今週末は"Possible New World Record"を観に。

昨日迄アメリカ某都市に出張に行って居たのだが、その都市に降り立った時、昔観たジョン・カーペンター(METの日本美術キュレーターでは無い:笑)の「The Fog」と云うSF映画を思い出した程、街中の高層ビルの大半の上半分が「霧」で見えなく為って居て、その不気味さに戦慄する。

「これは何かの凶兆なのでは?」等とも考えたのだが、その後は無事に重要クライアント達との会見を果たし、ディナーは古くも剛健なデュプレックス・アパートメントで仏像や漆器と暮らすクライアント夫妻の御招待に預かり、味の濃すぎ無い非常に品の有る美味なフレンチを頂いたりして、充実の2日間と為った。

そして今回この街で泊まったホテル「P」がこれまた秀逸で、顧客とランチをする為にレストランに入って座ったら、先ずは部屋番号と名前を聞かれ、その直後からは「Mr. Katsuraya, what would you like ?」「How was your lunch, Mr. Katsuraya ?」「Mr. Katsuraya, more coffee ?」と会った事も無い如何なるウェイターや案内係が来ても、きちんと僕を名前で呼ぶ。こんなサービスをするホテルは日本ではそうは無いのでは無いか…流石「P」で有る。

さて本題…各オークション・ハウスの春のメイン・セールズの下見会が始まった。

今春は何より異例の出来事が有って、それは各オークション・ハウス共毎年5月は先に印象派・近代絵画セールが有り、2週目に現代美術のセールが有るのが通常なのだが、この春に限っては、何とクリスティーズが現代美術を口切に、印象派・近代絵画のセールも現代美術と同じ週に開催して仕舞う事だ。

その最大の理由は、5/11にクリスティーズの特別セール「Looking Forward to the Past」(→http://www.christies.com/lotfinder/salebrowse.aspx?intSaleid=25299&viewType=grid)が有るからで、35点のみがオファーされるこの特別セールでは、19〜21世紀の3世紀の間に渡り、例えばモネやウルス・フィッシャー等に拠ってこの世に産み出されたアート作品が同時に展示・売却される。

そしてこのセールには、ドイグ、ピカソジャコメッティ、そしてデュビュフェの4点の「Estimate on Request」作品を含む、9点のエスティメイト下値1000万ドル超えの作品が出品され、ラインナップされた他のアーティストを見ても、デュシャン、フォンタナ、ロスコ、河原温イヴ・クラインモンドリアン、ウォーホル、そして「世界最高価格・新記録」樹立か?との噂も有るピカソの「アルジェの女」(本作品に就ては、拙ダイアリー:『「白蘭の歌」に観る「良き時代」』参照)も含まれた、作家も価格も超弩級のセールなのだ!

また、このセールを含めての今春のクリスティーズの現代美術作品のラインナップは凄まじく、現在開催中の下見会はまるで世界最高峰の現代美術館の如し…その現代美術イヴニング・セールはと云うと85点のオファーで、ベーコン「Portrait of Herietta Moraes」とウォーホル「Colored Mona Lisa」、そしてロスコの「No.10」の3点の「Estimate on Request」を含む12点が、下値1000万ドル超の作品。

そして価格は別にしての僕のオススメはと云うと、上記ベーコンとフロイドの超素晴らしい「Benefit Supervisor Resting」、フランツ・クラインの「Steeplechase」、後はライマンの「Bridge」だろうか…何れにしても、大変な売り上げに為るに相違無い。

それに対してのサザビーズは、印象派のラインナップが凄く、ゴッホやモネがこれでもかと並び此方も眼が離せなかったが、そのサザビーズは火曜日に「印象派・近代絵画セールを終え、ロットでは78%、総額3億6834万4000ドル(約438億3300万円)を売り上げ、トップ・ロットはゴッホの6633万ドル(約78億円)、次点がモネの「睡蓮」の5401万ドル(約64億2000万円)で有った。

なので、今週末はそこいらの美術館のレベルを遥かに凌ぐクオリティの現代美術と印象派・近代絵画を堪能し、世界最高価格新記録を達成するかも知れぬ「アルジェの女」を観ない手は無い!(新装「ホイットニー」は大混雑だろうし…:笑)

君も「歴史の証人」に為れるチャンス…クリスティーズへ走れ!