タマゴではない、「タマンゴ」である。

書こう、書こうと思って一週間経ってしまったのだが、遅れ馳せながら久々に見た「モノスゴイ」舞台の話を。

先週末知人の音楽家KAORU WATANABEが、バースデー・ライブをロウワー・イーストサイドのDROMと云うクラブで演るというので行って来た。

KAORUアメリカ生まれで、和太鼓パフォーマンスグループ「鼓堂」に嘗て所属していた笛奏者である。彼は篠笛、フルート、能管(彼の能管はスゴイ。能楽森田流笛方の松田弘之氏に師事したホンモノで、個人的には彼の演奏する笛の中では突き抜けていると思う)を自在に操り、また太鼓も叩き、JAZZや邦楽も取り入れながら、独自の音楽を創り活動している。

初めて知ったのだが、彼のご両親はお二人ともセントルイス交響楽団員、父上がヴァイオリン、母上がハープ奏者という事で、そのご両親とのアンサンブル、ベリーダンサーとの共演(これはイマイチだった…)などが有り、その後KAORUの友人たちが次々に舞台に上がり、即興ライブが始まった。

そこで今日の表題の「タマンゴ」登場。「タマンゴ」とは「タマゴ」の間違いではない(笑)…「人の名前、男、アフリカ系、タップダンサー」である。

KAORUに呼ばれ舞台に上がった彼を見てみたら、さっきまでカウンターの近くで、綺麗な奥さんらしき女性と子供をあやしていたドレッドの男性で、決して若くは見えない。KAORUの紹介の後、彼は徐に靴をタップシューズに履き替え、奥さんもステージに登場。最初はゆっくりと、しかし確りとリズムを刻む。徐々にタマンゴの靴は音を増し、本人もノッて来る。

しかし彼がスゴイのはこれからで、タップをしながら動きにモダン・ダンスの様な振り付けが加わり、一種演劇的になって行く事だ。途中から奥さんのスキャット、ジャズ・ヴォーカルが即興的に入り、KAORUの笛も飛び入りする。余りのスンバラシさにショックを受け、終わった後は拍手を忘れた程である。

大げさに聞こえるかも知れないが、ホントーーーーーーに素晴しい舞台で、これぞインプロヴィゼイション、ハッキリ云ってこんなパフォーマンスは嘗て見た事がなかった。タップダンサーだけなら何人も見た事が有るし色々居るだろうが、タップに別の動きが徐々に加わり、まるで幼虫から蛹、成虫へとトランスフォームして行くが如く、最終的に一つのストーリーに結実して行く過程は、例えれば「アートの誕生」に立ち会っているかの様だった。

他人には褒め過ぎに聞こえるだろうが、そんな事は決してない。タマンゴは100%、スゴイ天才である。パフォーマンス後、KAORUに紹介してもらって少し話したが、全く興味ない素振りで再び子供をあやしていた。

来年キュレーターとして、或る現代美術のプロジェクトを考えているのだが、彼にはそこに登場してもらう様、交渉しようと思っている…乞う御期待。