茶室に於ける「インドへの道」。

しかし昨日迄の「金環日蝕」騒ぎは凄かった。

が、その大騒ぎの中で2点程納得の行かない事が有ったのだが、先ず1点目はメディアが連日連夜ウンザリする程叫び続けた、「日蝕の見方」の中での「『黒下敷き』で太陽を見てはいけない」で有る。

何故なら筆者(と、恐らく同世代も)は、小学生以来散々「黒下敷き」を使って、何時も太陽や日蝕を見て来たからだ!

その上、今は全く聞かなくなった名曲(上記理由で「危険」だからか?)、「手のひらを太陽に」を毎日の様に熱唱していた身としては、「ナンだよ?」感が強い。

♪手〜のひらを太陽に透かしてみれば、真〜っ赤に流れる僕の血潮〜♪

黒下敷きや掌で、散々太陽を見て来たワタクシの眼は未だ近眼も老眼も無い…この騒ぎ、「日蝕グラス」メーカーの陰謀だったのでは無かろうか(笑)?

そしてもう1点は、「さぁ日蝕が起きるぞ…起きるぞ!」とメディアが云い過ぎる事。

この事に因って我々は驚くべき自然現象に驚けなくなってしまい、感動が薄れる事甚だしい。日蝕の事実を公に伏せて置けば、或る日突然日蝕が始まる事に因って、我々は古代人並の驚きを経験する事が出来るのに、何でわざわざ「予告宣伝」等するのだろう…「観測」するよりも、驚きたいのに!

さて先週末は、「雪舟」と「光琳」を満喫…先ずは根津美術館で先週末迄開催されていた「KORIN展」へ。
この展覧会の目玉は、何と云っても1915年以来初めて並んで展示された、根津美術館所蔵の国宝「燕子花図屏風」とメトロポリタン美術館蔵の「八橋図屏風」で、開館30分前に行っても長い列が出来てた事からも、その人気の程が知られる。
そして、会場に並べられたデザイン性の強い二双の屏風は、圧倒的な美しさで筆者を迎えた。片方ずつは今迄何度も観ているのだが、やはり二双一度に観ると、金地に映える緑青と群青の迫力と美しさがかなり増す…一生の内にもう無いと思われるこの機会は、筆者にまるで自分が「業平」になったかの様な錯覚を覚えさせてくれた。

業平化して青山を後にすると(笑)、今度はサントリー美術館で開催中の「毛利家の至宝 大名文化の精粋」展(27日迄)へ。

そして此方の大目玉は、云う迄も無く雪舟作の国宝「山水長巻」で有る。

混雑の中「山水長巻」を観ると、先ずその状態の良さに驚く…そしてその後、雪舟の驚くべき技量に、更なる驚愕を覚えるのだ!

雪舟の筆致は、緻密な様で荒々しく、流れる構図も本当に素晴らしい。そして何より「夏珪とは違う」、雪舟のオリジナリティに感動せざるを得ない。

また、この展覧会には「山水長巻」以外にも素晴らしい作品が並んで居て、李朝絵画の傑作、伝米友仁「山水図」三幅対や、井戸茶碗「毛利井戸」と大井戸「常盤」(何と素晴らしい茶碗なのだ!)、かなりのクオリティの能装束コレクション等、見処満載の展覧会…未見の方には強くお薦めしたい。

夜は夜で、夕食の約束をしていた「かいちやう」のお宅にお邪魔し、先ずは美味しいお茶を頂き、モノを拝見しながら、茶室でマッタリと雑談。

こんな時には、人とモノの縁を非常に強く感じる物だが、話題は古美術から現代美術、共通の友人達の近況迄飛び捲り、時間もアッと云う間に過ぎ去ると、「そろそろ飯でも…」と云う事に為った。

さて、この晩何を食べるかに就いては、かいちやうと協議の上、前日迄は歌舞伎町の「ママちゃん中華」Gの予定だったのだが、かいちやうも筆者もその日のお昼が重かった所為で、茶室に入る頃には「やはり今日はアッサリと、蕎麦でも」と云う話に為って居た。

が、2服目を頂き話も盛り上がると、お互いの胃も元気を取り戻した様で、夕食候補も「和食?いや、参鶏湯…やっぱり中華?」と二転三転…すると、まるで突然の「エンライトメント(悟り)」を得た禅僧の様に、かいちやうが「カレーは!?」と叫んだ。

流石「得度」されているかいちやう、夕食ですら日本→韓国→中国→インドと、「大乗仏教伝来」の道を遡る…そして赴いた、夏木マリも隣で食べていた近所のインド料理屋はマジに美味く、その後の行き付けの乃木坂のカフェのテラスで飲んだ珈琲と共に、大変結構な夜と為った。

インドへの道は、意外に近かった(笑)。