「PREVIEW」 & 「TOHAKU@TOHAKU」。

昨日から、当社東京オフィスにて「オークション・プレヴュー」が始まった。因みにこの下見会は今日11時から、18時で終了するので、ご興味の有る方は是非。
今回の出品作は、「吉野山図屏風」(16世紀・紙本金地著色・六曲一双:35-40万ドル)、「沼池水禽図屏風」(16世紀・紙本墨画淡彩・六曲一双:30-40万ドル)、そして能面(価格帯:各5千-5万ドル)が7面。

初日の昨日は、数多くは無いが、観世、宝生(家元も!)、喜多各流の能楽師の方々、コレクター、美術史家や古美術商等の来場者が有り、モノを前にしてのこう云った人々との会話やディスカッションは、売れる売れないの話も有るが、より刺激的で勉強になる…筆者に取っても非常に貴重な時間なのだ。

そんな方々に混じり、先週末「ガチムチ茶事」(笑)でご一緒した、ライターのHM女史が来場。聞けば、東博での「長谷川等伯展」プレス内覧会の帰りとの事。筆者も、午後の一般内覧会に行く予定になっていたのだが、この同日開催の「日本美術二大イベント」(笑)間には、極限られた「マニアックな人々」の行き来が確かに存在した(笑)。

HMさんと作品を見ながら、台北故宮でこの秋開催される、「謎の『南宋』展」の事等を話していたら、約束していた小説家HK氏が来場。お互いを紹介したら、お二人は「ツイッター」上でフォローしたりされたりの関係で有ったが、実際に会ったのは初めてとの事で、何と云うか「21世紀的邂逅」であった。

そうこうしていると、今度は、大規模な会を主宰されている、シテ方観世流能楽師のKT師が来場され、能面についてのお話を伺う。その後海外公演の話から、師が「ポーランド」に行くかも知れないと仰るので、その理由はとお尋ねすると、「ショパン生誕200年」のイヴェントとの事…「ショパン」と聞けば、嘗てその生涯を描いた大作を書き、最近「HKのショパン名曲選集」と云うCDを出された、HK氏を紹介しない手は無い!此処でも「ショパン」を通して「作家」と「能楽師」の邂逅が有った…人の出逢いは、本当に意外で面白い。

その後、HK氏と共に東博での「長谷川等伯展」内覧会へ。後日詳述するが、このショウは、等伯の生涯と作品を俯瞰するには最高の展覧会で、才気溢れる作家と歩く「TOHAKU@TOHAKU」は、非常に刺激的。

特に「松林図」と「月夜松林図」の関係性、「下絵説」や「模写説」について話した時に、HK氏が「ドラクロワの日記を読むと、ドラクロワエスキースの時の『自由さ』を、如何に無くさずに本作に表現するかを、常に悩んで居た様だ」と仰ったのが印象的であった…。

それは、嘗て「月夜松林図」を別々に見た二人の「一流アーティスト」が、口を揃えて「『月夜』の筆致の弱さ、構図の纏まりが『松林図』のそれに比べて異なるのは、『月夜』が『本作』だったからかも知れん。」と云っていたのを、思い出したからだ。筆者も「月夜」を売った者として、「月夜」が「等伯本人」の手に拠るとは云っていないが、考える所も有る。

しかし驚いたのは、「月夜」の「展示カード」の英語表記には、「Attributed to」でも「Studio of」でも無く、ハッキリと「by Hasegawa Tohaku」と有った事だ…。これを外人が見たら、100%「アーティスト本人作」と解釈するが、大丈夫なのだろうか?担当の方に、伺ってみたい。

人と人、人とモノの不思議な「縁」に溢れた、「下見会」と「内覧会」の1日で有った。