「ホワイトハウス・ロマンス」、そして「日本・韓国美術オークション」スニーク・プレビュー。

ここ数日、ニューヨークのテレビで話題に為っている、1人の女性が居る。

その女性とはミミ・アルフォード、69歳。白髪で品の有る知的な雰囲気の女性なのだが、彼女が今何故話題になっているかと云うと、自身の「或る過去」に就いての本を出版したからだ。

その本の内容は実にショッキングで、彼女が19歳の時にホワイトハウスインターンとして働き始めた直後(4日後)から、当時合衆国大統領であったジョン・F・ケネディと肉体関係を持ち(本人曰く「処女」を捧げた)、JFKが暗殺される迄の18ヶ月に渡り、ホワイトハウスやホテルで情事を重ねていたと云う内容なので有る。

彼女をホワイトハウスのプールで見初めたJFKは、その後彼女をホワイトハウス内のツアーに招待し(まるでマイケル・ダグラス主演の映画「The American President」みたいだ!)、そしてそのツアーがジャッキーの寝室に及んだ時、合衆国大統領は彼女に近寄りキスをし、そのままベッドに倒れこんだのだそうだ。

昨日この女性がNBCの朝番組に出演していて、そのスキャンダラスな内容やインタビュアーのキツ目の質問に落ち着いた雰囲気で語り答えていたが、そのインタビューに於いても重要なポイントと為っていたのが、JFKに拠る「アビューズ」や「パワー・ハラスメント」が有ったか否か、で有った。

アメリカでは、この手の話題と問題に事欠かない。しかしそのインタビューで彼女が実際に答えていた様に、確かに1963年当時のアメリカ合衆国大統領、謂わば「世界で最も権力の有る男」の「要求」に、彼女は決して逆らえ無かっただろうと思う。そしてその意味を踏まえて、「Abuseで有ったと思う…でも、私は嫌では無かった」と云う彼女の答えは、非常に正直なモノなのでは無いだろうか。

この手の話は、特にアメリカでは慎重にしなければならないし、この「墓場迄持って行く筈だった」彼女の話が真実かどうかも疑わねば為らない…しかし、JFKと云う男がどれ程清廉潔癖な男だったか知らないが(「カーライル」に専用の部屋を持ち、「マリリン」をも墜した男なのだから!)、45と云う男盛りの年齢にして「世界で最もパワフルな男」になった男が、「英雄色を好む」では無いが、眼の前に居る19歳の美しい女の子を口説きたくなる気持ちは「個人的には」(此処は強調して置かないと:笑)判るし、そこに自然発生的な「力関係」が生じたとしても、そう為ってしまった結果に関しては、「当事者」以外は無闇に責められないのでは無いかとも思う。

それは彼女が、JFKが妻帯者で自分よりも26歳も年上の「オトナ」だと知っていた事、そしてそれが「アビューズ」だったとしても、あれだけ「ハンサム」で「力を持つ」男性に彼女が惹かれ、抱かれ、関係を続ける事が「嫌では無かった」所に、或る種「ピグマリオン」的な年上男性との「ロマンス」を感じるからである。

此方も当時、インターンをしていたモニカ・ルインスキーとビル・クリントンとのホワイトハウスでの情事を彷彿とさせるこの話が真実だすれば、上に記した理由で、筆者は「そう云う事も有るだろう」位にしか思わないのだが、しかし一点だけ、何故彼女が40年近く前のこの事を今持ち出してきたのか、彼女が話す理由を聞いても筆者は未だに釈然としない…今年が大統領選挙で有るが故の「民主党政権を貶める為のプロパガンダ」では無いかと思ってしまう筆者は、考え過ぎだろうか…。

さて生々しい話題はこれ位にして、今度は爽やかな話題を(笑)…来月21日開催予定の「日本・韓国美術オークション」のカタログが、やっと校了したのだ。

今回の出品作品は都合200ロット弱なので、数も少なくこじんまりとしたセールなのだが、自画自賛させて頂くと、今回のセールは「山椒は小粒でピリリと辛く」、決して内容は悪くないと思っている。ので、今日はその日本・韓国美術オークションからの、「ハイライト・スニーク・プレビュー」をお届けしよう。

