深夜の「地獄宴会」、そして現代美術ウイークエンド。

金曜の夜は、アッパー・イースト・サイド83丁目に在る和食店「D」で、妻とサックリ・ディナー。相変わらず天才的なシェフJさんの料理を堪能し、帰りにはこれまた奇跡的に美味いカレーを、お土産に頂く。

家に帰り、「さぁ、オヤスミ」と行きたい所では有るが、この晩は、深夜からゲストを2人迎えての「深夜の地獄宴会」が予定されていた。

そのゲストとは、ご近所の建築家S氏と、日本から撮影主張中のゲスト、某化粧品会社クリエイティヴ・ディレクターのA氏で、この2人が同席するのは2度目なのだが(拙ダイアリー「オトナの課外授業」参照)、両氏には実はもう1つ「共通項」が有る。それはTBSの「情熱大陸」で、A氏の奥さんのAさんとS氏が今同時に取材撮影中との事…2週連続で友人が放映されるかも知れないので、大いに楽しみだ。

筆者と違って多忙な両氏は、11時過ぎにA氏、12時半過ぎにS氏が地獄パレスに漸く来殿…プロセッコやワインで乾杯し、深夜の「地獄宴会」がスタートした。アートや震災復興、ビン・ラディン殺害等話題も絶えず酒も進み、途中時差ボケと疲労の為A氏が少しお休みされたが(笑)、「地獄宮殿」独特の時間の流れに乗った様で、気が付けば何と明け方の5時15分!

その6時間後には機上の人と為るA氏とは日本での再会を約し、S氏とは暫しの別れをして解散。

そんなこんなで、土曜日はゆっくりと…とはせずに、昼過ぎには、さっき「暫しの別れ」をした筈のS氏と妻と3人で、近所の「F」のテラスでブランチ。オムレツなどを食べると準備万端、3人揃って現代美術に下見会ツアーへと出発した。

先ず向かったのは、サザビーズ。今回の目玉は、ウォーホルの「マルティプル『ジャッキー』」で2000万ドルの下値だが、観てみると意外に魅力に欠け、少しガッカリ。しかしベーコンの本当ーに素晴らしい「Nude」や、1階ロビーに展示してあるカプーア等は、一見の価値が有る。そして1点、「欲しい物」が有ったのだが、それは当然内緒(笑)。

ヨーク・アヴェニューを後にして、今度はクリスティーズへ。今回のクリスティーズのラインナップは本当に素晴らしく、下見会と云うよりも、まるで「現代美術史の教科書」を観て歩いている様だ。

一番好きだったのは、やはり60年代初頭のウォーホルの自画像2点(シングルと4枚マルティプル)で、これは真剣に良い作品である。これ等を観ていると、もし予算を考えずにウォーホルを一枚だけ持つのならば、やはり初期の「セルフ・ポートレイト」に為るだろうと思う。ポップの権化、自己主張の極み、そして若い野心…ウォーホル芸術の全てとその根源が「初期自画像」に有る様な気がするからで、しかもそれは「マリリン」や「リズ」、「エルビス」よりも強いと思うからだ。

またベーコンやライマンの作品も素晴らしいが、今回はアフタヌーン・セッションも充実していて、何とも可愛い(滅多に思わないのだが)奈良美智スカルプチャー「The Girl with the Knife in Her Side」や、カプーアの美しい「Space as Object」、社屋玄関前に展示中のマーク・クインの作品「Myth Venus」(ケイト・モスにそっくり)等の立体作品のクオリティが高い(シーグラム・ビルの巨大「ベア」は、ご覧に為られただろうか?)。

そして今日の午後は、フィリップスへ。先ずパーク・アヴェニューの「イヴニング」の展示を観る。この会場に行くのは実は初めてだったのだが、素晴らしいロケーションとスペースで、唯一残念なのは「パートII」を観るのに、チェルシー迄行かねば為らない事だけだろう。

リチャード・プリンスの「ナース」やジョージ・コンドが素晴らしかったが、その展示作品中に、何と「ジョージア・オキーフ」の花の作品が入っていて、その作品は他の現代美術作品に全く引けを取らないどころか、凄い存在感を放っていたのが印象的だった…流石オキーフ、である。

その後はチェルシーの方に向かい、「パートII」作品を観終わってフィリップスを出た途端、友人の現代美術史家のロバートと奥さんにバッタリ…最後の最後まで「現代美術」な週末で有った訳だが、印象派のセールが何処となくイマイチ感が有っただけに(イヴニング・セールの翌日、サザビーズの株価が下がったそうな)、火曜日から始まる現代美術の「イヴニング」の結果が気になる所である。