速報!「宗器寶繪ー藤田美術館藏中國古代藝術珍品」が、アジア美術オークション世界新記録達成!

先週16度まで気温が上がったニューヨークは、週末に「冬時間」を終え「夏時間」に為った途端に、マイナス8度まで冷え込み、選りに選って月曜夜から火曜に掛けての猛吹雪と出された予報の為に、「藤田美術館セール」前日の火曜日はクリスティーズサザビーズも休業、下見会は中止され、火曜日に予定されたオークションも全て翌日に延期と為った。

そんな中、その月曜日に下見会を訪れた中国人顧客達は、口を揃えて僕に「今回の天候不順は、全て君等の売る陳容の『六龍図』のドラゴンの所為だ!」と云い、「そしてこの大雪が降るのが火曜日で、君達のオークションの有る水曜で無いのは、ドラゴンが運ぶ幸運だ!」とも語った。

では、その余りにも中国的で神話的な予言は当たったのか?…と云うと、大当たり!

クリスティーズ・ニューヨークにて、15日夜7時から始まった「Important Chinese Art from the Fujita Museum/宗器寶繪ー藤田美術館藏中國古代藝術珍品」は、信じられない位の活発なビッドの応酬で、計31点の内2点だけ売れなかったが(その2点もアフターセールで直ぐに売れた)、総計2億6283万9500ドル(約301億2000万円)を叩き出した。

この金額は、今迄の如何なる東洋美術の1回のセールでの世界新記録で、当然僕が担当したオークションでも今迄で最高額。その上出品がたった31点だった事を鑑みると、今の現代美術や印象派のイヴニング・セールにも全く引けを取らない。そしてもう一つ出た新記録は、如何なる青銅器でも最高額と為った「方尊」の、3720万7500ドル(約42億円)だった。

8点出た1000万ドル超の作品の内、トップ・ロットは伝陳容の作と云われる乾隆帝旧蔵の「六龍図巻」で、4896万7500ドル(約55億5100万円)、以下上記方尊、方罍と続き、 僕の好きだった「瓿」と「羊」は、各々仲良く2712万7500ドル(約30億7500万円)で売却された。

では、何故こんなにスゴい結果と為ったのかと聞かれれば、先ずは矢張り「品質」と「来歴」で、乾隆帝所持・藤田美術館蔵の強力な来歴と類い稀なクオリティーが、マーケットに於けるフレッシュネスと共に、中国人バイヤーを最大限に魅了したのだろう。更には、コンサヴァティヴなエスティメイト…「お値打ち感」は何時でも購買欲を唆る。

そして何と云っても今回の最大の勝因は、ニューヨークというロケーションだったのでは?とも思う。ニューヨークは歴史上、世界のアート・マーケットの中心地…其処で、然もイヴニングセールで出される作品は如何なる分野のアートでも世界最高峰に相違なく、況してやこのニューヨークで世界最高品質の美術品を買う歓びは、中国人でも西洋人でも何物にも代え難いし、特に中国の人に取っては、遥々ニューヨークから母国へ文化財を買い戻すと云う、強い意気込みも生まれたのでは無いか。

更にもう一点付け加えれば、今回の「売却目的」への賛同が有ったかも知れない。それは特に中国メディアからのインタビューの最中に感じた事なのだが、前回此処に記した藤田美術館の未来の為の売却目的は、彼等に非常に理解され肯定的だったからで、これはメディアのみならず、コレクターでも然り。

僕は常に中国メディアには、「日本には中国美術収集とその保存の長い歴史が有り、それは日本人の中国美術への『敬意』と、後世に残さねばと云う責務感から発生して居る」と説明して居るが、これこそ藤田美術館も長い年月を掛けて証明して来た事なのだ。

セール中、「昭和初期に藤田家が3度行なった入札も、実はこんな感じの売れ方では無かったのでは?」等と思いながら、この成功裏に終わった仕事に携わった全ての人達の協力とご縁に感謝し、歴史上に残るオークションを開催出来た歓びを分かち合いたいと思う。

そして藤田美術館が近く彩りを新たにし、また訪れる日を鶴首しながら、取り急ぎ此処にご報告迄。

然し凄いオークションだった…準備から本番迄、凄過ぎてホント〜に疲れました(笑)。


ーお知らせー

*3月16-17日(木-金)、The Kitano Hotel New Yorkに於いて、「桃源茶会」が開催されます。今年は濃茶席を千宗屋氏、薄茶席を谷松屋戸田商店が担当されます。お問い合わせ・お申し込みはMs. Mariko Ikeuchi (212-885-7072)、若しくはRSVP@kitano.com迄。

*3月27日(月)22:25-23:14、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」に出演します→http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/。メディアには見せられないモノ・人・事が多過ぎて、どんな事に為って居るのか全く判りませんが(笑)、お時間の有る方は御笑覧下さい。