家族と友人、良きアートと旨い飯はじつは僕のハードコアである。

先週土曜日は、母の喜寿のお祝いランチを、母のお気に入りの「N」ホテルの「T」で。

還暦は「赤」、喜寿は「紫」と云う事で、母には紫色のレター・オープナーとマグニファイ・グラスのセットを贈ったのだが、五種前菜から始まり、蟹の卵入り鱶鰭スープ、鮑と茸の炒め、海老チリ、鶏とキャシューナッツ、黒酢酢豚、北京ダック、そしてバースデー・ケーキを含めた3種類のデザート迄食べた、母の相変わらず旺盛な食欲に一安心。

其の後はマヨンセと近美に向かい、「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展ーヤゲオ財団コレクションより」を観る。

このヤゲオ財団とは、台湾資本の電子部品メーカー「ヤゲオ・コーポレーション」のCEOで有るピエール・チェン氏とその一族、そして会社からの寄付に拠って設立された非営利財団で、そのコレクションは現在世界でもトップ10に入るクオリティを誇る一大コレクションだ。

ヤゲオ・コレクションは、現代美術と中国近現代美術がメインと為って居るが、特に西洋現代美術のラインナップは素晴らしく、またチェン氏は幾つかの名品を自宅等にも飾り、自身も生活の中できちんとアートを楽しんで居る処がこれまた素晴らしい。

出展作ではベーコンの3枚続作品「ルシアン・フロイドの肖像の習作」や、リヒターの「叔母マリアンネ」、そして杉本博司「最後の晩餐」が抜群に素晴らしい。が、その他にも例えばトゥオンブリやグルスキー等の大名品が揃って居て、もう目が廻る位の大名作展なのだが、僕には何と無く「オークション」の下見会を想起させた。

そして、商売柄展示作品の大体の価格を知って居るが故に、僕等は職業病的に思わず頭の中で「計算」して仕舞う訳だが、そうすると展示作品の総額たるや、最早アストロノミカリーな恐ろしい金額!

が、今回のこの展覧では国立美術館として恐らくは初めて、作品のその「価格」に拘って居る処が斬新だ…唯、今時「50億円」位では、この中の「1点」も買えないかも知れ無いが。

そして翌日曜、ミッドタウン「S」での「鯖味噌」ランチの後は、隣の21_21Design Sightで開催中の「イメージメーカー展」へ。

本展ディレクターのフランス人キュレーター、エレイヌ・ケルマシュターが選んだ「イメージ・メーカー」達とは、ジャン=ポール・グード、ロバート・ウィルソン、三宅純、舘鼻則孝デヴィッド・リンチ、そしてフォトグラファーハル。

そして最初に云って置くが、この展覧は実に素晴らしい!その中でも、僕に取ってはウィルソンと舘鼻の作品が飛び抜けて居て、これは一見の価値が有り過ぎる位有る…デザイン、音楽、写真と云った分野や既存概念を超えた、より幅広い視野から生まれるアートが観れる+レディ・ガガ気分で舘鼻の靴も試履出来る本展を、是非とも訪れて貰いたい。

その後、少し涼しくなった晩は、上野池の端に在る鯔背な一軒家の旅館内に在る薬膳中華「K」で、現代美術家K氏&A女史カップルと食事…然し此処の料理は、今迄食べた如何なる薬膳料理よりも繊細で、本当〜に旨かった!

K氏とA女史とは、アートのみならず政治・教育問題迄熱く語り、然し肝心の所は其処には居ないアーティストN氏に持って行かれると云う、もう最高に楽しくて美味しい一夜を過ごすと、翌朝にはマヨンセの故郷萩へと飛んだ。

飛行機が宇部空港に着いた直後に聞いた、仕事に関する留守電メッセージに愕然としながらも、萩の街と海と山の大自然、そしてマヨンセの家族は、何時もの様に暖かく僕を迎え入れて呉れて、「いそ萬」での「イカイカウニ丼」や、緑深い山奥に在るかなり「東南アジア」入っている「竹泉」での鮎料理(塩焼、フライ、鮎飯)等も頂き、気持ちもお腹も超リラックスする事が出来た。

僕等はこれから夕方東京に戻るのだが、実は今晩も僕に取って大切な友人達との飲み会が有る…家族と友人、良きアートと旨い飯は、実は僕のハードコアなので有る(笑)。