イッちゃってる「王道」:George Condo@New Museum。

初夏を思わせる「イースター」の日曜日、早く行かなくては!と思い続けていた、ニュー・ミュージアムでのコンドの展覧会「Mental States」にやっと行く事が出来た。この展覧会は、この後ロッテルダム、ロンドン、フランクフルトに巡回すると云うから、非常に重要な展覧会になるのだろう。

ニュー・ミュージアムに行くのは久し振りだったが、こんなイースターのお天気の日は客も余り居らず、ジックリと作品を観る事が出来て宜しい。この美術館は「SANAA」の建築物として著名だが、今日行っても各フロアのコンクリートの床のあちこちに亀裂が走り、ちょっと「大丈夫?」的な所も有る…因みにニューヨークの美術館で、個人的に美術館建築として一番好きなのは「ホイットニー」かも知れない。「グッゲンハイム」も好きなのだが、床が螺旋状で傾いている為、作品を観る時に少し落ち着かない所が有るのが玉に瑕。

さて、ジョージ・コンドである。コンドの事を良くご存じない方の為に簡単に記せば、彼は1957年ニュー・ハンプシャ生まれの画家・彫刻家で、現在はニューヨークで活動中。昨年カニエ・ウエストのアルバム・ジャケットにも作品が使われ、話題となった。

またこの作家は、現代美術のオークションでは既にかなりポピュラーな存在で、彼の作品は毎回数点必ずエントリーされているのだが、実はその度に「欲しいッ!」と思う程気に入っている作家なので、個人的にも強い思い入れが有る。しかし「売り物」で無い作品を、これだけ沢山一時に観るのは、実は筆者に取ってこれも初めてで有ったのだ。

そして展覧会を観ると、イヤハヤ、何しろこの作家は「やはり」スゴイ…コンドは要は「イッちゃてる」のだが、しかし唯「イッちゃってる」だけでは無く、何と云うか「絵画の王道」「現代美術の王道」迄をも「行っちゃってる」のである。褒め過ぎかも知れんが、もしかしたらベーコン(フランシス)級の作家かも知れない(笑)。

例えばそれは、コンドの初期からの作品の変遷や「本歌取り」的作品を観れば明らかだが、その筆力とデッサン力の素晴らしさ、具象と抽象の際感、100年200年後に美術館に残る「今出来の現代美術作品」が持つべき「新しい普遍性」、コミック的要素などの「今風」を持ちながらも、どこか古典を思わせる「自作への『歴史』の投入感」を兼ね備えているからである。

展示作品中の「本歌取り」作品の数々、例えばマネの「草上の昼食」を思わせる大作「Figures in a Garden」(2010)、レンブラントへやピカソへのオマージュである「Memories of Rembrandt」(1994)や「Spanish Head Composition」(1988)等も素晴らしいが、それにも況してコンドの真の実力は、筆者が個人的に大好きな「Jesus」(2002)や「Internal Constellation」(2001)、「Screaming Priest」(2004)、大名品「Spider Woman」(2002)や「Couple on Blue Striped Chair」(2005)に観ることが出来て、そしてそれらは、もはや歴史的絵画「王道」作品の持つ「普遍性」を、観る者に十二分に感じさせるのだ。

単なる「剽窃」に留まら無いオマージュや、観る者にグングン迫ってくる筆と色の力、そして狂気寸前の正気…いやぁ、ちょっと今日は個人的思い入れが強過ぎるかも知れんが、ジョージ・コンドのその物凄い才能に、マジに震えてしまったのだ!

嘘だと思ったら、5月8日迄にニュー・ミュージアムでご確認を。