オスカールの「旅」と、クリスティーズ「史上最高の現代美術セール」。

いや驚いたの何のって、今日衆院を解散すると、一昨日の党首討論中に首相が爆弾宣言した!

突発的にも自滅的にも、はたまた自虐的にも受け止められるこの発言だが、しかし東京都知事選と共に日本・東京の将来を決める、そして国民・都民双方の見識と責任感を重々問われる、非常に重要な選挙と為る…国民・都民として確り「投票」と云う責任を果たしたい。

そしてもう1点驚愕したのが、一昨晩開催されたクリスティーズ・ニューヨークの「現代美術イヴニング・セール」の結果だ!

先一昨日のサザビーズのセールも凄く、ロスコの「No.1(Royal Red and Blue)」の7512万2500ドル(約60億7000万円)を筆頭に、アーティスト・レコードと為ったポロック等を以てして、サザビーズ史上最高額の、総額3億7514万9000ドル(約303億円)を売り上げた。

が、更に驚くべきは一昨晩のクリスティーズのイヴニングで、4億1225万3100ドル(約333億円)を売り上げ、現代美術のオークション史上、世界最高売上記録を樹立したので有る!

こちらは、数後程多さに危惧も有ったが、大成功に終わった「ウォーホル・ファンデーション・セール」(総売り上げ:1701万7050ドル:約13億7500万円)の好景気を受けて、ウォーホルの「自由の女神」が4376万2500ドル(約35億3600万円)でトップ・ロット、その他フランツ・クラインやクーンズ、バスキア、ディーベンコーン等の、有名実力派作家のアーティスト・レコードを輩出した、モンスター・セールと為ったので有る。

恐るべし、現代美術マーケット…何処まで高く為って行くのだろう?

さて、それに引き換えこちらは地味に(笑)、日本での仕事がはじまった。

早速地方出張もこなし、そのお陰で版画や漆工品、屏風等の大物も取れたりして、幸先の良いスタート…が、相変わらずの問題は、酷い時差ボケである。

顧客と会って居ても、肝心の作品拝見時は良いのだが、話になると急に眠く為ってしまう。山中教授でも誰でも良いから、特効薬を早急に開発して頂きたい(笑)。

そんな中、昨日は顧客廻りの後は、久々にかいちやうの茶室を訪ね、桃山の作の如き風格の有る、近代作家の志野茶碗でお茶を頂きながら、サンディの被害や光悦会等の近況をお互いに報告し、毎度の事ながら茶道界と美術界の四方山話に勤しんだ。

そしてお茶の後は、原宿に最近開店した「ノムさん」こと野村友里さんのお店「Eatrip」に2人で赴き、美味しいビーツやテリーヌ、トリッパ・パスタ、牛や鴨を頂く。

「涙を飲んだ、買取価格事件」(書きたくても、書けないのが悔しい…:笑)や映画「利休にたずねよ」秘話、「骨董借金」の話等と共に、優しい味付けとリーズナブルな価格にも大満足…当然デザートも確りと頂きました。

そして話は1日遡り、一昨日の夜は、ニューヨークの友人で現代美術家のオスカール大岩が、渋谷ヒカリエの8F「CUBE」で開催中の展覧会「Oscar Oiwa-Traveling Light」と、その関連イヴェントで有るアーティスト・トークに行って来た。

この展覧会は、代官山ヒルサイド・テラスに在る「アートフロント・ギャラリー」が主催するオスカールの個展で、代官山のギャラリーでも大きな作品が展示されているが、ヒカリエの展示も鮮やかな色とファンタジー、そしてその裏に潜む世界の政治体制や経済、自然災害等に対する不安や恐怖を力強く表現した、大小の素晴らしい作品が展示されている。

特にオスカール自身が、

「スタジオに遊びに来る人の殆どは、僕がブラジル人で『オスカール』だって云うと、皆色黒でマッチョなマゴイチみたいな男を想像するらしくて(笑)、僕が出て行くと『アシスタント』に思われて、『オスカールは何処に居るんですか?』って聞かれるんだよ!」

と云う様に、メガネを掛け、細くて繊細そうな本人の風貌からはとても想像出来ない、巨大なキャンバスに描かれた絵画は、一見すると綺麗で時にはカワイイが、その内面は作者のハート同様に物凄い「強さ」を秘めているのだ。

満員の会場でも、朴訥な喋りと飾り気の無いトークに終始したオスカールは、サンパウロで生まれて建築を勉強し、その後北千住に11年間住んだ後、9.11の翌年ニューヨークに来て、当地で今も活動中だ。

そして、オスカールが経験してきたブラジル、英国、日本、米国を巡る「旅」(所謂「旅」と云うよりは「生活」)に因って形成された、日本人が中々持ち得ないグローバルな視点や思考は、自身が云う毎日の「サラリーマン」的時間帯の制作活動と、4人の子供達や明るい奥さんと共に過ごす時間と共に、ニューヨークと云う「世界の異国」で、あのパワフルで美しい作品を産み出して居るので有る。


大岩オスカールTraveling Light」展
渋谷ヒカリエ8階 CUBE:11/14-11/26、 11:00-20:00
代官山アートフロントギャラリー:11/16-12/2、11:00-19:00(月曜休)


アーティスト・オスカールの旅は終わらない…そして、世界情勢のトピックスにも終わりは無い。オスカールのアートは勿論綺麗で時に楽しいが、それだけで無く、今の日本人に最も必要なモノを隠し持っている気がするので、是非皆さんにもご覧頂きたい。