エイプリル・フール動向。

3月23日(木)
21:00 羽田着。夜着便はニューヨークの出発時間が遅いので、普段機内で眠れない僕もそれなりに眠れるが、寝過ぎに注意しないと、今度は着いた夜が眠れなく為る。そんな機内では大好きな「ゴッドファーザー」を観る。「ゴッドファーザー」はもう何十回も観て居るし、台詞も覚えて居るが、何度観ても素晴らしい…この作品には「映画の全て」が入って居るのだ。"I'm going to make him an offer he can't refuse"(彼奴には断れない申し出をしてやる)…何時か仕事で使いたい台詞だが、そんな機会が有るや否や(笑)。


3月24日(金)
10:00 購入して頂いた作品を納品する為に、運送会社と某公立美術館に行く。この作品はクリスティーズが日本の公立美術館に「初めて直接」売却した、僕の四半世紀のキャリアでも記念すべき作品で、名品が「行くべき場所」に行った、嬉しくも光栄な仕事と為った。

11:30 すみだ北斎美術館を初めて訪れる。SANAAに拠る建築は斬新だが、この日も混雑して居たが故に導線が少々気に為ったのと、版画がもう少し良く見え無いかなとも思ったが、何度も御目に掛かった事の有る楢崎先生と、モースさんのコレクションを楽しむ。

13:00 六本木の国際文化会館にて開催された、生前お世話になったS夫人のお別れ会に参加し、今迄の御礼とお別れを遺影に告げる。故人の生前の明るいご性格と交流が偲ばれる、良い意味で明るく賑やかなお別れ会だった。S夫人のご冥福を心よりお祈り致します。

16:30 某コレクションの売買に関する打ち合わせを、買い手の事務所にて。もう直ぐ調印出来そうなので、もうひと頑張り。

18:00 修理に出して居た靴が出来たので、有楽町に取りに行く。修理は靴底の張替えだったのだが、何と無く新品化して嬉しい…が、何時も新しい革底の所為で、道で滑って転んで仕舞うので要注意だ。

19:00 銀座の和牛熟成ステーキ店で、自分を元気付ける為に肉食ディナー…今回の出張も頑張らねば!


3月25日(土)
11:00 父の墓参後、実家で母とランチ。4月20日に銀座SIXに新装オープンする、観世能楽堂の記念公演が話題…楽しみ過ぎる。

14:30 六本木アート・コンプレックスに向かい、Taka Ishii Gallery「五木田智央『Holy Cow』」、Shugo Arts「三嶋りつ惠『星々』」、小山登美夫ギャラリーパウロモンテイロ展『The outside of distance』」を観る。最近の五木田人気は凄くて、昨年秋のメアリー・ブーンでの展覧会も完売だった事を鑑みると、村上・草間・奈良・杉本に続くのはこの五木田かも知れない。

16:30 「三月大歌舞伎 夜の部」を観に、歌舞伎座へ。この日の狂言は「引窓」、「けいせい浜真砂 女五右衛門」、そして歌舞伎十八番助六由縁江戸桜」。「引窓」は濡髪を演じた彌十郎が良く、「助六」は意休の左團次が相変わらず上手い。成田屋も前回見た時よりも気が入って居て良かったが、然し「助六」は何度見ても歌舞伎狂言のチャンピオンだ。

21:00 歌舞伎後は、馴染みの寿司屋「M」で夕食。寿司は、大将の軽口と共に頂くに限る。


3月26日(日)
11:30 友人と六本木のダイナーでランチ。思わず食べ過ぎる…と、毎回同じ事を云って居る自分が情けない(涙)。

13:00 国立新美術館へ行き、「草間彌生:わが永遠の魂」を観る。初期の作品は油彩も水彩・グアッシュもかなり素晴らしいが、グラフィック化された晩年の作品を大量に観るのは少々辛い…。

14:00 神宮前のMaho Kubota Galleryに向かい、久保田さんのご好意で多田圭介の展覧会「forge」を観せて貰う。多田の「残欠の絵画」は、過去と現在、オリジナルと捏造の間を行き来する秀逸な作品群だが、彼の捏造する「滅びの美」は僕を魅了する。

15:30 ワタリウムで開催中の「コンタクト・ゴンゾ展/フィジカトピア」展を観たが、イマイチ良く分からない。その後入り口で着飾った某美術館学芸員とバッタリ会い、ビックリ…これから友人の結婚式に向かうとの事。その後E館長等と、階下のカフェでお茶を飲みながら歓談。

