クリスティーズ、「コンテンポラリー・ウィーク」の売上世界新記録を達成!

昨日、ロンドンからニューヨークに戻って来た。

行きの酷さに反し、帰りの飛行機は定刻でスムーズだったのだが、その前にはやはり問題だらけ…クレジット・カードにセキュリティが掛かってしまい、免税店で支払い時に困ったり、ニューアークに迎えの車が来て居らず、20分近く何回電話を掛けてもリムジン会社が話中なのでキレてしまい、結局タクシーに乗ったり。

そのニュージャージー州のタクシーでは、カードが使え無い事を知らず、またこのタクシー、「EZ Pass」(日本で云う「ETC」)を搭載して居なかった為、リンカーン・トンネルの料金所では現金で払う車の長蛇の列に並ばざるを得ず、終いには家の近所で道を1本間違える始末…。

唯一嬉しかったのは、機内でエコノミー・シートに身を固めながらも、長い事観たかった「ゼロ・ダーク・サーティ」が観れた事。あんなに小さい画面でも伝わる、この作品の持つ緊迫感や、最初は拷問から眼を背けて居た主人公が段々と慣れてくる様、そしてビン・ラディン追跡にのめり込んで行きながら、自分も追い詰められて行くジェシカ・チャスティンの、時に不安に、時に強く揺れ動く演技が何故か堪らなくセクシーで、益々この女優が好きに為って仕舞った!

然し、それにしてもヒースロー空港の「Duty Free」は、何と充実しているのだろう!…JFK(ニューヨーク)やCDG(パリ)とは大違いで、アレキサンダー・マックイーンポール・スミス、トマス・ピンクやハロッズ、延いては世界のブランドを揃えたチョコ専門店迄、多彩でお洒落な店揃えには脱帽で、出張中昼間が忙しくても、ヒースロー空港と云う「最後の英国」で一寸した「ぽい」お土産が買えるのが、誠に有難い。

では今日は、先ずはそのロンドンはサウス・ケンジントンで開かれた、クリスティーズの日本美術セールの結果から。

結果はロット・ベース、ヴァリュー・ベース共に7割を切る成績で、総売上は153万2400英ポンド(約2億4000万円)。正直マァマァの出来だが、最高価格が昭和期「金の茶釜」の6万1875ポンド(約965万円)だったから、10万ドル或いは千万超の作品が無かった訳で、高額商品が売れなかったと云える。

また、浮世絵版画は強いが、陶磁器のマーケットが非常に弱かったりして、矢張り分野毎のアップダウンが激しい…これも購買層の薄さを如実に顕して居る。一刻も早く、若年層コレクター層を育てなければ為らない。

対するボナムスは、何故か総売上を公表して居らず、各作品の落札価格を足さねば為らないので大変なのだが(T君、有難う…しかしこれ、全く良い加減にして欲しい。面倒臭過ぎる!)、総売上は274万5744ポンドと良く売れたが、此方も伝板尾新次郎作の「鷹自在置物」の12万1250ポンド(約1890万円)が最高落札作品で、これだけが唯一の千万越え作品で有った。

オークションは、高額商品が無いと余り儲からないので、少なくとも1点5000万円級の作品が数点欲しい所だが、そうは問屋が卸さない。その上ロンドン・ボナムスは強いし、パリのサザビーズが日本美術セールを再開すると云う噂も有る…これから始まる9月セールの為の「モノ探し」、気合を入れて頑張らねば!

さて「結果」と云って凄かったのが、今週開催されたクリスティーズの「現代美術イヴニング・セール」だ!

そのクリスティーズのコンテンポラリー・イヴニングは72点を売り、現代美術の1回のオークションとしての世界史上最高売り上げと為った、4億9502万1500ドル(約505億円)を叩き出した。

トップ・ロットは、余り大きくない(78 x 57.4cm.)ポロックの1948年作品「No.19」で、5836万3750ドル(約59億5000万円)、これはワールド・オークション・アーティスト・レコード。2位は前回此処で紹介した、キャステリ・ガゴシアン旧蔵の「リキテン・ピカソ」こと「Woman with Flowered Hat」で5612万3750ドル、バスキアの「Dustheads」が4884万3750ドル、ロスコ「Untitled (Black on Maroon)」が2700万3750ドル、5位には何とフィリップ・ガストンの「To Fellini」が2588万3750ドルで入り、以下リキテンもう1点、リヒター、デ・クーニング、マンゾーニと、トップ10の上位9位迄が1000万ドル以上で売れ、ポロックの他にもリキテン、バスキア、ガストンにオークション・アーティスト・レコードを輩出した、モンスター・セールと為った!

それに対するサザビーズのイヴニングの売り上げは、2億9358万7000ドル(299億4000万円)に止まり、トップ・ロットはニューマンの「Onement VI」の4384万5000ドル(44億7000万円)を筆頭に、リヒター、ジャニス旧蔵のイヴ・クライン、スティル、ポロックトゥオンブリ、ディーベンコーンと7点の1000万ドル超作品が生まれ、ニューマンとリヒターはワールド・レコードを記録。

そして「デイ・セール」の方はと云うと、クリスティーズが1億476万7400ドルの売り上げで、2日間トータルが5億9978万8900ドル(約611億円!)、13日の「レオ様セール」の「11th Hour」の3872万7000ドルを合わせると、6億3851万5900ドル(約651億3000万円!)。

対するサザビーズは「デイ・セール」が8380万6875ドルなので、イヴニングと合わせて3億7739万3875ドル(約385億円)の売り上げ…「現代美術ウィーク」トータルで見ると、サザビーズに対し、クリスティーズが「来歴対決」(前々回のダイアリー参照)を含めて、2億5000万ドル以上の大差を付けて、圧勝したのだった!

これで先週の印象派の結果と合わせても、今年の春のメイン・セールはクリスティーズの大逆転勝利…正直、溜飲が下がりました(笑)。しかし、2社で1週間で10億ドル以上を売った現代美術市場…恐るべし、で有る。

と云う筆者は、今JFKのラウンジ…昨日、ニューアークJFKの中間に在る庵「地獄パレス」に1度帰った物の、ニューヨーク滞在たったの20時間を経て、今から日本へと旅立つのだ。

あぁ、既に疲れた…(涙)。