2つのレセプションと、「逆流夫婦」の誕生。

最近、今週の印象派セールの助っ人に来た、ロンドンの同僚S女史持参の「Walkersショート・ブレッド」に夢中。

何故ならこれは唯のショート・ブレッドでは無く、「ロイヤル・ウエディング特製記念缶箱」に入って居るからである。表にはウィリアムとキャサリンが腕を組んでいる写真と日付が記され、2人の微笑み、と云うかケイトの美しい微笑が、唯でさえ旨いショートブレッドの味を増加させるのである。

「そんなモノばかり、食べているからだ!」と叱られそうだが、昨日の朝は、最近胃が痛いと云っていた妻の胃カメラ検査の「付き添い」。

此方では、こう云った麻酔を使用する検査の時には、必ず帰りの「付き添い」が必要なので、朝8時半からの検査の為に眠い眼を擦りながら病院に向かったのだが、結果は幸い大事無く、軽い「逆流性食道炎」が有っただけで、要は夫婦揃って仲良く「食べ過ぎ、飲み過ぎ」と云う事なので有った。

その後出勤して、昼間は印象派・近代絵画セールの「テレフォン・ビッド」に勤しみ、夜は2つのレセプションに出席。

先ずはファッション・デザイナー、テス・ギバーソン(拙ダイアリー「ボクの『ファッション・ウィーク』」参照)がクロスビー・ストリートに開いた、「路面店」のオープニング・レセプションへと向かったのだが、待ち合わせていたファッション・ライターの友人、A姫との約束迄時間が有ったので、小腹の減った妻と近くのカフェで「ベルジアン・フライ」を食す事に。

神保町の行き付けのベルギー・ビール・バー「B」で知ったのだが、この「ベルジアン・フライ」とは所謂「フレンチ・フライ」の原型で、2種類のディッピング・ソースに付けて頂くスナックである。が、胃カメラで「逆流性食道炎」が判った当日に…(笑)。

胃酸を十分に逆流させると、やっとテスの店へと向かう。新しい店舗には、テスのミニマルで美しい服や装飾品と共に、A姫の名著「NYのおみやげ」やアラーキーの写真集等が並び、多くの人で賑わっていた。暫くグラスを傾けているとA姫がP王子と共に登場、皆でテスにお祝いを述べる。

そうこうしている内に時間が迫り、クロスビー・ストリートから4人でテクテク歩いて、今度はバワリー・ストリートのNEW MUSEUMへ…友人の建築家重松象平氏がディレクターを勤める「OMA」(Office for Metropolitan Architecure)の展覧会、「Cronocaos」のオープニング・レセプションである。

到着すると、展覧会とレセプションはNEW MUSEUMで行われていると思いきや、開催されているのは何と隣の、元「業務用冷蔵庫」の店舗では無いか!聞くとNEW MUSEUMがこのお隣さんも最近買ったらしく、「建築の保存と改修」と云うこの展覧会の趣旨に沿い、店内も半分だけ改修し残りは以前の店の内装の侭の、何とも「味」の有る展示となっている。

OMAが手がけた、古い建築物の改修前と後、アート作品からインスパイアされた建築的インスタレーション等の興味深い写真やグラフ等が、壁に貼られたり天井から吊るされ、その間を観覧者はグラスを片手に縫って観て歩く。暫くして、漸く会場に忙しそうな重松氏を発見…久しぶりに会う彼は、日頃の気の抜けたモードとは少々異なり、「OMA」のディレクターの顔をしていた(スマン…でも「蔡國強」に推薦したんだから、許してくれ:笑)。

重松氏の判り易い説明を聞きながら展示を見ると、「成る程」と思う事も多く勉強になる。すると、非常に背の高い白人男性がフラッと我々の前に現れたのだが、その人こそ建築思想家で有り「OMA」のボス、レム・コールハースその人で、重松氏に紹介され挨拶をする。初めて会うコールハースは、スラッとした体型に優しそうな眼差し、眼から鼻に抜ける様な人物であった。

その後は、以前面識の有るジェフリー・イナバ氏や「アトリエ・ワン」主宰の塚本由晴氏、蔡國強の元で働く元同僚や、良く行くチェルシーの「B」で友達になった米女性建築家等とばったり会い歓談、楽しい時間を過ごした。

パーティーも終わりに近づき、どうしようかと相談した結果、塚本氏、A姫&P王子、地獄夫妻の5人で、NEW Museumの三軒隣のお粥中華の店「C」でディナーをする事に…再び、「『逆流性食道炎』が今朝判ったばかり」だと云うのに、今度は中華である(笑)。

A姫推奨のこの店、これでもかの内装が凄く、店内に入った直ぐの床を見ると「此処はディスコか?」と思わずフィーバーしたくなる(笑)様な電飾が埋め込んであったりする…A姫に拠ると、地下にはカラオケ・ルームが有るらしく、それも誠に頷けるので有った。

食事は、2種類のお粥や「海鮮竹入ご飯」、「エビマヨ」や「中華ハンバーグ」等、話題は塚本氏がデザイン・コンセプトを担当される、非常に興味深いグッゲンハイム美術館の「移動シンクタンク」(今年8月からの3ヶ月間はニューヨークで開催、その後ヨーロッパに移動する)や日本復興等で盛り上がり、夜10時過ぎにお開き。

皆と別れてタクシーを拾い、家路を急ぐ…筈だったのだが、今日本からNYに撮影に来ている、友人のクリエイティヴ・ディレクターA氏からの連絡が有るかも知れないとの「言い訳」を作りつつ、チェルシーの「B」に急遽立ち寄る事に。

「B」では、常連の元ルーベン・ミュージアムのJがカウンターで待ち受けており、一緒に飲む…つもりが、夫婦で「今日のパスタ」を取りシェア、デザートもシェアしてしまう…今日3度目の「『逆流性食道炎』が今朝判明したばかりなのに」である…これを読んでる人も流石に呆れて、もう笑えないだろう(涙)。

今日のダイアリーは「地獄夫婦」改め、「逆流夫婦」誕生秘話をお届けしました(笑)。