新旧美術の一夜@白金アート・コンプレックス。

昨日午後、萩から東京に戻った。

出発前の空港待合室で、妻と電話で話した時に、「空港で誰かに会った?」と聞かれたが、自分は萩人でも無いので、「会う訳が無いじゃないか」と答えたのだが、恐ろしい事に、つい2日前に訪れた、山口県立萩美術館・浦上記念館名誉館長の浦上敏朗氏に機内でバッタリ…悪い事は出来ないものだ…してないが(笑)。
羽田から一度神保町の家に戻り、夕方からは「白金アート・コンプレックス」のオープニングへ。

ご存知の方も多いと思うが、このアート・スペースは、現代美術の画廊が3店と古美術ギャラリーが1店、そして現代美術家杉本博司氏の「新素材研究所」に因る、芸術複合型ビルである。そして昨晩は、ニューヨーク等に良く在るアート・コンプレックスの様に、ビル全館挙げての「オープニング・パーティー」なので有った。

先ずは一階の「KODAMA GALLERY」へ…と思ったら、帰り掛けの山下裕二先生とバッタリ。来月のオークションに、「明治美術」をフィーチャーした事等を立ち話。この秋、ニューヨークで開催される「白隱展」にはいらっしゃるそうなので、楽しみである。

さて「KODAMA GALLERY」だが、こちらは抽象作家の田中秀和展。フリーハンドで描いた線や形状を一度撮影し、それをカンバスに投影し、そこに色と厚みを付けて行くと云う。アイディアは面白いが、ドリッピング等の手法や構図等は、当然ポロックやトォンブリーを思い出させ、残念ながら余り新鮮さが感じられなかった。

2階は「NANZUKA UNDERGROUND」。久々に南塚氏に再会、カオス・ラウンジのその後や、村上隆論等を話す。

展覧会は「-scape」と題され、3人のアーティストに拠る作品を通して、抽象表現とランドスケープの解釈を紹介しているが、この中では、個人的に佃弘樹作品に関心を持った。アーティストとも少し話したが、一見版画の様に見えるが、実はペンとインクで描かれた彼の「建築画」は、例えばエッシャーの様な騙し絵的性格も持つが、しかし「在りそうで無い建築」に現在興味を持っている者としては、その不条理性が面白い。

次は3階「山本現代」で開催中の、できやよい「パイナップル」展へ。しかしやっと日本でも、グラスを手にビル中のギャラリーを、歩き回れる様になった…善い事である。綺麗な色彩の絵が並ぶこちらの展覧会では、作品の雰囲気に合った、「グラス片手」の若く可愛い女性達が目立ち、別世界…偶々筆者が居た時だけだったのかも知れないが(笑)。

そして大トリ、4階は日本古美術界東の横綱、「ロンドン・ギャラリー」。ギャラリーに足を踏み入れると、早速「姫」が登場、「爺」に取っては久々の御目通りで、感激致しました。田島氏もう登場し、一緒に作品を観る。桃山から江戸初の「麝香猫図屏風・六曲一双」や、素晴らしく出来の良い、藤原の大きな木彫如来仏頭、日・中・韓三国の龍(木彫・金銅)、表具も派手な「大聖武」等、相変わらずの名品揃い。

今回の「コンプレックス」、是非とも覗きに行って頂きたい。特に「ロンギャラ」では、古美術と現代美術空間が如何にマッチするかを、杉本博司氏の空間デザインと共に、目の当たりにする事が出来る。

そして、如何なる古美術も、誕生した時は現代美術で有った、と云う事も。