「巨大仏」に恋して。

昨晩のニューヨークは、1インチ(2.5cm.)もの大きさの雹が降り、マンハッタンの我が地獄宮殿でもゴツン、ゴツンとエアコン室外機に当る音に吃驚して、窓に駆け寄った程だった。

そんな中、最近購入した或るアートが宮殿に届けられ、夕食後「壁掛け」作業に精を出す。何と無くこの部屋も、益々「宮殿」めいて来たのだが(笑)、その作品の個性が強い事が原因で、部屋中の椅子やアート等、他の物も動かし始める事に…我が家の「模様替え」は、何時も夜なのである。あぁ疲れた(笑)。

そして今朝ネット新聞を見たら、作家島田雅彦氏が「芥川賞選考委員」に!これで芥川賞も面白くなるに違いない。島田先生、「メッタ切り」しちゃって下さい!こう云っては何ですが、受賞していない作家が選考するのも、正直大切な事だと思います…序でにルックス審査や、歌唱力審査もやったらどうでしょう(笑)…期待しております!

さて、今日の話題。話は昨日の昼に、ランチを買う序でに寄った、6番街に在る「紀伊国屋書店」の2階、アート本・写真集売場での事である。何気なく棚を見ていたら、大仏が立っている何ともキッチュなカバーの写真集を見つけたのだが、それは中野俊成著の「巨大仏!!」と云う写真集であった。何を隠そう、昨年雑誌BRUTUSの「ブツゾウ特集」で「牛久大仏」を知ってからと云う物、友人達と「アレだけは観に行かねば!」と興奮しながらも、未だ多忙を理由に「巨大仏参り」を実現させていない今日この頃、この写真集を観てしまったからには、来月日本滞在中の「責務」がまた一つ増えたと云う事か(笑)。

そこで早速購入したこの写真集だが、何しろ全国の巨大仏を「厳選」している所が嬉しい。鎌倉大仏のサイズ(13.35m)を「『1』鎌倉大仏」と云う単位とし(何か、山下・赤瀬川コンビの「日本美術応援団」の「『1』ベンツ」みたいだが)、そのサイズを中心としながら各巨大仏の正式名称・ロケーション・建立由縁等を記している、涙モノなのだ。そしてこの本に拠ると、奈良の大仏(14.98m)以上の大きさの巨大仏は全国に約80体有り、本著ではその中から16体の巨大仏と、「『鎌倉大仏』以上『ウルトラマン』(40m)以下」の「準巨大仏」(笑)12体が紹介されており、放送作家である著者が初めて巨大仏に興味を持ったと云う「大船観音」(25m:因みに筆者が生まれて初めて観た「巨大仏」もこれだった)も、此処に含まれている。

さて最初に登場するのは、日本一の大きさを誇る、茨城県所在のご存知「牛久大仏」(「9」鎌倉大仏:120m)。1992年に完成されたこの大仏は、一昨年まで世界最大だったらしいが、2008年に「129m」の「釈迦如来」がミャンマーに出現した為、2位に甘んじる事になったとの事。しかしこの「牛久大仏」のスゴさは変わらず、どれ位スゴイかを判り易く云うと、1.奈良の大仏(14.98m)が掌に乗る(!)、2.「自由の女神」の約4倍(!)の大きさである、3.人差し指の長さが7mも有る、位デカいので有る!因みにゴジラは公称50m、ガンダムは18mであるから、この本で取り上げられた40−120mの巨大仏が実際街に現れるとすると、映画の中の「それ位」と想像出来るだろう。

此処に挙げたい巨大仏は幾らでも有るのだが、後数体挙げるとするならば、福岡県所在の「篠栗南蔵院 釈迦涅槃像」(「3」鎌倉大仏:41m)と香川は小豆島に在る「小豆島大観音」(「5」鎌倉大仏:68m)、そして新潟県の「親鸞聖人大立像」(「3」鎌倉大仏:40m)だろう。

「釈迦涅槃像」は名前からも判る様に「寝そべっている」像で、ブロンズ製としては世界最大の涅槃像である。嘗て高野山に在った南蔵院を、明治期に地元民が招致し、1995年に建立されたのだが、完成の際には世界中から約1300人の僧侶が参列、クリントン大統領からも祝辞が届いたと云う(何故だ?:笑)。清水建設施工の「小豆島大観音」(別名;しあわせ観音)は、フランスの「アークARCプラス国際作品コンテスト」(誰か知ってますか?)で第一位を獲得したと云う、名実共に「世界一美しい観音」だそうだ。そして「親鸞聖人大立像」は、この写真集の中の巨大仏中、唯一の「人(僧侶像)」である。親鸞は承元の法難(1207)で越後に流罪に為っているので、その縁の地にどっしりと立ち聳えている事に為る。

本書を読んで判ったのは、大概の「巨大仏」はバブル期に建立され、時にはテーマ・パークの呼び物の一つとして、時には仏教系新興宗教の本尊として登場したと云う事だ。デカければ良いと云う物では無いが、デカさ故に人々が「仰ぎ見」、そして観る者・生活する者が「守られている」感じがする、と云うのも否定できないのでは無いか。また掲載写真が良い意味で「惚けて」いて素晴しいのだが、巨大仏が地元民の日常生活に如何に自然に・不自然に溶け込んでいるか、そしてそれを「余所者」が見るとどれだけ違和感が有るかを、さり気無く映し出している所が、本書の頁を捲る者を何処と無く「ホンワカ」気分にさせるのである。

こうなったからには、せめて「牛久」にはバスか車で「ツアー」でも組んで、弁当でも食べながら行きたいモノである…同行希望者は、コメント欄まで(笑)。