先ずは日本美術セクションから、慶長末から元和初め頃の作とも云われる、紙本金地著色六曲一双の「洛中洛外図」屏風。

この作品は、実は筆者が長い間探していた作品なのだが、「或る所」から「ひょんな事」で出て来てしまった作品なのである…全く以て、何故に良き美術品の出現は、何時も唐突なのだろう!来歴を記せば、この屏風は一流古画ディーラーの藪本宗四郎氏、そして嘗てウチからバーク・コレクションに入った南蛮屏風と同じコレクターの旧蔵作品で、80年代に2回ほど展覧会に出て以来、某所にずっと秘蔵されて来た作品なのだ。

町絵師の手に因ると思われる絵筋だが、構図が非常に変わっていて、何と「洛中洛外図」の左隻に無くては為らない「二条城」が描かれて居らず、その代わり右隻には「伏見城」と「方広寺大仏殿」が大きくフィーチャーされ、左隻には「阿国歌舞伎」も絵の略中心に大きく描かれる。その他「金閣」や「三十三間堂の矢通し」、「清水」等の名所のディテールも良く描けていて、状態も中々良ろしい。そして肝心のエスティメイトは、70万ドルから80万ドル…「ウブさ」が魅力の逸品である。

お次に控えしは尾形乾山、正徳5年(1715年)作の「銹絵獅子香炉」。この作品は、乾山作品としては珍しく年記の有る「磁州窯」風の立体作品で、この手のモノで知られている立体作品は当作品を含めて世界にたった2点、そのもう一点は出光美術館に所蔵されている(その出光作品は、昨年の出光での展覧会「麗しの器」にも出品されているので、ご興味の有る方はチェキッ!)。

この作品は、来歴も中々興味深い。それは今から100年以上前、池田男爵家から直接この作品を買ったのは、当時2年間に及ぶアジア旅行中だったスタンフォード夫人…アメリカ屈指のかの名門校「スタンフォード大学」の創立者で有った。その後、本作品はスタンフォード大学美術館に長い間寄託され、その後現所有者の親族に買われて相続が行われた末、来月のオークションに掛かる事となった。この作品のエスティメイトは、15万ドルから20万ドル…「彫刻」として観ても面白い逸品だが、100年振りに日本に里帰りするや否や、その結果から眼が離せない。

そしてもう1点だけ、日本美術セクションからの名品を紹介しておこう…文人画の雄、池大雅の重要な書帖「水流帖」(エスティメイト:15万ー20万ドル)である。

実はこの「水流帖」の「版本」の方は長く世に知られて居り、過去に所載も色々と有った様だが、今回出品される「オリジナル自筆本」は、数年前に発見されたばかりのモノである(東博研究紀要「MUSEUM」606号に詳しいので、ご興味のある方はどうぞ)。本作品は折本形式で大雅に拠る書は107ページに及び、「題跋」を入れた全体では何と180ページにも及ぶ。大雅の書の内容は、杜甫李白、劉徳仁等の唐詩となっているが、皆川淇園や伊藤東所等の豪華絢爛なメンバーに拠る「題跋」も見所で、その重要性を高めている。

では最後に、今回のオークションの全出品作の中の「最高価格作品」を韓国美術セクションから紹介しよう。

その作品とは、18世紀の「李朝染付龍虎図壷」(エスティメイト・オン・リクエスト)…壷上部には雲文と「虎龍」(韓国では「龍虎」では無く、「虎龍」である!)が向き合い、壷の下部には再び雲文と「壽・福・康・寧」の4文字が各々丸窓の中に書かれた、辰年にピッタリの非常に「目出度い」壷なので、高額売却を期待せざるを得ない(笑)。

果たして、今春のセール結果は如何に…でもその前にひと休み…久々の休日を満喫せねば!