターも、倫理観とその世界常識を知っていれば、今回の仕事を受ける際に断るか何らかの反省発言をしただろうし、またそれを促す者が組織委にも政府にも「誰も」居なかった事実は、当に「類は友を呼ぶ」で有り、社会でのジェンダー平等レヴェルで世界でかなりの下位に甘んじる、我が国の現実そのものなのである。

我々の税金を湯水の如く(然も「勝手に」予算を何倍増させ)使って、国辱を世界に知らしめる権利は、国や都、組織委やJOCには全く無い…国民を馬鹿にするにも程がある。

今回の大会は、恐らくは史上最悪の支持されない、後悔だらけのオリパラになるのではないか…もしそうなれば、「国益」を甚だしく損ねるのは必然…が、その責任は、どこかの誰かさんが百歩譲って「痛感」したとしても、決して責任を取る事は無いに違いない。

そして今回出場するアスリートの方々には、今まで多様なジャンルで夢を持って生きて来て、このコロナ禍で我慢を強いられ、その夢を叶えられない人々が大勢居る事実、また自分達がそんな世の中で夢を叶えるチャンスを与えられた数少ない人間で有る事を肝に銘じて、是非とも頑張って欲しいと思う。

明日の開会式のショウの芸術的・文化的クオリティとリテラシー、世界的に見て大丈夫なのだろうか…不安で仕方がない。

 

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*5月1日発売の「婦人画報」6月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」の、連載2回目が掲載されました。今回は静嘉堂文庫美術館所蔵の河鍋暁斎の名品と、美術館移転の奇縁を取り上げました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a36204478/art-yamaguchikatsura-210502/)。

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*「Nikkei Financial」での連載コラム第4回目、「最後に笑うオークションの『戦士』は誰だ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD16ARI0W1A310C2000000)。アジアで売却された西洋絵画として史上最高額を記録したバスキアの作品と、オークションに関わる人々を取り上げました。

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*3月1日発売の「婦人画報」4月号内、「極私的名作鑑賞マニュアル」の隔月連載が始まりました。僕の第一回は「フランシス・ベーコン」(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a35639717/art-yamaguchikatsura-210307/)。是非ご一読下さい。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第3回、「花の色は移りにけりないたづらに 日本美術の真価は」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD271D00X20C21A1000000)。最近の日本美術マーケットについて書きました。登録が必要ですが、ご興味のある方は是非。

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*「Nikkei Financial」に「閉じ込められている火が、一番燃えるものだ」というタイトルの、直近のオークション業界に関する連載コラム第1弾を寄稿しました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXMZO65491530X21C20A0000000)。登録制ですが、是非ご一読ください。

*大阪の藤田美術館が新しくなり、竣工しました(展示は2022年から)。展示公開が待ち切れません!(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2020/10/19/1202/)。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました。是非ご一読下さい!

*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

「男の背中」に関する、幾つかの私的考察。

何もした感覚が無い侭、今年ももう直ぐ1/3が終わって仕舞う…光陰矢の如し。

そして時と共に自分も歳を重ねて来ると、当然鬼籍に入った人も多く為り、最近はジェンダー差別の問題もクローズアップされる事も多いので、「男の」とか「女の」等という形容詞は使い辛く為って居るが、今日はバリバリ昭和生まれの僕に免じて頂き、最近幽明境を異にした人を含めた、極めて昭和的な「男の背中」の話を。

先ずは俳優、田中邦衛。この人にはお会いした事も無く、画面上でしか知らないが、最近の俳優には決して居ないで有ろう超個性的な顔と声、喋り方のインパクトは大きかった。「北の国から」の役柄は、勿論彼のシグナチャーで・ロールで、一挙手一投足に「男」が溢れて居て、その背中は正に「日本の昭和の男」だが、その前に「情けない」、時には「狂気の」が形容詞として付くのでは無いだろうか?

それは「青大将」でもそうだし、安部公房勅使河原宏コンビの「おとし穴」や「他人の顔」での役柄、僕が愛して止まない「仁義なき戦い」シリーズでの、前作で死んでも、次作では別の名でゾンビの様に蘇る(笑)チンピラ役もそうだが、田中邦衛と云う人は「情けない男の背中」を表現できる、数少ない名優だったと思う。

次にジェームズ・レヴァイン。彼は僕の18年間のニューヨーク生活時代に、最も「背中」を見た指揮者の1人だろう。メトロポリタン歌劇場カーネギー・ホール、リンカーン・センターで、彼の指揮を観たのは数知れず。

然し晩年は太り過ぎ、或いは車椅子姿だったり、またセクハラ疑惑が出て出演不可と為ったりと、その背中を確りと見る事は叶わなかった。それでも、彼が来てからMET Operaが世界的な名声を得たのは確かで、これまたセクハラで解雇されたデュトワと共に、その音楽的功績を否定する事は難しいと思う。

そして村上"ポンタ"秀一…僕の大好きだったセッション・ドラマーに登場頂く。

翼をください」で知られる「赤い鳥」のメンバーとしてデビューするが、その後はスタジオ・ミュージシャンとして活躍、僕的にはジャズ・フュージョンも熟せるテクニシャンとして、そして「イカ天」(三宅裕司いかすバンド天国)の審査員としての彼が思い出深い。

