昨日のニューヨークの街は、夕方から昼過ぎ迄の好天とは打って変わって、さめざめとした雨に身を委ねた。
イースター・サンデーで比較的静かな雨の夜、チェロが聴きたくなって、原作も映画も好みで無かったが音楽だけは中々良いと思って買った「ノルウェイの森」のCDや、友人のN響チェリスト藤村俊介君のCDを聴きながら、何故か今日のダイアリー・タイトルを憶い出したので、その事を。
さて、僕は「アニメ」が苦手である。理由は沢山有るが、子供の時に観たものは別にしても思春期を迎えた頃からは、「オトナ」として「アニメを観るのはダサい」と思っていたからで、まぁそう云った「お年頃」でも有った訳だが、今の様にアニメの「芸術性」等を語る人も殆ど居らず、実際問題実写の映画やテレビや小説に素晴らしい作品が多々有った事が、最大の理由だろう。
しかし世の中、何事にも「例外」は有って、この「雨の午後はヤバイゼ」も僕がオトナに為ってからも愛して止まない、或るアニメ・シリーズの「第6話」のタイトルなのだが、これで「ピン」と来た人とは親友になれそうな気がする(笑)。そして親友に為れそうも無い人の為に、もう一つだけヒントを出すならば、そのヒントは「お子様ランチ」…知らない人にはチンプンカンプンで、余計訳が判らなくなったに違いない(笑)。
答えはモンキー・パンチ原作「ルパン三世」の、もう何十回観たか判らない程大好きな「TV第一シリーズ」。
此処に強く云って置きたいのだが、僕の云う「愛して止まないルパン三世」とは、「TV第二・第三シリーズ」でも「カリオストロの城」でも無い、「TV第一シリーズ」の事であるので、「絶対に」他と一緒にされては困る。それは、何しろこの第一シリーズが、その後のシリーズや映画化作品等からは忽然と姿を消してしまう所の、各回の物語・音楽(チャーリー・コーセーの「ソノシート」を持っていた!)・画風・演出・毎回のタイトル迄、全てが何ともセクシー、陰鬱且つアンニュイな雰囲気に溢れる、物凄くアーティスティックなシリーズだからなのだ。
このシリーズでは、ルパン、次元大介に銭形警部、未だ敵で有った石川五ヱ門や、敵に為ったり味方に為ったりの峰不二子…「これら一癖もふた癖も有る連中に囲まれて、今日はどんな事件を巻き起こしてやろうかな?」と、ルパンが番組のオープニングで語る様に、彼らは「オトナの事件」を毎回起こして行く訳だが、この23話に渡る第一シリーズに登場する「敵役・脇役」も、余りにも「超個性派」揃いで、忘れられないキャラクターのオン・パレードなのである。
例えば上に「ヒント」として出したが、この「雨の午後はヤバイゼ」で、死んだマフィアのボス「カマイタチ」の執事(「ニセ次元」且つ、不二子の手下でも有る)である「(通称)お子様ランチ」、「タイムマシンに気をつけろ」に登場するコミカルなマッド・サイエンティストの「魔毛狂介」や、「殺し屋はブルースを歌う」の超カッコ良いニヒルな殺し屋「プーン」、記念すべき第一話「ルパンは燃えているか」で、不二子を指の形の「コチョコチョ棒」で「くすぐり責め」する「ミスターX」(彼はその後何度か登場する、大富豪の「ミスター・ゴールド」の雛形であろう)、「魔術師と呼ばれた男」の「バイカル」や「ニセ札作りを狙え」の「イワノフ」等、もう枚挙に暇が無い。
その23話の中でも筆者が取分け好きなのが、この「雨の午後はヤバイゼ」の回で、死んだボス「カマイタチ」の死体に隠されたダイヤモンド「キリマンジェロの星」を、死体が焼かれる前に奪取すると云う計画の為、「マンダラの辰」や「岩鉄」を雇っての作戦が成功し、ルパンは見事ダイヤを手に入れるが、最後は結局不二子ちゃんに横取りされると云うスリリングな内容、しかも番組の最後に、不二子ちゃんとダイヤモンドとのセクシーな「入浴シーン」迄有り、一秒足りとも観る者(子供も!)を飽きさせない作りが素晴らしい!…しかし、こんな「オトナ」な内容のアニメを、良く土曜の夜7時半等に放送していた物だと思う…昔は良かった(笑)。
最後に為ったが、美術品売買関係者としては、このシリーズ第18話の「美人コンテストをマークせよ」に触れずに、今日のダイアリーは終われない。
この回では、「美人コンテスト」と銘打っては居るが、その裏で「サイレント・オークション形式」で取引される「世界の名画」(各コンテスタントの資料を捲ると、そこに絵画資料が添付されている)をルパンが盗むと云う、今なら如何にも有りそうだが、しかし当時(1972年!)としては誠に斬新なアイディアの非常に興味深い内容となっていて、物語の最後には、見事「モナリザ」、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」やゴッホの名品等の名画を盗み出したルパンが、これらの名画を「帆」にしてヨットで逃げると云う「オチ」迄付いている。
お勧め度200%の「ルパン三世・TV第一シリーズ」、若い人にも是非ご覧頂きたい…お別れは、歌詞も曲も素晴らしい「エンディング・テーマ」で。
足元に絡み付く 赤い波を蹴って
マシンが叫ぶ 狂った朝の光にも似た
ワルサーP38
この手の中に 抱かれた物は 全て消え行く 運命なのさ ルパン三世
憎しみの眼差しを 背中に受けて
今日を捨てる 女の胸に残してきた
燃える血のバラ
この手の中に 抱かれた物は 全て消え行く 運命なのさ ルパン三世
海の底から聞こえる様な 殺しの歌を
マシンが歌う 震える様な微かな吐息
ワルサーP38
この手の中に 抱かれた物は 全て消え行く 運命なのさ ルパン三世