音羽屋!

重要顧客に会ってのミーティングや食事、休日出張等をこなしながらも、そんな合間を縫って「課外活動」も活発化。

金曜の夜は、三宿に在る現代美術コレクターY氏のギャラリー「Capsule」で今週末から開催される、アーティスト加藤泉氏の新作展覧会のオープニング・ディナーに出席。

この「Capsule」は週末だけオープンして居るギャラリーで、隣接するカフェ「Sunday」(此方は第二水曜が休み)と共に、オシャレなスポット(昔の「オン・サンデーズ」みたいだ!)。

今回の加藤氏のショウは「『ソフト・ビニール』彫刻」をフィーチャーした物で、「ソフビ」と云えば、加藤氏が毛髪花学研究所&リンデンとコラボした、可愛くて中々使えない「シャンプー&コンディショナー」を思い出すが、今回の作品群は特製のシンプルで美しい木製台に載せられた、非常に魅力的な「首」達…ウーム、欲しい!

ディナーは「東京の女王」Aさん(ペロタンに拠って、「代官山」から「東京」に格上げされたそうな…「日本」いや「アジアの女王」に為る日も遠くないに違いない!)や、達っつぁん(アーティスト西野達氏)、NYの友人コウスケ君一家を始め、有名コレクターやキュレーター、アーティスト等の総勢40名程で大盛り上がりと為った。

そして翌日は重要顧客とランチ後、「目白コレクション」を観に。ブースを出して居る付き合いの長い骨董商のK君に会うと、前の晩ご一緒だったコレクターY氏も、早速この骨董フェアに居らしたとの事…良きコレクターは、流石フットワークが軽いので有る。

その後、地元神保町の美術古本屋で本を何冊か買うと、夜は神田神保町に在る筆者の弟の店「いるさ」で、久々に達っつぁんとの飲み。

お互いに海外に長く行ってしまう為、「この日しか無い…」と云うタイミングでのこの飲み会には、ギャラリストUさんやYさん、建築家I氏や編集者S氏とその娘さん、K君一家等も参入し、相変わらずの大盛り上がりと為りました!

さて、此処からが今日の本題。実に素晴らしい、2人の役者の演技を観た。

その舞台とは「団菊祭五月大歌舞伎 十二世市川團十郎一年祭」。そしてその「2人」とは、昼の部3演目中の「勧進帳」で富樫を演じた菊之助と、「魚屋宗五郎」での宗五郎役菊五郎の「音羽屋」親子二代…その彼らの演技は、もう最大限の賛辞を送りたい名演で有ったのだ!

海老蔵が出演していると云う事で、女性で超満員の歌舞伎座は、先ずは左團次のコミカルな十八番「毛抜」でスタート。前々から大好きな左團次には、何とも云えぬ色気が有って、若衆に振られた直後に腰元に手を出すと云う、江戸期の大らかな「バイ・セクシャル」シーンも含めて、味の有る演技。

そして「勧進帳」…父團十郎の一年祭と云う事で、海老蔵も気合が入って居た様に見受けられたが、それよりも何よりも、菊之助の凛とした、そして気高くどっしりとした富樫にこそ、近来稀な深い感銘を受けたのだった!

菊之助の舞台は、昨年夏の「四谷怪談」以来だが(拙ダイアリー:「『四谷怪談』と『七夕茶』」参照)、此処の所菊之助の歌舞伎芸の精進は素晴らしく、立役も女形も色気と味が有る上に、其の上役作りの上で研究熱心。旧「三之助」の中では、いや若手の役者連の中でも、頭一つ二つは完全に出ている様に思う。

今回の「富樫」でも感じたのだが、菊之助の体現するリアリズムは古典歌舞伎の上に確実に則った物なので、表面的な現代リアリズムを強調する安易な表現等では無い。いやぁ、もう今回は可也り感動…恐れ入りやの鬼子母神だ。

そして「子も子なら、親も親」、いや「この親にして、この子有り」…親父菊五郎と云う役者も、これまた本当〜に素晴らしい。

謂れ無き事で娘を手打ちにされた宗五郎が、少しずつ酔い始めて、仕舞いにはベロベロに為って荒れる所等、「この人、本当は今飲んでるんちゃうか?」とマジに思わせる程での出来で、其の後の大団円迄、本当に味わい深い演技の連続。

音羽屋二代の「芸」は、歌舞伎の王道を行く…そしてこの親子2人の芸は、歌舞伎と云う舞台芸術に於ける、最高の芸と至高の悦びを教えてくれるのだ。

「待ってました!音羽屋!」

と、「大向こう」の気持ちになりつつ、今筆者は羽田空港のラウンジ…これから再び香港へと飛ぶ。