「見納め」ジャパン。

今、成田のラウンジに居る…今日これから、ニューヨークに戻るのだ。が、ニューヨークに戻っても、翌日の朝8時半の飛行機で、時差付き2泊3日のアメリカ国内出張…人生はそう甘くは無い(笑)。

さて昨日は、日本滞在最終日、観れずに居た幾つかの展覧会を、駈け足で観る。

先ずは、三井記念美術館で開催中の「日本橋架橋百年記念 特別展日本美術にみる 橋ものがたり 天橋立から日本橋まで」。

橋をモチーフとした「柳橋図屏風」等の絵画、光悦の国宝「船橋蒔絵硯箱」等の漆工品、陶磁器、浮世絵版画等が揃うが、中でも素晴らしかったのが、益田鈍翁旧蔵の「住吉」と、松永耳庵旧蔵のご存知「橋姫」の、二碗の志野茶碗で有る。特に「住吉」の、如何にも「ワタシ、使われてます!」的な、とろ〜り&しっとり感はもう垂涎モノで、この茶碗で一服頂戴仕りたい…と云うか、この茶碗、お分け頂きたい(笑)。

「橋」を堪能し日本橋を後にすると、今度は恵比寿に向かい、G/P Galleryで開催されている「SHIZUMARU 鎮まる」展を観に。

この展覧会は、後藤繁雄プロデュース、写真家上田義彦と花人川瀬敏郎に拠って「3.11」直後に行われたコラボ・ワークで、自然と人間の新たなる関係性や、倫理観を問い直す企画で有る。川瀬氏の抽象的な花は、上田氏独特のしっとりとした写真に拠って、静かに、そして力強く、観る者に「鎮魂」の想いを迫る…作品数こそ少ないが、迫力有る展示で有った。

鎮かな気持ちに為り、恵比寿で某ディーラーとランチをした後は、今度は電車を乗り継いで千葉市美術館へ急ぎ、「特別展 浅川伯教・巧兄弟の心と眼 朝鮮時代の美」を観る。

この有名な兄弟の事を知らない人は、各自調べて頂きたいが、浅川兄弟は朝鮮半島へ植民地時代に渡り、各々小学校教師や朝鮮総督府の山林課職員を生業としながら、工芸品を研究した。出展作品のリストを見ると、安宅コレクションからの出品が目立つが、この事実は、安宅英一と後の世の眼が、当時の兄弟の「眼」の確かさを証明している事に他ならない。

展覧会中、特に好きだったのは、先ずは「白磁台皿」。この李朝白磁は祭器で、恐らくは餅等を供えた物で有るが、何しろ微妙に反った角平台、その下の足部への膨らみや足の美しさが、得も云われない。また、刷毛目碗「新両国」や井戸脇茶碗「曙」も中々良い味で、安宅コレクション中の白眉「青花辰砂蓮花文壺」も、何度観ても「逸品中の逸品」の風格を持つ。

そしてもう一点、この展覧会を観て驚いた事は、浅川兄弟の「絵」が本当に上手だった事だ…スケッチや覚書等に見える彼等の正確な線は、時に「李朝」風な趣さえ漂い、飄々とした中にも生真面目さが窺え、筆者の眼には非常に好ましい物に映った。

3つの展覧会を駈け足で観た後は、友人のアーティスト流麻二果さん、資生堂のクリエイティブ・ディレクターの高橋歩氏、メルト妻と青山の行き付けイタリアン「D」で遅いディナー…暫しの別れを惜しんだ。

さぁ、もうすぐ搭乗で有る…「地鎮」の「重し」が去った後の日本が心配で有るが(笑)。