「レセプション」は続くよ、何処までも…。

「Asian Art Week」が始まり、此処の所連夜のレセプションに出席中。

「レセプションに毎晩出ている」と云うと、羨ましがる人も居るのだが、一日中立ちっ放しの下見会の後等、あちこちのギャラリーや会場に移動して出席し、多くの顧客達と会って話をする事自体、或る意味「千本ノック」或いは「居残り練習」的で、かなりの疲労を伴う。

況してや、筆者はこう見えても非社交的なので、出来得る事ならなるべく行かずに済ませたいのが本音なのだが、しかしそれでも体に鞭打って出掛けるのは、この「オープニング・レセプション」が、特にオークション直前のこの時期、ビジネスの面で意外と重要なオケージョンだからなのだ。

さて、その重要な機会での最重要事とは何かと云うと、実はそれは「噂話」なので有る。

学者、ディーラー、コレクター、美術館館長や学芸員達が集まるこの場では、各ギャラリーやオークション・ハウスの出展作品、誰がどの作品を狙っているか、どのギャラリーの売り上げが良いか、オークションの目玉作品のハンマー・プライスが何れ位迄上がるか、そして作品の真贋について迄ヒソヒソと語られるので、皆グラスを片手に耳を「ダンボ」にして情報を得、自分のビジネスの参考にするのだ…油断も隙も有った物じゃ無い(笑)。

そんな中、一昨日の夜はジャパン・ソサエティで始まった展覧会、「Deco Japan: Shaping Art and Culture, 1920–1945」のオープニングへ。

この展覧会は、所謂「大正ロマン」時代の「モボ・モガ」が好んだアートやファッション、デザインを集めた物だが、個人的にはクリスティーズで嘗て扱った事も有る「目黒雅叙園」的絵画や深水等の新版画が好きなので、楽しめた展覧会で有った。

そして昨日からは、クリスティーズで下見会が開始。

朝から個人コレクターや美術館等の重要顧客が訪れ、幸先の良いスタート…初日にしてはそれなりに忙しい1日だったが、そのくたくたに為った夜は夜で、「再び」レセプションへ。

先ず行ったのは、アッパー・イーストサイドの「Sebastian Izzard Asian Art」…此処は日本からの有力業者、ロンドン・ギャラリーとの共催展示となっているが、作品ラインナップは、若冲のスッキリとした出来の「鶴図」双幅や白隠を始めとする江戸絵画、根来や土偶等が並び、久々にお会いした「御大」村瀬実恵子先生等と歓談し、楽しいひと時を過ごした。

その後はタクシーに飛び乗って、ミッドタウンのモーガン・ライブラリーで開催された、「Asian Art Week」の盛大な「キック・オフ・レセプション」へと向かい、そして此処でも大混雑の中海老やチキンのサテを摘みながら、多くの同業者達と会って「噂話」に花を咲かせる。

そんなこんなで時間は8時半を回り、疲労の極致で家に帰り着いたのだが、「『緑』の酔っ払い」達がこの街を占拠するで有ろう「セント・パトリック・デイ」の翌日の予定を見ると、昼はギャラリー・トーク、夜はウクライナ・インスティテュートで開かれる「JADA」(Japanese Art Dealers Association)のオープニング・レセプション、その後8時過ぎからは、恐らく夜中近く迄掛かると思われる、顧客とのディナー・アポが入っているのが眼に入り、軽い目眩を覚えた…。

それでも、「レセプションは続くよ、何処までも」なので有る(笑)。