「創業245年」目の、年間史上最高売り上げ。

昨日から再び降り積もった大雪で、今朝もニューヨークは白一色…どころか、車は雪に埋もれて凍り付き、何処か新しい現代彫刻の様相を呈し、後輪が空回りして抜け出せないパトカーを横目で見ながら、そろりそろりと歩いて出勤した。

会社の前に着くと、何と雪掻きに因って出来た大きな「雪山」が聳えていて、「かまくら」が作れそうな勢いである。今年のニューヨークの冬は本当に厳しく、雪も多い。そして明日、明後日と再び雪の予報である…個人的には雪は嫌いでは無いのが救いだが、こう降り続けると億劫なのも事実だ。

さて連日のカタログ作業と、妻のインフルエンザが移らない様にソファで寝ているここ数日で、腰は痛いわ、目は疲れるわでフラフラ状態だったのだが、オフィスに着いて暫くすると、全社メールで「良い知らせ」が送られて来た…そしてそれは、2010年度の売り上げの公式発表であった。

その発表では、2010年度のクリスティーズは全世界で「33億英ポンド/50億ドル/約4356億円」を売り上げ、前年比英ポンドベースで「53%」の売り上げアップ、そして1766年(日本で云えば『明和三年』!)の創業以来の、「年間最高売り上げ」を記録したとの事である。これはちょっと驚きの数字で、リーマン・ショックの前年よりも売り上げが多いと云うのだから…。

その報告中でも特徴的なのは、「プライヴェート・セール」の売り上げが前年に比べ39%アップした事と、レジスター(購入のための登録)した新しい顧客が、22.7%も増えたことだろう。そして勿論、昨年5月のニューヨークでの印象派・近代絵画セールに於いて、オークション史上最高価格(1億650万ドル)で売却された、ピカソの「ヌード、観葉植物と胸像」の事も忘れてはならない(拙ダイアリー:「8分6秒の戦い」参照)。

地域別で見ると、アメリカが前年比111%アップ(アップ率は、全て英ポンドベース)、売り上げは13億英ポンド(約1716億円)でトップ、そしてやはり「中国・ドバイパワー」のアジア・中近東が、前年比116%アップと凄い伸びを見せていて、香港の売り上げは114%アップの4億6680万英ポンド(約616億円)、ドバイが157%アップの3290万英ポンド(約43億4200万円)である。部門で見れば、当然1位は「印象派・近代絵画」で、2位は「現代美術」、3位は2位に肉薄する勢いの「アジア美術」。因みに4位以下は、宝石、オールド・マスター・19世紀アート、ヨーロッパ家具、アメリカ絵画、古書・草稿、ロシア美術、ラテン・アメリカ絵画、版画、英国美術と続く。

最後に昨年度「最も高額だった作品ベスト10」だが、1位と4位はピカソ、2位と9位にジャコメッティ、3位がモディリアニ、5位マティス、6位からやっと現代美術が登場しリキテンスタイン、7位にマイケル・クライトンのジャスパー、8位に(意外にも?)ホアン・グリ、10位にウォーホルと云う結果。

2011年も、アート・マーケットがこの調子で推移する事を祈るばかりだが、しかし3月には、この好調なアート・ワールドから「確りと」忘れ去られている、「日本美術」の大勝負が待っている…頑張って日本を「ワールド・アート・マップ」に戻し、世界のアート・マーケット関係者に一泡吹かせなければ!