この「イカ天」の審査員には、ポンタと共に泉谷しげるのバックバンド「Loser」をやっていた吉田健や、斎藤ノブ伊藤銀次等の曲者ミュージシャンが出演して居たが、この番組に出場した僕の弟もドラマーだった事も有って、彼の厳しいプロフェッショナリズムには、尊敬の念を持って居た。

が、此処にポンタを持って来たのには訳が有って、それは彼が或るインタビューで語った内容に感動したからなのだが、そのインタビューで、彼はインタビュアーにこう聞かれる。

「ポンタさんは今まで多くのミュージシャンと共演して来たと思いますが、一番印象に残っているのは誰ですか?」

「そいつはヴォーカルなんだけど、ドラマーってのは大体ヴォーカルの真後ろに居るだろ?コンサートが始まって俺らが前奏を演奏し始めて、暫くしてそいつがステージに入って来て、スタンドマイクの前に立って歌い始めた途端、そいつの背中を見たら『嗚呼、コイツも人生色々有ったんだろうな…』って思って泣けて来ちゃって、俺、コンサートの初めから終わりまで号泣しながら叩いてたんだよ…」

「何と!それって誰なんですか?」

永ちゃん矢沢永吉)だよ!」

然もありなん…実は僕も某所で2回程永ちゃんを見かけた事があって、そのスタイルの良さと面魂、美声にうっとりした事があるから、永ちゃんとは矢張り「男に惚れられる男」の典型で、ポンタが「男の人生を語る背中」に号泣した事にも充分納得出来たのだった。

「嗚呼、死ぬ迄に『背中で人生を語れる男』に為りたい…」と願う、今日の孫一でした。

 

追伸:最近もうひと方、美術品に人生を賭けた背中を持った方が亡くなった。国内外の一流コレクターや美術館にモノを納め、白洲正子小林秀雄川端康成等の文人との交流でも知られる日本有数の古美術商、柳孝氏である。

僕も亡き父も大変お世話に為り、教えて頂いた柳氏の背中は、決して大きくは無かったが、その背中は昭和、平成、令和と時代を変えても、いつも「美の狩人」としての威厳と自信に満ちて居たと思う。そしてその背中を見て育った孝一氏、孝治氏の御子息達も、これからの日本古美術界をリードして行くに違いない。

柳孝氏のご冥福を、心よりお祈り致します。

 

ーお知らせー

*7月1日発売の「婦人画報」8月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」の、連載3回目が掲載されました。今回はポーラ美術館で開催中の展覧会、「フジター色彩への旅」に出展中の「イヴォンヌ・ド・ブレモン・ダルスの肖像」を取り上げています。ご一読下さい!

*「Nikkei Financial」での連載コラム第6回目、「『憂世』における『浮世』への招待」(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB300PG0Q1A530C2000000)が掲載されました。コロナ禍の「憂世」だからこそ、改めて「浮世」の絵画、浮世絵を紹介しています。ご一読下さい。

*5月25日発売の雑誌「GOETHEゲーテ)」(幻冬社)7月号内「相師相愛」(→https://goetheweb.jp/person/article/20210606-soushisoai58)にて、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏との対談が掲載されています。是非ご一読下さい!

*5月25日発売の雑誌「アート・コレクターズ」(生活の友社)6月号「音楽と美術(アート)」(→https://www.tomosha.com/book/b583830.html)内の、「私が選ぶ 音楽を感じるアート」で、小川信治さんの作品「風景の中のヴィナス」を紹介しました。ご一読下さい!

*5月1日発売の「婦人画報」6月号内「極私的名作鑑賞マニュアル」の、連載2回目が掲載されました。今回は静嘉堂文庫美術館所蔵の河鍋暁斎の名品と、美術館移転の奇縁を取り上げました(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a36204478/art-yamaguchikatsura-210502/)。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第5回目、「美意識のスゝメ」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD1328G0T10C21A4000000)。美意識の高め方に関する、私的指南書的コラムです。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第4回目、「最後に笑うオークションの『戦士』は誰だ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD16ARI0W1A310C2000000)。アジアで売却された西洋絵画として史上最高額を記録したバスキアの作品と、オークションに関わる人々を取り上げました。

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 60の一行目「せききょうず」は「しゃっきょうず」の誤り、P. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*3月1日発売の「婦人画報」4月号内、「極私的名作鑑賞マニュアル」の隔月連載が始まりました。僕の第一回は「フランシス・ベーコン」(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a35639717/art-yamaguchikatsura-210307/)。是非ご一読下さい。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第3回、「花の色は移りにけりないたづらに 日本美術の真価は」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD271D00X20C21A1000000)。最近の日本美術マーケットについて書きました。登録が必要ですが、ご興味のある方は是非。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第2弾、「All You Need is Love…and Art ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD077E50X01C20A2000000)。現在ブレイク中の「オンライン・オークション」について書きました。

*「Nikkei Financial」に「閉じ込められている火が、一番燃えるものだ」というタイトルの、直近のオークション業界に関する連載コラム第1弾を寄稿しました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXMZO65491530X21C20A0000000)。登録制ですが、是非ご一読ください。

*大阪の藤田美術館が新しくなり、竣工しました(展示は2022年から)。展示公開が待ち切れません!(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2020/10/19/1202/)。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました。是非ご一読下さい!

