PILGRIMAGE AND BUDDHIST ART@Asia Society Museum.

日本では、G.W.がスタートしたらしい…本当に羨ましい限りだ。

此処ニューヨークは、漸く良い天気になって来て、今週末からメイン・セール「印象派・近代絵画」の下見が始まる、忙しい時期の到来となる。

とは云え、昨晩はチェルシーのイタリアン「B」で、織物作家のT、ジャズ・ピアニストH、ジャパン・ソサエティのYの各女史、そして妻の「女性4人」に取り囲まれてのディナー…彼女たちは新しい「ピアノ・バー」を作り、バカな男を騙して儲けるようと云う話で盛り上がっていたが(笑)、逃げ場の無い筆者は「B」の高田シェフと、ポリーニ(今晩カーネギーに行くそうだ)とゲルギエフで「芸術的に」盛り上がったのだった。男とは何と孤独且つ芸術的存在なのであろうか…(笑)。

さて話は遡り、昨日の昼間には「顧客詣で」序でに、アジア・ソサエティーで開催されている上記展覧会に「詣でて」来た。

この展覧会は、東アジア及び東南アジアに於いて、歴史的に行われてきた仏教の「聖地巡礼」とその美術を紹介するもので、説話画や曼荼羅等の絵画、彫刻、古地図、テキスタイル、聖地の写真等ジャンルも多岐に渡り、また作品のオリジンも、インド、中国、日本、韓国、チベット、ネパール、ミャンマーパキスタン、タイ、スリランカ、モンゴル、ブータン迄、アジア全域を網羅している。

その中で、出展されている日本美術作品を観ても、ロックフェラー・コレクションの善円作「木造地蔵菩薩立像」を筆頭に、絵画では「那智参詣曼荼羅」、「春日宮曼荼羅」や「春日鹿曼荼羅」、「熊野本地仏曼荼羅」、「『熊野の本地』絵巻」(室町)、「高野大師行状図会断簡」(鎌倉)等、彫刻・工芸では鎌倉期の「鉄造蔵王権現立像」や室町期の「笈」、また広重・北斎の浮世絵版画迄、非常にバラエティに富んでいる。

全展示作品の中で格別気に入ったのは、ウォルター・アート・ミュージアム蔵の中国(10-12世紀)の木造『龕』(厨子)や、インド(9-10世紀)の「釈迦如来坐像」(ロックフェラー・コレクション)、ネパールの「Laksha(参詣図)」(サンフランシスコ・アジア美術館蔵)、まるで現代美術の様なミャンマーの巨大仏足石(19世紀)、モンゴルの「Prayer's Wheel」等などであったが、しかし此処までアジア全域の仏教美術を集めた展覧会は、日本でも中々見れないのでは無いだろうか。序でに、これらが欲しくて堪らなかった…(笑)。

また、例えばチベットの「五鈷杵」(18世紀)や、スリランカの「水晶舎利容器」(3世紀)等の仏教工芸品は、同じモノでも此処まで日本と異なるかと感じる事に因って、アジア各国での仏教の伝来と成立の「経路・距離・時期・時間経過」等に、今一度思いを馳せる事が可能となる。

インドで釈迦が生まれて以来、「仏教」は拡散、トランスフォームを繰り返しながら今に至っている…この「知っていた」と思っていた事を、改めて「知る」事の出来る、非常に良い展覧会だと思う。

この「巡礼と仏教美術」は6月20日迄…「仏教美術」を広く観る眼が養える、絶好の機会である。