やはり、「イイモノ」は高い!:現代美術イヴニング・セール速報。

震災から丁度2ヵ月経った昨日の夜は、友人の「New York Art Beat」のファウンダーズ、藤高晃右&アネタ夫妻宅での「震災を考える」懇親パーティーに妻と。

出席者はと云うと、日本からのゲストは現代美術キュレーターの住友文彦氏とアート・ファンド会社のKさん、ニューヨーク組ではアーティストの照屋勇賢氏と美術史家の富井玲子さん、「Art Pacific Asia」のA氏とそのお友達、逆流夫妻と藤高夫妻の10名である。

乾杯の後、住友氏が用意した被災地の写真をプロジェクターで観ながら、お話を伺う。一般的な被災状況や原発問題、被災した美術館や個人所有のアートの状況、そして「これから」の話等を、美味しいピザを頂きながらカジュアルに皆でディスカッションする…非常に為になる、良い会で有った。

しかしその合間合間にも、同時進行中のクリスティーズの「現代美術イヴニング・セール」の結果を皆で見たりして、片や悲惨な被災現場や人々、片や後で述べる30億円のウォーホルが売れたと云って喜ぶアンビバレントな状況で有ったが、しかし、これ等も「世界」の或る側面で有る事を認めねばならない…特に筆者は。

その「現代美術イヴニング・セール」の結果である。先ずは火曜費夜に開催された、サザビーズ

こちらは59点中48点売れ(81.3%)、総売り上げ高は1億2810万4500ドル(約102億4800万円)で有った。トップ・ロットはウォーホルの「Sixteen Jackies」、2024万2500ドル(約16億23400万円)でハンマー・プライスはエスティメイト下値に届かなかった。1000万ドル以上で売れた作品はもう一点有って、クーンズの「Pink Panther」が1688万2500ドル(約13億5000万円)だったが、これも下値が2000万ドルからだった事を考えると、かなり安く売らざるを得なかった事が判る。少々厳しいセールとなった。

そして、前の晩のサザビーズが少々低調だった事も有って、「どう為るかな?」と云う意見も有った昨晩のクリスティーズ・イヴニング…しかし、クリスティーズはそんな心配を他所に、アート界の「定説」を証明した!…それはどう云う事かと云うと、「良いモノは売れる」と云う事である。

65点出品中、7つのワールド・オークション・レコードを含む62点が売れ(95%)、ヴァリューでは99%の成約率、そして昨晩の総売り上げは、何と3億168万3630ドル(約244億3600万円)で有ったのだ!

トップ・ロットは、ウォーホルの「超素晴らしい」4連のマルティプル・ポートレイト「Self-Portrait, 1963-1964」で、2千万-3千万ドルのエスティメイトに対して3844万2500ドル(約31億1300万円)。これはウォーホルの自画像の新記録だが、実はこのロットが売却されるまで何と15分以上が掛かり、これも恐らくは現代美術セールでの、「1ロットに掛かった最長時間新記録」で有ろう(笑)。

1000万ドル以上で売れた作品は、サザビーズの2点に対しクリスティーズは5点、このウォーホルの他に、ロスコーの「Untitled No.17」が1800-22万ドルのエスティメイトに対して3368万2500ドル(約27億2800万円)、ウォーホルのもう1点の晩年作の自画像「Self-Portrait」(1986)が、2752万2500ドル(約22億2900万円)、これも素晴らしいベーコンの「Three Studies for Self-Portrait」が2528万2500ドル(約20億4700万円)、そしてトゥオンブリーの「Untitled」が、これはアーティスト・レコードの1520万2500ドル(約12億3000万円)で有った。

その他、ディーベンコーン、シンディ・シャーマン(これは写真作品でのレコードでも有る)、キーファー等にレコード・プライスが出て、以前此処に記した、パーク・アヴェニューに鎮座ましましているアーズ・フィッシャーの巨大「熊さん」(→http://www.christies.com/LotFinder/lot_details.aspx?from=salesummary&intObjectID=5437849&sid=0489001e-5575-4449-b381-a16c2abab5f8)は、680万2500ドル(約5億5千万円:!)で売却…これも「当然」アーティスト・レコードで有るが、この作品は運送設置費が幾ら掛かっているかを知っているだけに、高いのか安いのか良く判らん(笑)。

そして個人的に大好きだった、1点モノの'63-64年の「赤い」ウォーホルの自画像は、680万2500ドル(約5億5100万円)で売却…あぁ、欲しかった。「人」の「夢」と書いて「儚い」とは、この事である(嘆)。宝くじを買うしか、道は無いのだろうか…「信じる」「者」と書いて「儲かる」筈なのに…(笑)。

何れにしても云える事は、相変わらずウォーホルが非常に強い事で、ウォーホル作品はこのセールだけで9098万8000ドル(約73億7000万円)を売り上げ、一人で総売り上げの30%を占めた。そしてクオリティの高い作品は、何時でも需要と人気が有り、対エスティメイトに対しても高く売れると云う事である。

今晩のフィリップスが残っては居るが、クオリティの高い作品を集めたクリスティーズが大勝利を収めた、「現代美術・イヴニング」で有った。