この秋の「印象派・近代絵画イヴニング・セール」の結果は、如何に?

ニューヨークは寒くなって来た。

さて、iPhone-4Sが発売されて暫く経った。そこで、既に日本でも知られているかも知れないが、今此方でこんな動画が流行っている(→http://www.carbonated.tv/blogs/iphone-4s-siri-vs-japanese-man-video)…日本人としては身に詰まされる内容だが、痛い「現実」でも有る。

31日の夜は10時を廻った頃、「冥途」の後は「地獄」だろうと(笑)、かいちやうとお弟子さんのM氏とS君、そしてA姫がジョインし、地獄宮殿で飲み会。

かいちやうは当然お疲れ気味で、「何時もの様に」途中でダウンしてしまったが、残りの人間で「今のお茶」の状況と改善策を話す。やはりお茶は「見栄」や「意地悪」、「派閥」や「右習え主義」等を捨てねば、到底利休さんの思想を具現する事は出来ないとの意見が噴出…皆で頑張って、変えて行かねば為らない。そんなこんなで夜中1時位まで熱く語った飲み会も終了し、かいちゃうも無事にご帰国…本当にお疲れ様でした!

翌1日の昼前には、旧知の美術ライター橋本麻里さんがクリスティーズに来社されたので、「印象派・近代絵画」の下見会をご案内する。ブランクーシやクレーを確りと見た後は(勿論お値段も!)、未だ作品が集まっていない時期では有ったが、普段は関係者以外立ち入り禁止の倉庫に女史をご案内。

そして夜は、その印象派の「イヴニング・セール」…先ずは7時からのセールに備え、VIP顧客を「スカイボックス」にご案内する。

この「スカイボックス」とは、セール会場を上から見渡す事の出来るVIP専用の小部屋で、室内には其処からビッド出来る様に、テレビ・モニターや電話が備え付けられ、シャンペンやワイン、スナック等も完備、バトラー迄待機していると云う、社員ですら一度は其処からオークションを観て買ってみたいと思う「夢の空間」なのである。

そして、クリスティーズのイヴニング・セールの結果は、実に厳しい物となった。82点の出品中売れたのは51点で、総売り上げは1億4077万3500ドル(約109億8000万円)、1000万ドル以上のエスティメイトが付いていた、ドガのブロンズとピカソ2点が不落札だった為に、ヴァリュー・ベースでは55%に留まった。

トップ・ロットは、新アーティスト・レコードと為ったエルンストの「盗まれた鏡」で、400-600万ドルのエスティメイトに対して1632万2500ドル(約12億7200万円)、次が世にも素晴らしいブランクーシの「最初の叫び」で1486万6500ドル(約11億6000万円)であったが、もう一点特筆すべきは、ピカソエッチング「泣く女I」が512万2500ドルで売れた事で、一枚の版画としての史上最高価格を記録したので有る(それ迄はムンクの「吸血鬼II」:269万400ドル)。

クリスティーズのセール後、「Le Bernardin」でのVIPクライアントとの食事中、「サザビーズスペシャリストはこの結果を見て、今晩は夜を徹して『リザーブ価格』を下げる作業に励むだろう」と話していた翌日のサザビーズはと云うと、その「作業」が功を奏したのか、出品71点中57点が売れて総額1億9980万4500ドルを売り上げ、今シーズンの勝利を収めた。

此方のトップ・ロットはクリムトの非常に美しい風景画「Litzlberg Am Attersee」で、4040万2500ドル(約31億5000万円)。その他にも、ピカソの大作「L’Aubade」が2304万2500ドル(約18億円)と、アーティスト・レコードを樹立したカイユボットの「アルジャンタイユ橋とセーヌ河」が1800万2500ドル(約14億円)で売れ、1000万ドル以上で売れた作品が3点出た。

そして来週は、愈々注目の現代美術ウィーク。

今回のクリスティーズのランナップは、リキテンスタインやデ・クーニングを始め、個人コレクションも有り超強力なラインナップなのだが、一抹の不安を残す印象派セールの結果で有った。

村上隆氏主導のチャリティー・オークション「New・Day」も有る事だし、「現代美術」で巻き返さねば!