砂浜の難破船:「女のみづうみ」@Japan Society.

アイスランドの「火山噴火」は、当然だが色々な面で影響を与えている。

例えば美術品輸送も然り、オークションに来る予定の人々のスケジュールも然り。今朝メールを貰った、出張でロンドンに来ていたH美術館のH館長もロンドンで足止めを喰らっていたらしいが、根性でユーロスターに乗りパリへ脱出、JALに頼み込んだが、取れた一番早い予約は25日のローマ便との事…開き直って全美術館を制覇するそうだ。恐るべし「自然の驚異」…経済損失も「9・11」の比では無いらしい…人が無事なだけ、有り難い話であるが。

さて「今の所」平和なニューヨークで過す筆者は、ジャパン・ソサエティでのフィルム・シリーズの最終日、監督吉田喜重・主演岡田茉莉子の夫婦コンビの作品を再び観に行った。

その作品とは1966年度制作、川端康成原作の「女のみづうみ」。先日観た「情炎」が思いの外素晴しかったのと、やはり「岡田茉莉子」見たさである。

浮気をしている妻(岡田)が、愛人に撮られたヌード写真を或る男に盗まれてしまい、返して欲しければ旅に出る様に、と脅迫される。旅に出た妻と追いかけてきた愛人は脅迫者に会うが、愛人の婚約者も現れ事態は複雑化する。その後妻はその脅迫者と旅に出て、体を任せるのだが…。

先ず以てこの作品は、「情炎」に比べて非常に「不条理」な作品であった。全編「森英恵」の服を着た岡田は、相変わらず冷たく美しいし(森英恵のファッションが本当に良く似合う)、脅迫者役の露口茂(「山さん」!:笑)も動物的で不気味感が漂うが、後半脅迫者と旅に出て、砂浜で映画の「撮影現場」に出くわすシーンなどもかなり尺が長く、ちょっと不可解であった。

「ネガを返して欲しいから」と云う「建前」で、脅迫者と共に旅に出て肉体関係を持つ岡田の行動は、所謂「ストックホルム・シンドローム」かも知れないし、例えば「砂浜に打ち上げられた、朽ち掛けの漁船」や「水打ちされた道路」に象徴されるように、精神的・肉体的に「乾き切った女」を満足させる、唯一の「可能性」なのだろう。

映像はと云うと、「情炎」と同じ様に光と影、白と黒のコントラストが重視され、吉田は相変わらず「妻」の美しさに焦点を当てる。この作品では、岡田の顔を逆さに撮ったカット、回転しながら岡田の顔を舐めるストーカー的カメラ・ワークが多用され、これがまた唾ゴックンする程美しくエロティックである…そして相変わらず、この夫婦はエロかった(笑)。

川端の原作とは、かなり異なっているとの話も聞いているので、そちらも読んでみようと思う。