"Hello Japan !!!" 或いは、"Bye Bye Kitty !!!" @Japan Society.

日本がこんな時に、レセプションなんて…。

と思うが、これも仕事の内。昨日は妻とジャパン・ソサエティでの日本現代美術の展覧会、「Bye Bye Kitty !!! Between Heaven and Hell in Contemporary Japanese Art」のオープンニング・レセプションへと、足を運んだ。

この展覧会は、前森美術館館長のディヴィッド・エリオット氏をゲスト・キュレーターに迎えて開催される物で、出展作家は、会田誠、池田学、樫木知子、川内倫子荒神明香、町田久美、奈良美智名和晃平小谷元彦さわひらき、塩田千春、塩保朋子、天明屋尚山口晃やなぎみわ、そして米田知子の16名である。

ジャパン・ソサエティに着いてみると大変な人だかりで、会場ではエリオット氏を始め、三潴末雄氏等日本からの出席者やアーティスト達、勿論ニューヨークの何時ものメンバーも顔を揃えていて盛り上がっており、こうなるとやはり日本の大災害は「対岸の火事」と云った感じもしなくは無いが、しかし話をし始めると当然震災と原発の深刻な状況に関する話題になる…誠に複雑な気分であった。またこの展覧会のタイトルも、期せずして「Between Heaven and Hell」と云う事で、嫌な云い方だが時事感が有る事も否めない。

出展ラインナップを観ると、当然筆者に取っては見覚えの有る作品も幾つか有るが、しかし、初めて観るニューヨークの人達には、かなりインパクトが有るだろうと思う程、見応えの有る代表作的な作品が展示されているのが素晴しい。

筆者最近のイチオシの作家、池田学の作品は大作3点が出ており、「方舟」「興亡史」「存在」共、どの作品も本当に素晴しい!最近の大傑作「予兆」は、津波を連想させるのではと云う理由から出展されていないが、この作家はこれで、アメリカでもメジャーに為るのでは無いか。そして会田と天明屋、山口の「ミヅマ三羽烏」作品からも中々の大作・名作が出ている。

特に会田の「灰色の山」は、「絵バカ」展(拙ダイアリー:「『絵バカ』→『ルーシー』→『奏舞』、そして…?」参照)で観た時も「未だ制作中」だったのだが、今回作品がニューヨークに着いてからも作家が制作を続けていると云う作品で、昨日久々に観たらば、恰も氏の代表作「紐育空爆之図」が「9.11」を予知したかの様に、今回のこの「死体の山」も、再び今回の震災を予知した様に思われて、思わず鳥肌が立ってしまったのだった。

そして名作「英姿颯爽・容貌魁偉・鎧袖一触」他2点が展示されている旧知の天明屋氏は、何と21歳(!)になる娘さんと登場、再会を祝した。また三潴氏の紹介で池田氏を紹介して頂いたのだが、池田氏はあんなに小柄で、良くもあれだけの大作を、しかもあんなに細密に描ける物だとホトホト感心した事を記しておこう。

そんなこんなで、多くの人達と挨拶をしながら、大好きな小谷作品等を観て歩いていて、気付いたら巨大なレースの如き作品が眼の前に吊るされていた。思わず「スゲぇ…これ紙か?」と声を挙げてしまったら、近くに立っていた若い女性から「そうなんです」と云う声が聞こえ、その女性こそ作家の塩保さんなので有った。聞くとこの作品「Breathing Wall」は、制作に5ヶ月掛かったそうで、光が通った向こう側と床に映し出される文様も美しい…執拗且つ非常に美しい作品である。

既に決まっていたとは云え、しつこい様だが「日本がこんな時期に…」と、アーティストも関係者も何処かしら感じていたに違い無いだろうが、しかし、これから復興を期する日本の事を考えると、今この時期に日本の現代美術がニューヨークで紹介されるのは、決して悪くないと思う。

特に天明屋や山口作品の様に、明らかに日本の古典から影響を受けた作品や、会田、池田や塩保作品の様な「日本人しか描けないだろう、これは」と云った繊細で細密な作品等は、この展覧会を観るアメリカ人に取って、「新しい日本」或いは「再生日本」と、その現代美術の「一方向」を紹介すると云う目的に、充分叶うクオリティだと思う。

少し気が早いかも知れないが、「Hello, Revived Japan !」な、見応え充分な展覧会で有った。

そして下見会のセッティングも無事終了し、愈々明日から下見会…日本の為にも頑張らねば!