「ブルー・ノート」をもう一度。

昨晩開催された、クリスティーズの現代美術イヴニングセール中の目玉、「マイケル・クライトン・コレクション」は予想通り大人気で全作品が売れ、総額9332万3500ドル(約86億7000万円)を達成した。目玉のジャスパーの「Flag」は、2864万2500ドル(約26億6000万円)でアーティスト・レコードを達成。

Various ownerセールも合わせると、昨晩のクリスティーズ「戦後・現代美術イヴニング・セール」は総計2億3200万ドル弱を売ったのだが、詳しくは今晩開催されるサザビーズの結果も合わせて、明日このダイアリーに記す事にしたい。

さて今日の本題。聞く所によると、最近アメリカでは再び「カセット・テープ」が熱いらしく(本当か?)、カルトなミュージシャン達が新作を敢えて「カセット・テープ」でレリースしたりしているらしい…。

さて手元に、その「カセット・テープ」が有る…90分テープが2本で、記憶が定かで無いのだが、確か大学生の頃に作ったモノだ。

大学生の頃と云うと、もう既に25年以上も前になるが、この「カセット・テープ」は今聴いてみても音もそれなりにキチンとしているし、その上当時レコードからダビングしただけ有って、時折聴こえる「ブチッ」と云う「針の音」や、元々レコードに入っていたノイズ等も懐かしく聴く事が出来る。

このテープのタイトルは「One Night at Blue Note Vol.1 & 2」(こっ恥ずかしい)と為っており、自分の好きだったジャズの曲を選んで編集した、所謂「ベスト」モノである…長くなるが、その曲目を此処に挙げてみよう。

Vol.1
A-1.Moanin'/Art Blakey & the Jazz Messangers 2.Whisper Not/Ray Bryant Trio 3.Blue Train/John Coltrane 4.Misty/Erroll Garner 5.Night Lights/Gerry Mulligan 6.Take Five/The Dave Brubeck Quartet 7.So What/Miles Davis

B-1.Creopatra's Dream/Bud Powell 2.Peckin' Time/Hank Mobley 3.I'm a Fool to Want You/Wynton Kelly 4.Cool Struttin'/Sonny Clark 5.You Don't Know What Love Is/John Coltrane 6.Left Alone/Mal Waldron 7.Work Song/Nat Adderley 8.When I Wish Upon a Star/Kenny Drew Trio

Vol.2
A-1.No Problem/Art Blakey & the Jazz Messangers, 2.Tenderly/The Three Sounds 3.Scrapple from the Apple/Dexter Gordon 4.Softly, As in a Morning Sunrise/Wynton Kelly 5.Giant Steps/Jone Coltrane 6.Someday My Prince Will Come/Bill Evans Trio 7.Baby, Won't you Please Come Home/Miles Davis

B-1.Autumen Leaves/Cannonball Adderley 2.Watermelon Man/Harbie Hancock 3.Blue Minor/Sonny Clark 4.Waltz for Debby/Bill Evans Trio 5.'Round Midnight/Miles Davis 6.I Remember Crifford/Lee Morgan


云って置くが、筆者は決して「ジャズ・マニア」では無いし、嘗てピアノを少し齧った程度なので、このラインナップを観れば、「ミーハー」と思われて然るべきと思う。が、この四半世紀前に作ったテープの曲を今聴いても、あぁ自分はこう云う曲が好きなのだなとつくづく思える事に、少々意外な感も有る。特にマイルスの「So What」と云う曲は、新宿の「DUG」と云う店で(今でも在るだろうか?)、高校時代に同級生Sと初めて聞いて余りのカッコ良さに驚愕し、JAZZを聞き始めたきっかけとなった曲だったし、ベニー・ゴルソンの曲が2曲(「Whisper Not」と「I Remember Crifford」)入っているのも、自分の「好み」が出ていて面白い。

さて、実はこのテープを出して来たのには訳が有る。それは最近読み始めた或る本の為で、その本とは、最近筆者が連載を始めさせて頂いている、講談社の雑誌「セオリー」の編集担当者の新井氏より頂戴した、小川隆夫氏著「ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 1500番台ライナー・ノーツ全解説」である。何しろこの「タイトル」に、先ずヤラレてしまう…何故ならブルーノート・レーベルの「ジャケット・デザイン」には、本当に素晴しいモノが多く、例えばソニー・クラークの「Cool Struttin'」の様に、非常に有名な作品も多いからだ。

その上この本を読んで行くと、1500番台のジャケットの幾つか、例えばケニー・バレル等のアルバム・イラストを、未だ20代後半の若き日のウォーホルが描いていた事や、その他各アルバムに纏わる話がてんこ盛りで、読むのを止められなくなるのだ。

そして何を隠そう、このテープにも「1500番台」の曲が幾つか入っていて(コルトレーン、モブレー、クラーク、スリー・サウンズ、キャノンボール、そしてモーガン)、その中でも大好きだったのは、何と云ってもこのテープの最後の最後に入れた「I Remember Crifford」である。この曲は上記ベニー・ゴルソンの名曲中の名曲バラードで、天才トランペッター、クリフォード・ブラウンが「25歳」で交通事故死した翌年に、親友だったゴルソンがその「挽歌」としてモーガンに演奏させる為に作った曲である。

この時モーガン未だ19歳、しかし余りにも切なく、そしてクリフォードへの「敬意」に溢れた驚くべき名演である。そしてモーガン自身も、33歳で愛人に射殺された事を考えると、短命の天才ジャズメンの多さに愕然とし(クラーク31、ケリー39、コルトレーン40、パウエル41歳…)、その切なさが増すのだ。

此処何年も「クラシック」に嵌っていた自分が、「ジャズ」に引き戻される夜は楽しい。