新記録を達成した、クリスティーズの「Asian Art Week」。

長かった「Asian Art Week」が終了した。

「Asian Art Week」と呼ぶには、実際余りに長く、疲れるので、これからはこの名称を「Asian Art Weeks」か、「Asian Art Month」に変えるべきだとの声も上がっている(笑)。

さて今週火曜から金曜迄の間に、都合7回のオークションが開催されたクリスティーズのアジア美術部門の結果だが、4日間で総額1億1712万505ドル(約94億8700万円)を売り上げ、これは今までの記録よりもおよそ4000万ドルも多く、「Asian Art Week」の売り上げ新記録を樹立した。この数字は前年同期比で95%アップ、昨年9月のAsian Week比で66%のアップと云う、恐るべき売上高である。

内訳を簡単に記すと、東南アジア部門が「The James and Marilynn Alsdorf Collection」(448万6438ドル)、「Southeast Asian Art」(1121万1938ドル)、「South Asian Modern+Contemporary Art」(983万2600ドル)の3つのセールで、総額2553万976ドル(約20億6800万円)の売り上げ、日本・韓国美術は1回のオークションで1484万350ドル(約12億円)、中国美術部門が「Magnificent Qing Monochromes Porcelains and Earlier Works of Art from the Gordon Collection」(2301万2225ドル)、「Property from the Arthur M. Sackler Collections」(65万6125ドル)と「Fine Chinese Ceramics and Works of Art」(5308万5375ドル)の3セールで、総額7616万3225ドル(約61億7000万円)となっている。

また各分野のトップ・ロットは、東南アジア美術がガンダーラ(3-4世紀)の「石造釈迦苦行坐像」の445万500ドル(約3億6050万円)、日本・韓国美術では伝狩野内膳「南蛮屏風六曲一双」の478万6500ドル(約3億8700万円)、そして中国美術では「乾隆銘青磁龍文壺」で792万2500ドル(約6億4110万円)だったが、これだけ売れた中で、日本美術が単品で「高額2位」な事に、何処かしら鼻が高い。

またクリスティーズは、サザビーズに対して58%のマーケット・シェアを取り、「Leading Global Asian Art Market Company」としての地位を確保した。因みにサザビーズは、日本・韓国美術部門を廃止しオークションは行っておらず、今回のボナムスも日本美術の売り上げは非常に小さく、略100万ドルで有った。

さて、この「Asian Art Week」の成功は、勿論中国美術の伸びに大きな要因が有る訳だが、此処で今週大きな話題と為っている、中国美術と関係する或る話を一つ記しておこう。

それは、今週火曜日に開催されたサザビーズの中国美術セールに出品された、或る壺の事である。その壺には一応「乾隆銘」は有るが、20世紀のコピーと思われていた作品で、エスティメイトは800−1200ドル(約6万5000円ー9万7000円)であった。しかし、蓋を開けてみると、売却価格は何と1800万2500ドル(約14億5800万円)…恐るべき結果である!

実はこの壺は、一度クリスティーズに持ち込まれた時にも「20世紀のコピー」とされた作品で、サザビーズも同様に「コピー作品」としてのエスティメイトを付けた訳だが、2人のビッダーに拠り、此処まで上がってしまったらしい。しかし、後でこの壺の展示風景を観た人に話を聞くと、このたった「800ドル」の壺がこれ一点のみ、ガラス・ケースに丁寧に展示されスポットも浴びていたと云うから、或る意味確信犯的とも思えるが…。

問題は中国美術、特に清朝の陶磁器には、「難しい」作品が多いと云う事で、こう云った難しい作品が売却された後で、「例えば」贋物だった事が判ったりすると、当然バイヤーは金を払わない。そうなると、当然売主にも払えなくなり、問題が起ってくる。この作品の場合はそんな事は無いだろうが、そう云った頭を悩ませる問題があるのも事実なのだ。

何はともあれ、今回は日本美術も面目を果たし、大成功だったクリスティーズの「Asian Art Week」。

暫く休むと、再び9月のオークションへ向けての「出品作探し」が始まる…「発見」や「勝利」の快感も束の間、この仕事はエンドレスなのである(嘆)。