クリスティーズ、再びの勝利!:「現代美術イヴニング・セール」。

「現代美術」のイヴニング・セールが終了した。

それでは先ずは、火曜の夜に開催されたクリスティーズの方から。

話題の「クライトン・コレクション」は、事前の予想通りに31点完売(水曜の「デイ・セール」にも残りが出品される)、総額9332万3500ドル(約86億7600万円)を売り上げ、その作品のクオリティと「眼」、そして知名度の高さを証明した。トップロットは勿論ジャスパーの「Flag」で、1000-1500万ドルのエスティメイトに対し、2864万2500ドル(約26億6300万円)でAvery Galleriesに売却、アーティスト・レコードを樹立した。

その他「クライトン」では、ラウシェンバーグの「Studio Painitng」が600-900万ドルのエスティメイトに対して1105万8500ドル(約10億2700万円)、もう一点ガゴシアンが落札した「Trapeze」が635万4500ドル(約5億9000万円)、ピカソ「Femme et Fillettes」が657万8500ドル(約6億1100万円)等が高額落札であった。

Various Owners Saleの方も好調で、最も高かった作品はウォーホル「Silver Liz」で1833万8500ドル(約17億円)、その他1000万ドル以上で売却された作品としては、イヴ・クラインの「人体測定(水牛)」1240万2500ドル(約11億5300万円:エスティメイトは800-1200万ドル)と、リキテンシュタイン「Untitled Composition」の1016万2500ドル(約9億5000万円:エスティメイトは450-650万ドル)であった。

結果、クリスティーズは一晩で79点中5点のみ不落札、総額2億3190万7000ドル(約215億6600万円)を売り、非常に高い落札率(ロット:94%、ヴァリュー:98%)を記録した。

そして一方、昨晩開催のサザビーズは、53点の出品中売れなかったのは3点のみで、総額1億8996万9000ドル(約176億7000万円)。

トップロットはウォーホルの巨大「Self Portrait」で、3256万2500ドル(約30億2800万円:エスティメイトは1000-1500万ドル)、2位はロスコーの非常に美しい作品「Untitled」で3144万2500ドル(約29億2400万円:エスティメイトは1800-2500万ドル)、この2点のみが1000万ドル超の作品であった。

因みにこのロスコーは、1997年にクリスティーズのセールで、180万ドルで落札されている…13年で17.5倍、中々の伸びである。そして高額第3位はブライス・マーデンの「Cold Mountain I」で960万2500ドル(約8億9200万円)、また筆者が好きだったカテランは、792万2000ドル(約7億3600万円:エスティメイトは300-400万ドル)であった。

ウォーホルのセルフ・ポートレイトは、5000万ドル位行くのでは無いかとの下馬評も有ったのだが、やはり大きいサイズは魅力的ではあるが、正直一寸間延びした感が有り、作品の「集中力」と云うか「濃密さ」に欠ける…これは、クライトンの「Flag」が44.5 x 67.9cm.で26億円、ウォーホルは274.3cm.四方で30億円…値段はウォーホルの方が勿論高いし、「サイズ」も重要な要素ではあるが、作品としての「濃さ」はやはり「Flag」の方が上だと云う事なのだろう。

印象派・近代絵画」に続き、今年の春のニューヨーク「現代美術」もクリスティーズの勝利に終わったが、欧州でのユーロ・ギリシャ不安に起因する株価下落の中での、両オークション・ハウスの2週に渡るメイン・セールの好結果は、美術品市場がここ数日のニューヨーク市場での「金」の相場上昇と共に、信頼感を増しつつ有る「証」だと感じるのは、手前味噌過ぎるだろうか。