「蛍狩・闇茶会」@中央公園。

「中央公園」といっても、新宿の事ではない。セントラル・パークの事である…念の為。

昨晩は友人の日本美術史家、マシューの企画で中央公園で「蛍狩」を行った。この季節の夜の中央公園は、日本の蛍に比べると随分元気な蛍が飛び交い、ちょっとした見物なのだが、NYに住んでいても意外に知らない人も多い…こう云った事からも、中央公園の自然の豊かさが伺える。

皆で食べ物や飲み物、ポットに熱湯を入れて持ち寄り、公園内の丘に集まる。ほぼ日本美術・文学の関係者で15−6人来ていた。今年のNYの夏は、雨が多くあまり暑くないのだが、この日は幸い天気も良く、少々風が強かったが野外パーティー野点には最適であった。

さてこの日は、武者小路千家次期家元の千宗屋氏が1週間の予定でNYに戻って来られていて、蛍光を楽しみながらの茶会がメイン・イベント。千氏が道具を持参され、食後暗くなったのを見計らって準備が始まった。先ず磐の平らな所を見つけ、点前座を設ける。妻の持参したアフリカ布を敷き、その上に茶箱から取り出した携帯用湯桶、諸道具を置く。その周りに皆で車座を組み、千氏の点前が始まった。

徐々に暗くなり、キャンドルを点前座廻りに燈す。夏なのに「夜咄」の様であるが、時々空中に蛍の緑の光が点いては消え、何とも云えぬ夏ならではの風情を演出する。もう、本当に綺麗であった!源氏ボタルの話から、またこの場にコロンビア大学で日本文学の教鞭を取られているシラネ教授がいらしたこともあり、会話は「源氏物語」に及び、皆で登場人物の誰になりたいか、相応しいか、等と話も盛り上がる(ちなみに「光源氏」は、満場一致でNY住・目利き古美術商Y氏に決定。ちなみに「六条の御息所」には誰も成りたがらなかった…)。

そして蝙蝠も時折羽ばたく薄闇の中、茶会は続く。

宗匠に依りこの日の為に日本から到来の、(確か)金澤の菓子匠製、蛍の描かれた干菓子を頂き、興も増す。道具は高麗青磁茶碗などだったが、暗闇で良く見えない為、「長次郎が混じってたりして・・」とヤミナベの様な冗談も出た。

「闇茶」、非常に落ち着く美味しい一服(お代わりしたので「二服」)であった。

暗闇にキャンドルの灯りと「蛍の光」。繰り返される談笑と静寂。ここは何処?と云う感じなのだが、それは「NYなのに、日本にいる感じ」と云う事では決して無く、正に「地球の何処?」もしくは「宇宙の何処?」と云う感じなのであった。

大都会のど真ん中のホタルに多謝…誠に「YUGEN」(ローマ字で書く方が相応しい)な一晩であった。