Revenge of Robert Glasper@Blue Note.

今日は先ずはお知らせから…。

僕がコラム「アートの深層」を連載している女性誌「Dress」8月号は、7/1発売。今月のお題は「途中下車する人」…アートと広告の両領域で活躍する写真家、上田義彦氏の展覧会を取り上げて居ます。是非ご一読下さい!

さて、アメリカ連邦最高裁同性婚を認め、エンパイア・ステート・ビルも「レインボー・カラー」に染まったニューヨーク。

そのニューヨークとは何の関係も無いが、最近僕が知って最も驚いた事の1つに、子供の頃散々歌った「むすんでひらいて」の作曲者が、何と「社会契約論」のジャン・ジャック・ルソーだった事が有る…吃驚仰天だったが、若しかして知らなかったのは僕だけか?

そんな超文化人のルソー様と比べる事自体が失礼なのだが、新聞で「文化芸術懇話会」とか云う自民党の集まりの記事を読んだ…彼等の文化的リテラシーの余りの低さに、吐き気すら覚える。

身の程知らずの自民若手アホ議員が「マスコミを懲らしめる為に、広告収入を減らす様に経団連に働き掛けろ」、プラスその場に居た似非右翼の作家百田某も負けず劣らずで、自分が言論人の癖に「沖縄二紙をつぶさねばならない」等と、「言論統制」発言をしたと云う…冗談だったらしいが、冗談としても全く以って品位の欠落も甚だしい。

つまり自分が言論統制するのは良いが、されるのは嫌だと云うだけの事…こんなレヴェルの安倍ちゃんのお子ちゃま達とは、話ちぇまちぇん。

序でに、このバカげた懇話会の「設立趣意書」によると、芸術家との意見交換を通じて「心を打つ『政策芸術』(!)を立案し、実行する知恵と力を習得すること」が目的らしい。この文々からは何処か「ナチス的香り」が漂って来るが、その「芸術家」の一番手がこの百田某らしいのだから、既に終わって居ないか?…もう日本人を辞めたく為って来ました(涙)。

と、憤りっぱなしの今日此頃だが、自民党議員や百田某に聴かせても、彼等には絶対的に理解出来ないで有ろう『ホンモノの「藝術家」に拠る、ホンモノの「藝術」』を、ブルー・ノートで体験して来た…ロバート・グラスパー・トリオで有る。

実はグラスパーのライヴは、数週間前の日本出張の際に池袋の東京芸術劇場で観て来たばかりなのだが(拙ダイアリー:「ロバート・グラスパーVS.キース・ジャレット」参照)、この時は「塚」指揮者とそのオーケストラとの共演だった事、序でに最も楽しみにして居た曲だった、グラスパーに拠るモーツァルトの「ピアノ・コンチェルト第21番」が当日急遽変更と為って仕舞った事も有って、一寸欲求不満気味だったので、今回のブルー・ノートでのギグに抱いた僕の期待は、もうはち切れんばかりに膨らんで居たのだった。

さて今回のステージは8時からだったが、良い席をゲットする為に6時のドア・オープンと共に若い友人とブルー・ノートに入り、開演迄「ロー・カーボ・ダイエット」と云う建前でステーキを食べて居ると、8時が近付くに連れ会場は人で一杯に為り、開演直前には満席+バーでの立ち見も可也り多く、店はパック状態に。

そしてDJ、その後にグラスパー・トリオが登場すると、絶大な声援…流石ニューヨークのジャズ・シーンの風雲児と呼ばれる男だ!この辺からして、前回の日本公演とは良い意味での「ハコの大きさ」と「場所」の違いが感じられる。

ピアニスト、ロバート・グラスパーは1978年にヒューストンで生まれた。ニューヨークの「ニュー・スクール」のジャズ・コンテンポラリーを出てプロに為り、3年前のグラミーで最優秀R&Bアルバム賞を受賞し、一躍スーパースターと為る。

が、彼の音楽は、通常ジャズの範疇に入れられるが、DJに拠るサンプリングやラッパーの多用、政治的・時事的問題の音楽への流用等を考えると、どちらかと云うと「Hip-Hop Jazz」と呼ぶに相応しいのでは?とも思う、新しいタイプの物なのだ。

この日のグラスパーは、ラフな黒Tシャツにサングラス、楊枝らしきモノを口に咥えた侭のプレイで終始リラックスして居て、トリオの演奏も緩急・変幻自在。

そしてあの凶暴そうな顔(笑)からはとても想像出来ない美しい旋律や、ハリー・ベラフォンテに拠る黒人差別問題に関するモノローグを載せたグルーヴィーな曲構成、脳裏から消えない子供達の声のサンプリング、飛び入りしたラッパーのコミカルでインスタントなリリック、複雑なリズムと不意を突くインプロヴァイゼイション、激しくも繊細なドラムと、グラスパーの眼を気にする(笑)若々しいベース…全ては僕の耳に新しく、且つ魅惑的で有った!

こうしてグラスパーは、東京で欲求不満だった僕への個人的「リヴェンジ」をニューヨークで遂げた末、大喝采の中ステージを去って行き、感動頻りの僕と若い友人はノン・アルコール・ドリンクでの乾杯を、グレート・グラスパーに捧げたのでした。

P.S.:ロバート・グラスパー・トリオは、9月にブルー・ノート東京に出演する予定…一見一聴の価値有りなので是非!