虚しき「料亭弁当」。

ハリケーン「アイリーン」が、ニューヨークを通過したらしい。

今の所、友人達に大きな被害が無い様で安心しているが、今朝天気予報を見たら、9月1日〜2日に台風が東京を直撃する可能性が有るとの事…31日に東京を発つ筆者は、マジにラッキーで有る。「災害除け・孫一守り」でも売り出そうか(笑)。

そして、ウサイン・ボルト。メルト妻と世界新記録誕生の瞬間を見ようと、テレビの前で眼を凝らしていたが、決勝レースが始まる直前のボルトの余りの余裕の態度に、思わず妻に「いや、人間何が有るか分からんからなぁ…」と呟いたその数秒後、ボルトはフライングをして失格…相変わらず「勘」だけは鋭いので有る。

「何も、一寸位スタートが遅れても充分勝てるのに、何故?」と思うが、このフライングは、以前「世界一」のランナーに為る事だけを考えていたボルトが、「記録」を意識し始めたからでは無いだろうか。

さて、屋久島から帰って来て以来、自分の身に起きた「或る変化」に気付いた。
それは特に地下鉄や電車に乗る時、駅のエスカレーターでは無く、自ら進んで階段を登る様に為った事なのだが、実はそれだけでは無く、屋久島の森や沢歩きの際に、ガイドのTさんに教わった歩き方を、何と自然に実践している自分が居た。

先ず「足音」を立てない様に歩く…要は、上げた足を、土踏まずに重心を置いて置く様に意識する。

そして階段を上がる時には、上げた足を下ろし階段に付いてから、次の足を上げる様にする。

これ等のテクニックは、膝を痛めない様にする為の極意だそうで、都会でこの歩き方を実践している筆者を見て、「ヤルな、アイツ…」と思う「プロ」も多いに違いない(笑)。

そんな昨日は、京都に日帰り出張。

顧客との打ち合わせが有ったのだが、その前に京都国立博物館で開催中の、「特別展 百獣の楽園 美術にすむ動物たち」を、ダッシュで観に行く事にした。

この展覧会は、そのタイトルに有る様に、絵画や工芸品の中に描かれる、動物達に焦点を当てた企画で有る。

タイトルからすると、何と無く夏休みの子供向け企画に思えて、余り期待しないで行ったのだが、豈はからんや、出展作品は名品揃いで有った!

例えば、大好きな若冲の「百犬図」、頂妙寺宗達の「牛図」双幅や、大仙院の元襖で今は軸装と為って居る、元信の「四季花鳥図」。

有名所では雪舟の「倣梁楷黄初平図」や、萬野美術館旧蔵の北斎「狐狸図」双幅、式部輝忠の「巌樹遊猿図屏風」等が所狭しと並ぶ。
しかし、筆者の眼を最も奪ったのは、例えば高山寺のつがいの木造「鹿」や重文「十二類絵巻」、そして非常に珍しい、知積院蔵鎌倉期の重文「童子曼荼羅」と、久米田寺蔵平安期の重文「星曼荼羅」で有ったのだ。

童子曼荼羅」は、子供を悩ます「十五の疾病」を獣の姿をした悪鬼として描く。画面中央には「栴檀乾だつ(『だつ』は『門構え』に『逹』)婆王」(せんだんけんばつだおう)が座り、その周りを悪鬼(牛、獅子、狐、馬、蛇、鶏、木菟、雉、猫、猪、豹等)が取り巻いて居る。

そして「星曼荼羅」は、インドの占星術に起源を持つ曼荼羅で、特に画面青枠中の十二宮の星座で、山羊座が「大魚」、射手座は「弓」、双子座は「夫婦」、乙女座が「二人の女性」で表されて居る以外は、現在の西洋占星術と同じで有る所が、非常に興味深かった。

顧客との重要な打ち合わせを終え、後ろ髪を引かれながら京都駅に着いたのだが、大好きな京都に今晩留まる事が出来ないと云う悔しさを少しでも紛らそうと、初めて京都駅の「料亭弁当」で「田ごと」の弁当(2600円)を買い、東京行き「のぞみ」に飛び乗った。

「のぞみ」が動き出し、少しして、綺麗に包装された豪華な弁当を取り出す。

紐をほどき、蓋を取ると、鱧寿司やの美味しそうな料理が盛り沢山…。そして、その弁当は、確かに美味しかったのだが、何かしらの虚しさを残し、それはこの弁当が、飽くまでも「京都の夜」の「代替品」だからなので有った。

「京都の夜」に、「代わり」は有り得ない。