19:30 六本木のシュラスコ店「B」で、ウィーンの美大に合格した学生達と「合格祝い肉ディナー」。若い人達との食事は何時でも楽しい。


3月27日(月)
10:00 奥歯の詰め物が取れて仕舞ったので、歯医者で治療。生まれ変わっても、歯医者さんにだけは為れない…と心底思う。

11:30 オークションの買い手の支払い等に関する電話ミーティング。オークションの業務は、オークション当日が終わったからと云って、その仕事が終わった訳では無い。

12:30 都内の鰻店にて、重要顧客と打ち合わせ。セールの報告をする。

22:30 学校の先輩加藤一二三氏を取り上げた番組に続いて、1年以上追いかけられたNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」を観る。ディレクターT氏は、非常に良くやってくれた様に思うが、僕の仕事が一般の人に少しでも伝わったら嬉しい。ご高覧頂いた皆様、有難うございました!然し自分を画面で観ると、容貌が怪物的でほとほと嫌に為る。


3月28日(火)
15:00 サントリー美術館で始まった展覧会、「絵巻マニア列伝」のレセプションへ。本展のラインナップはモノ凄くて、「玄奘三蔵絵」や「法然上人絵伝」、「病草紙」等見応え十分。U学芸員渾身のマニアックな企画、必見の展覧会だ。

16:30 ミッドタウンを後にし、ロンドン・ギャラリーで開催中の「嵯峨棗と漆芸の美」展へ。美しく小さきモノを愛する田島さんらしい質の高い展覧会だったが、根来の香合にノックアウト。


3月29日(水)
15:00 地方行政の役所に赴き、文化振興担当者と面談する。日本の公立美術館の購入方針・方法は、これからドラスティックに変わって行くかも知れない。

18:00 某美術館の理事長・副館長と食事。先日のニューヨーク・セールの報告や、館の集客や人事等のニュースを聞く。


3月30日(木)
10:00 数年振りに「脳ドック」を受ける。MRI前に「長谷川式認知症テスト」を相変わらず怯えながら受けるが、時差ボケの時は尚更。「箱の中身」を覚えるには、コーネルの作品が有効では無いだろうか?(笑)

13:00 京都の古書画商が、日本橋に新たに開店した店を訪ねる…噂を聞き、そのビルに行ってみたら既に看板も出て居た。蕭白を中心とするラインナップを拝見。

14:00 壺中居で開催中の「川瀬忍展 −机辺掌中−」を訪れる。お元気そうだった川瀬さんの作品は、 美を追求しながら、毎回毎回チャレンジ精神に溢れて居る所が素晴らしい。アーティストとはかく有るべし。

15:00 骨董商に挨拶に行くが、仕事の話はそこそこに、垂涎の茶碗で一服頂く…これだからこの仕事は辞められない!

16:00 オフィスにて、顧客と新ビジネスの打ち合わせ。テレビの威力は良くも悪しくも大きい。


3月31日(金)
9:00 香港での東洋美術のオールスタッフ・ミーティングに、電話で参加。何故西洋人は長期的視野で見れないのだろう?況してや、生産出来ない古美術なのに…。

12:00 買って置いた週刊ダイヤモンド「美術とおカネ 全解剖」を読む。読後云いたい事は色々有るが、こう云う企画が出る事は大変ヨロシイ。日本のアーティストとマーケットの将来の為に、村上隆芸大学長を心より望む。

19:30 神楽坂の弟の店「K」で、TディレクターとNHK番組の打ち上げ。Tディレクターからの番組最後の「プロフェッショナルとは?」との問いに、「貴方の事です!」と答えたい程、T氏こそ「プロフェッショナル」だったのだが、それは僕を撮ってるその後ろからT氏を撮った方が、「より番組の意図に沿ったモノになったのでは?」と真剣に思ったから。「彼女」並みに僕と時間を過ごしたTさん(笑)、本当にお疲れ様でした!


4月1日(土)
15:00 三菱一号館美術館で開催中の、「オルセーのナビ派展:美の預言者たちーささやきとざわめき」を観る。元々ナビ派は好きなのだが、ラインナップは今ひとつ。然しそれでもヴイヤールやヴァロットンの魅力は抗し難く、好きだった作品を挙げれば、マイヨールの「女性の横顔」や、ヴイヤールの「八角形の自画像」、ヴァロットンの「ポール」等か。

20:00 中目黒のムール貝店「M」で、現代藝術系友人達と花見飲み会。今回のメンバーはギャラリストY女史&A女史、アーティストN氏一家、建築家I氏、そして僕の6人+1人。花見は余りの人の多さに断念したが、久々の飲み会は相変わらずの盛り上がり!今年の僕の「エイプリル・フール」は、タイミング良く報道されたハリウッド俳優W氏の不倫疑惑と、そのW氏に僕が似て居ると偶に云われる事を活用した物で、「最初に公開された写真はヤラセで、あれは実は僕を撮った物なんだ」と云う、他愛の無い物だったが、アーティストN氏はこれを信じて、大騒ぎ(笑)。気の置けない仲間達との、相変わらず楽しい一夜でした!


今年ももう1/4が終わって仕舞った。ゆっくり休みたい…です。