タイム・スリップして得た「世界に二つだけの…」。

突然だが、「パリソワーズ」と云う食べ物をご存知だろうか?

通称「パリソワ」とは、スープの一種で、冷製ポタージュ「ヴィシソワーズ」のアニキ分で有る。

どう「アニキ」かと云うと、そのヴィシソワーズの中に、煮凝りと為った冷製コンソメが入って居り、その2つの味を一緒に頂くのだ。

さて、子供の頃からの行き付けレストラン「O」に、久々に両親と赴いた。「O」のパリソワは、トロッとした絶妙な味のヴィシソワーズと、これまた何とも絶妙な味付けの、プルプルのコンソメのハーモニー。そしてその両者を混ぜて頂くのだが…あぁ、何て美味かったのだろう!

此処数日は、そんなパリソワな幸せな晩も有ったが、モノ探しも本格化。個人コレクターや業者を訪ねて廻り、名品やそうでないモノ(笑)を観続けている。

そんな中、昨日訪ねた顧客は都心から2時間程の山中にお住まいで、朝から乗客たった3人のバスに揺られて、1時間15分。到着すると今度は、バス停に迎えに来てくれた、ショパンの曲のみが車内で掛かり続ける顧客の車に30分程乗り、やっと目的地に着く。

さてその「目的地」だが、其処は顧客宅では無く、某県山中に在る、嘗て某国大使館だった和風木造建築を移築したレストランで有った…「腹が減っては戦は出来ぬ」と云う事だ。

その嘗て大使館だったレストラン「S」は、その「入り母屋総檜造り」の二階建建築が本当に素晴らしく、門から玄関迄の石畳、濡れ縁から観る枯山水の庭も、周りの山々の緑と調和し、一旦家屋内に入ると、高い天井やガッシリとした階段等に、昭和初期の古き良き時代の重厚感が溢れている。

美しい女将(?)に案内され、旧大使室だった個室に入ると、其処には大きなアンティークのシャンデリアが下がり、その下にはテーブル・セットされたマホガニーの大きなテーブルが。
出て来た料理は、お弁当と小鍋…色取り取りの和食で味は悪く無かったが、大きな窓から観る素晴らしい天候に恵まれた風景と、タイム・スリップした様な重厚な雰囲気が、やはり此処では「ご馳走」なのだった。
食事後は、再び緑の眩しい田圃や森を見ながら、ショパンの曲だけが掛かる車を走らせ、顧客宅に向かう。
そして仕事の成果はと云うと、恐らく世界に2点しか残っていないと思われる名品の出品が決まったのである!

帰りは、ショパンを聴きながらバス停迄送って貰い、その世界にたった2つしか残っていない作品を大事に抱え、今度は乗客たった4人のバスに乗り込んで、東京へと戻ったのだった。

タイム・スリップした様な、何とも不思議で実り有る1日なのでした。