Opening Gala of "Roger Weston Wing"@シカゴ美術館。

先週末は、金曜日からシカゴに行っていた。

風邪を引いたらしく、木曜の夜から寝込んでいたのだが、金曜の朝這う様にして飛行機に乗り、久々のシカゴへ…この街を訪れるのは、「Golden Clouds」展以来であろうか(拙ダイアリー:「シカゴ美術館『Beyond Golden Clouds』展と「The Modern Wing」参照)。

昼過ぎに着き先ずはホテルにチェックイン、荷物を置いて直ぐに、「ハンコック・タワー」の38階に在り、海と見間違える程広大なミシガン湖を見渡す、素晴しい眺望のシカゴ・オフィスに行く。此処で同僚のSと合流し、最初の顧客の元へ。インテリア・デザイナーとして名を馳せたこの顧客とは初対面、これまた素晴しい眺望の部屋部屋に飾られた、中国・日本・東南アジアの美術品を観る。

部屋を案内され30分程談笑した後、Sとは此処で別れて次の顧客の元へ。この顧客は長年の顔なじみで、今回のオークションでも、自分の出品作品が良く売れたので機嫌も良い。セールの結果報告をしたり新たに査定をしたりして、ホテルに戻る。風邪に因る具合の悪さもも手伝い、階下のアイリッシュ・パブから非常に旨い「Loaded Beef Dip」を取り寄せて食べると、即ベッドに倒れ込み初日は終了。

翌土曜日は、午後から再び顧客廻り。今度は有名コレクター宅を訪れ、吹き抜けの素晴しいアパートに、深見陶治や流政之等の日本現代彫刻と共に、日本・韓国・中国・東南アジアの仏教美術が並ぶのが壮観である。コレクター氏とは、何だかんだで4時間超の至福の時間を過し、その晩のパーティーでの再会を約した後一度ホテルに帰り、タキシードとブラック・タイに着替えて、今回の出張の「メイン・イヴェント」に出席する為、シカゴ美術館に向かった。

このメイン・イヴェントである「オープニング・ガラ」は、筆者の大顧客でもある日本美術コレクター、ロジャー・ウェストン氏の発案・寄附に拠る新しい日本美術展示スペースとなる「ウェストン・ウイング」と、新装された日本美術ギャラリーを記念する催しで、ブラック・タイ・シッティング・ディナーには何と650名近い人が参加すると云う。

会場に着くと、カクテル・プレイスやギャラリーはタキシード姿の男性や着飾った女性達で、既に一杯。数え切れない程の顧客、美術館関係者、学者、業者、顔見知り等と挨拶をしながら、展示作品を観る。こう云う時に何時も感じるのだが、自分の扱った日本美術作品がアメリカの有名美術館に並んで居るのを観ると、「日本美術の力とクオリティ」を非常に誇らしく思えるので不思議だ。

ディナーは、HIROKO SHIMBOと云う「セレブ」女性シェフ(筆者はこの人を知らない)が作る「和風アメリカン料理」であったが、残念ながら料理が中々出て来なかったり、醒めた料理が運ばれて来たり、また肉がレア過ぎたりして非常に残念至極。やはり和食は、バンケットには不向きなのでは無いだろうか…こう云った大人数の宴会では、在り来りでは有るが、やはりアメリカン料理の方が安心して頂ける気がする。筆者と同テーブルには、美術館のトラスティー達が並び、最近のシカゴ美術館の購入作品や、その動向などを話す。ガラ・オークション等も有って盛り上がり、時間は矢の如く過ぎたが、夜半過ぎにやっと終了。文字通り足を引き摺ってホテルに帰り、2日目も撃沈。

そして日曜は、仲の良い顧客Gのシカゴ郊外の御宅で「PRINT PARTY」。Gがコレクションした浮世絵版画の名品を皆で鑑賞し、最後にディナーで締め括ると云う、何とも贅沢な素晴しい企画である。Gは恐らく現存する浮世絵版画のコレクターとしては3本の指に入る大コレクターだが、こう云った事を惜しげも無くする所に、外国人コレクターの良さが有ると思う。

お昼過ぎにホテルのロビーで、同行者と待ち合わせ。長年の付き合いの大英博物館・日本美術部門「キーパー」(大英博物館では、「学芸員」の事を「キュレーター」や「リサーチャー」とは呼ばず、「キーパー」と呼ぶ)T氏、ライデン国立民俗学博物館のM先生、コレクターで自身の財団を持つC氏と待ち合わせ、この4人で迎えのストレット・リムジン(!)に乗り込む。車中では、日本美術の話題で大いに盛り上がり、G氏宅に着く頃には、初対面同士でもすっかり打ち解けていた…流石「日本美術四人組」である…狭い空間に長い時間一緒に居ると、時には愛さえ芽生える事が有るのだから(笑)。

Gが迎えに出て家に入ると、其処には既に10名程の人がいた…皆と挨拶を交わし階下の展示勉強室に行き、版画を見始める。師宣等の素晴しい初期版画(墨摺絵・紅絵・丹絵)、春信、歌麿写楽、長喜、広重、北斎迄、4時間掛けて皆で鑑賞、そして意見交換・解説、時折矢の様な質問が飛んで来たり…本当に勉強になった!

ディナーは近所のクラブ・ハウスに移動し、ビュッフェで楽しく会食。急いでデザート迄掻き込むと、我等「日本美術四人組」は再び迎えのリムジンに乗り込み感想談義、シカゴ市内へ帰り着いたのは夜10時前…最後の夜も、再びバタンキュー(古いね:笑)であった。

そして昨日の月曜の昼、ニューヨークに戻ったのだが、この多忙な月曜日は実は未だ終わらず…が、昨晩の話はまた明日改めて。

何とも中身の濃い、充実のシカゴ出張でした!