*僕が出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2022年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

 

「熊野」の季節。

あれから10年…時の流れは早くて、遅い。犠牲者の方のご冥福を改めてお祈りしたい。

そしてこの10年の間、僕を含めて人々の生活は一変したが、自然の力だけは変わらず、今年も3月も半ばに為ると、早咲きの桜の蕾も綻び始める。

そんな中、観世能楽堂に足を運び、久し振りにお能を観て来た。片山九郎右衛門師の「熊野(ゆや)」…この時期にピッタリの曲だ。

金春禅竹作とも云われる「三番目」能、「熊野」の舞台は平家の時代。都に出てきて平宗盛の愛妾となっている「熊野」が、故郷の母親から病が重くなったので一目会いたい、との手紙を受け取る。熊野は里に帰らせてくれと宗盛に頼むのだが、宗盛は聞き入れない。里へ帰したら二度と戻らないのではと云う危惧と、熊野を元気付けようとする想いで宗盛は熊野を連れ、清水寺へ花見に出かける。

母の病を憂いながら熊野は観音堂で祈りを捧げ、一座を接待する為に舞うのだが、折悪しくも雨が降り、花を濡らし落とす。そこで熊野は

「いかにせん 都の春も惜しけれど なれし吾妻の 花や散るらん

と詠み、宗盛を感動させて許しを得、嬉しさに震えながら帰郷する、という曲である。

全てが豪華絢爛で、話も判り易く、春と櫻のムンとした薫りが感じられる程に美しいこの能の一番の聴き処は、老いた母親が熊野に宛てた手紙の最後で謡われる、在原業平の母の歌

「老いぬれば さらぬ別れのありといえば いよいよ見まく ほしき君かな」

だろう…母親を一人暮らしさせて居る身には、涙を堪えられぬ歌だ。

そして九郎右衛門師のたおやかな「熊野」を観終わった僕は、嘗て母にプレゼントをした茶碗を思い出して居た。

楽家七代長入の共箱を持つこの赤茶碗は、口辺が軽く波打ち、赤と微かな緑の色合いが美しく、その大らかで春らしい姿に惚れて買ったのだが、その後能にも造詣の深い茶湯者に箱書を頼むと、「熊野」と云う銘が付けられて戻って来た。

能「熊野」は、「今生きて居る人」の尊さを改めて教えてくれる曲で有る。

今度母に会いに行った時には、この「熊野」で母に一服点てようと思う。

 

ーお知らせー

*「Nikkei Financial」での連載コラム第5回目、「美意識のスゝメ」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD1328G0T10C21A4000000)。美意識の高め方に関する、私的指南書的コラムです。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第4回目、「最後に笑うオークションの『戦士』は誰だ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD16ARI0W1A310C2000000)。アジアで売却された西洋絵画として史上最高額を記録したバスキアの作品と、オークションに関わる人々を取り上げました。

*拙著「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」(PHP新書)のP. 62の7行目「大徳寺」は、「相国寺」の間違いです。P. 100をご参照下さい。

*拙著第3弾「若冲のひみつー奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」が、PHP新書より発売になりました(→https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84915-7)。若冲をビジネスサイドから見た本ですが、図版も多く、江戸文学・文化研究者のロバート・キャンベル先生との対談も収録されている、読み易い本です。ご興味のある方はご一読下さい。

*3月1日発売の「婦人画報」4月号内、「極私的名作鑑賞マニュアル」の隔月連載が始まりました。僕の第一回は「フランシス・ベーコン」(→https://www.fujingaho.jp/culture/art/a35639717/art-yamaguchikatsura-210307/)。是非ご一読下さい。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第3回、「花の色は移りにけりないたづらに 日本美術の真価は」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD271D00X20C21A1000000)。最近の日本美術マーケットについて書きました。登録が必要ですが、ご興味のある方は是非。

*「Nikkei Financial」での連載コラム第2弾、「All You Need is Love…and Art ?」が掲載されました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGD077E50X01C20A2000000)。現在ブレイク中の「オンライン・オークション」について書きました。

*「Nikkei Financial」に「閉じ込められている火が、一番燃えるものだ」というタイトルの、直近のオークション業界に関する連載コラム第1弾を寄稿しました(→https://financial.nikkei.com/article/DGXMZO65491530X21C20A0000000)。登録制ですが、是非ご一読ください。

*大阪の藤田美術館が新しくなり、竣工しました(展示は2022年から)。展示公開が待ち切れません!(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2020/10/19/1202/)。

*拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、8月13日に平凡社新書より発売されました(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司氏が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。帯は平野啓一郎氏と福岡伸一先生が書いて下さいました!是非ご一読下さい!

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。