クリスマスには、ダウンタウンで「精進」を。

ニューヨークも、愈々クリスマス・シーズンに突入。

マンハッタンの街は物凄い人で溢れ、店は混雑の極み。しかし、それでも此方のクリスマスはやはり一味違っていて、ロックフェラーの巨大ツリーの思ったよりも控え目なデコレーションや、救世軍の鳴らす鐘の音、最近では廉価店に押され気味の五番街で、孤峰の如く頑張っている「カルティエ」のビルに毎年飾られる赤いリボン等は、この街のクリスマスを辛うじて品の有るものに保ってくれている。

そんな中、23日で一応今年の仕事納めとなった筆者は、夜はイースト・ヴィレッジの精進料理店の「KAJITSU」へ。

シェフの西原さん曰く、「桂屋さん、日本&京都帰りなのに、ウチなんかで良いんですか?」…しかし、この「嘉日」の料理は、実際京都でも中々食べられない料理なので有る。

それは何故なら、米国の食材を巧く「伝統的精進料理」に利用しツイストするからで、例えばこの日も大層美味しい「焼き胡麻豆腐の白トリュフ載せ」や「粟麩と西洋蕪蒸し」、アイディア抜群の「手製絹織うどん白胡麻仕立て」や「なめたけご飯」、そして最後に、辻村史朗作の味の良い薩摩風の茶碗のお抹茶と共に頂いた「冬至饅頭」迄、京都とニューヨークと云う異なる2つの街の、季節感溢れる料理に舌鼓を打ったのだった。

こう云っては何だが、本格的懐石や精進料理は、京都に行けば幾らでも食べられる。そしてこれは、筆者のもう一軒の大好きな店「SUSHI OF GARI」にも云える事なのだが、ベースを本格的和食に置きながらも、食材や味付けに西洋風ツイスト加える事に拠って、革新的且つ美味な料理を産み出す…これこそが、ニューヨークと云う街でニューヨーカー達に「和」の真髄を伝えるのに、或る意味最も効果的なのでは無いかと思う。

ニューヨークと云う街は、「創造」の街で有り、それは安易な「模倣」や「踏襲」を許さない街、と云う意味でもある。

料理も芸術である以上、そして日本料理が日本文化の代表で有る以上、ニューヨークのエッジー和食店は、その責務を負う事を避けられない。

ニューヨークでのクリスマスだからこそ、ここ「嘉日」が提供する様な、捻りの効いた美味しい和食を頂く…これこそ「創造の街」の醍醐味なのでは無いか。

皆さんも、是非「創造の味」を体験してみては如何だろうか?

メリー・クリスマス!