浮世絵萬歳!:"EDO POP"@Minneapolis Institute of Arts.

有力アート・マーケット紙「Baer Faxt」で、2011年度の「ベスト&ワースト・アート・ショウ」が発表されたので、今日はその話題から。

先ず、名誉有る美術館での展覧会を対象とする「Best Museum Show US」は、MoMAで現在開催中の「デ・クーニング」展(拙ダイアリー:『六条の御絵所』としてのウィレム・デ・クーニング」参照)が見事受賞、そして「名誉賞」として、グッゲンハイムでの「カテラン」展(拙ダイアリー:「『カツラン』の観た『カテラン』」参照)も選ばれた。

またヨーロッパでの美術館展覧会対象の「Best Museum Show Europe」は、テイト・ギャラリーでの「リヒター」展が選ばれ、バイエラー財団での「ブランクーシ&セラ」展も、カテラン同様「名誉賞」を受賞。

そして「Worst Museum Show US」は、 ニュー・ミュージアムでの「カーステン・ホラー」展、ヨーロッパでの美術館「Worst」は、何と「ヴェニスビエンナーレ『イタリア館』」が選ばれた…。

また、ギャラリーでの展覧会対象の「Best Gallery Show」は、ぐうの音も出ない、ガゴシアンの「ピカソ」展だったが、「Worst Gallery Show」の方もガゴシアンの「フランチェスコ・ヴェッツォーリ」展が選ばれ、世界最強画廊の同時受賞と為った…或る意味、流石ガゴシアン、である。

その他「Best Auction House」部門では、(幸いにも:笑)クリスティーズが1位で35%、次点サザビーズが19%、以下フィリップスが18%でその他が28%と為っている…。

今回のこの結果、個人的には色々と意見も有るが、皆さんに取っては如何だっただろうか?

さて木曜の夜は、友人のアーティスト斎木克裕君の展覧会「RESOLUTION」のオープニングに出席する為、チェルシーのHPGRPギャラリーへ。

会場に着き斎木君やギャラリー・ディレクターの山谷氏に挨拶をすると、その後は久しぶりに会ったオスカールや、近藤聡乃さん等の知人友人多数と歓談。

展覧会は、ジャッドやルウィットを思わせるドローウィングの「Frames」シリーズや、「Arrangements」の様な3D作品等も含めて、斎木君の新旧作取り混ぜての展示だったが、以前から綺麗だなぁと思っていた、飛行機のシリーズ「Place」の「床置き」ヴァージョンが有り、これがまた何とも美しい作品で有った!

そして昨日は昨日で朝4時に起床、5時に迎えに来た車に乗り、6時半の飛行機でミネアポリス飛ぶ…と云う強行軍で、今週末で終わってしまう展覧会「Edo Pop」を、ミネアポリス美術館へ観に行った。

旧知の、日本美術の担当学芸員で副館長のW氏に迎えられ、各方面から素晴らしいぞ!との評判を聞いていた、「EDO POP」の展覧会場へ早速向かう。

会場は多くの人で賑わい、一般・学生向けのレクチャー・グループも多く、ミネアポリスでの日本美術の人気の程が知れるが、W氏の談に拠ると3万人の入場者を既に記録しているそうだ。

展覧会は、初期鳥居派や石川豊信等の丹絵や紅摺絵等の初期浮世絵群、そして春信の素晴らしいコレクションから始まる。

そして写楽(蝦蔵、門之助、常世)や、珍しい歌舞伎堂艶鏡(二世中村野塩、二世中村仲蔵、三世市川八百蔵の「寺子屋」役者大首三枚続が素晴らしい!)等の役者絵を経て、「美人コンテスト」を思わせる長喜や歌麿美人画コーナーを過ぎると、「江戸百」や「大浪」等の広重や北斎の風景画の名品が続き、筆者も大好きな、素晴らしい状態の北斎「百物語」迄、全く眼が離せず飽きる事が無い。

だが、この「EDO POP」展で驚くべきは実はこの先で、次の部屋には山口晃の大作や、奈良美智の浮世絵シリーズ、そして浮世絵をモチーフとする、例えばGajin Fujita (LA)やJulian Opie(英国)、Iona Rozeal Brown(NY)等の 現代美術家達の作品が並び、そしてこの展覧会は最終的に、束芋の「HANABI-RA」と青島千穂の「City Glow」の両映像作品で締め括られるのだ!

観終わった感想は、もう「GREAT !」の一言…!「浮世絵」を、例えばマス・コミ的ポピュラー・アートとして捉え、今のマンガやアニメ、日本の現代美術・工芸(現代面打師、山口毘堂に拠る「写楽面」等も出展されている)、外国美術への影響をきちん系統立てて見せるこの展覧会は、恐らくアメリカ、いや世界でも初の試みでは無いだろうか。

さてW氏は、コンサバな学者達からの評判を少々気にされて居たが、そんな心配は決して無いと思う。

20世紀に浮世絵を研究してきた人々のその血と汗の成果が、21世紀の人間に因って新たな視点を加えられ、今ミネアポリスと云うアメリカの街に在る美術館の浮世絵展に、これだけ多くの人を呼び感動を与えているのだから…。

実は昨日、或る個人的な事件が起きて、「浮世絵」を観ている間少々エモーショナルに為って居たのだが、そんな事も考えさせられた、素晴らしい展覧会で有った。