タイム・スリップ的、或いはマゾ的「千本ノック」。

暖いのか寒いのか、何とも不可解な日本の天気であるが、ニューヨークの最低気温は華氏22度、もういきなり氷点下らしい。日本嫌いのゲル妻も、この気温に関してだけは、来週の来日が待ち遠しいに違いない(と信じたい:笑)。

さて、関西出張最終日の一昨日は、京都での連夜の「午前様」に悲鳴を上げる体を叩き起こし、朝イチから大阪へと向かう。

そして、無事大阪の顧客との仕事を終え、何とか作品数点をゲット…重い荷物と体とを引き摺って、帰京の為、I君と3時頃の新幹線に飛び乗った。

新幹線のシートに身を沈めて、車内販売としては破格の「美し過ぎる販売員」からコーヒーを買い、「ふぅ、やっと出張も終わった…」とホッと一息したのも束の間、東京の仲の良い顧客からI君に電話が…。そしてこの電話が、嬉しくも恐るべき事態を招いたのであった。

何故なら、その顧客からの呼び出しに拠って、結局我々は東京迄の筈だった新幹線を品川で途中下車し、再び出張荷物を引き摺って、この顧客との食事の為に渋谷へと直行する事に為ったからである…このスケジュール、「地獄の特訓」、もとい、「千本ノック」である(涙)。

渋谷に着き、嬉しいやら逃亡したいやらの気持ちを抑え、顧客と再会を祝すと、先ずは「今時こんな店が在るのか!」と云う勢いの、何とも「昭和」な居酒屋で、旨い刺身や、狭い店内が煙で充満してしまう焼鳥、手打ち蕎麦などを食す。

そしてお腹も膨れた頃、此れで食事も終わりと思いきや、顧客の「さぁ行くぞ!」の声で、NHKの裏の、これまた「超・昭和」なホテルの2階の一室に在る、台湾出身のマスターが経営しているにも関わらず、何故か「渋谷の平壌」と呼ばれているらしい(正式店名は、忘れてしまった:笑)、カラオケ・バーに赴いた。

通称「平壌」は、天井にはミラー・ボール、壁にはアメリカ版「プレイボーイ」っぽい切り抜きが貼られ、トイレはと云うと、一回外に出て廊下の角を曲がると、右手に暖簾が掛かっており、そこが男子用だが、ドアも無い(笑)。

しかし、この通称「平壌」で何よりも特筆すべきは、実は階下に在る中華料理店のスタッフも食べに来ると云う、マスター手製の「台湾料理」なのであった!

いや驚いたの何のって、豚足から始まり、干し豆腐の蕎麦仕立て、牛肉とマコモダケの炒め、トウミョウ等、全て旨過ぎる…この孫一、台北・香港から帰って来たばかりなのだから、推して知るべし!そして食事中、顧客がアニマルズの「朝日のあたる家」を歌い出すと、すかさずマスターがギターで参加…。

こうして、剰りにディープな渋谷の夜は、タイム・スリップしながら更けて行ったのである。

と、話は此処で終わりそうだが、まだ終わらない(笑)。暫く通称「平壌」で歌った後、気の良い顧客は今度は何と銀座へと繰り出し、再びのカラオケ三昧…久々に「サザン」や「ミスチル」等を熱唱し、夜中1時半過ぎの帰宅となった。

「地獄の特訓」の様な3日3晩で疲労も極致であったが、しかし此処迄来ると、このオニの「千本ノック」にも、何処と無く「マゾ的」快感さえ伴い、これも仲が良く、尊敬出来る顧客とだからこそである…「ノッカー」の皆様、有り難うごさいました!

そして金曜日の今日、再び関西へと向かう新幹線の中で、このダイアリーをアップしていると云う事実に、愕然とする自分が居るのであった(涙)。