「来歴」対決、或いは来週の「現代美術ウィーク」展望。

やっと「$1=101円」に為った!…後は「120円」に為るのを待つばかりだが、これで筆者が日本に行っても貧乏な思いをせずに済む(涙)。

そんな先日、2人とも家に居たのにも関わらず、ウチのクサマヨイからメールが来て、そのメールには「富士山より美しいらしい」との彼女のコメントが付いていたのだが、添付して有ったウェッブ・ニュースを読んだら、決して笑える様なニュースでは無かったのに、大笑いしてしまった。

そのニュースがこれで(→http://sankei.jp.msn.com/world/news/130507/asi13050714130003-n1.htm)、この事件の主人公がこれ(→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%A8%E3%83%B3%E5%B1%B1)。

ウーム、成る程。この山、富士山より或る意味美しいが、何が可笑しいと云って、この山の名前(と、その意味)と「大噴火」の繋がり、そして「富士山より美しいらしい」と自分で云って居る所が妙に可笑しいし、クサマヨイっぽい(笑)…でも、この話は判る人にしか判らんのでこの辺にして置くが、あんまり笑い過ぎてあの山を「噴火」させない様に、気を付けないと…くわばら、くわばら。

さて今日は、今週開催されたサザビーズとクリスティーズの「印象派・近代絵画」のセール結果から。

先ずはサザビーズ。此方は大成功のセールで71点中60点売れ(84.5%)、総売り上げ2億3004万ドルを記録。高額商品は須らく売れ、トップ・ロットと為ったセザンヌの「林檎」4160万5000ドル(約40億円→http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2013/impressionist-modern-art-evening-sale-n08987/lot.7.lotnum.html)を筆頭に、モディリアニの「アマゾン」が2592万5000ドル、ブラックのフォーヴの風景画が1584万5000ドル、伏兵ロダンの「考える人」がエスティメイトの略倍迄伸びて1528万5000ドル、そしてピカソのメタル作品が1360万5000ドルと、4点の10億円超の商品が誕生。

そして「マドンナ」から出品されていたレジェ(→http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2013/impressionist-modern-art-evening-sale-n08987/lot.33.lotnum.html)も、ハイ・エスティメイトを超える716万5000ドルで売れ、売り上げは彼女のファウンデーションへ…セレブの力は矢張り凄い。

対するクリスティーズはと云うと、47点のオファーで44点売れ(94%)、ヴァリューでは90%、総売上は1億5850万5000ドル。トップ・ロットはアーティスト・レコードを作ったスーティン(→http://www.christies.com/lotfinder/paintings/chaim-soutine-le-petit-patissier-5677525-details.aspx?from=salesummary&intObjectID=5677525&sid=93485d3a-2c8d-4594-a187-2e6545226027)で、1804万3750ドル(約17億7000万円)、以下シャガールの「3人の曲芸師」が1300万3750ドル、筆者オススメだったシーレ「自画像とモデル」が1132万3750ドル、ミロの「絵画」が1098万7750ドルで、この4点が10億円超で売却された作品…ドランが売れなかったのが痛いが、セールとしては出来は良かったと云えるだろう。

デイ・セールの売り上げはサザビーズが5829万6000ドル、クリスティーズが3177万7500ドルだったので、今春の「印象派ウィーク」総計では、サザビーズが2億8833万6000ドル、クリスティーズが1億9028万2500ドルを売り上げた事に為り、1億ドル近くの(ウーム、100億円か…)差を以てして、サザビーズの勝利に終わった。

が、来週の両オークション・ハウスの「現代美術イヴニング・セール」には、よりホットな作品が目白押し…此処で、そのハイライトを紹介して置こう。

先ずは14日開催のサザビーズ…64点のオファーで、トップ・ロットは20世紀を代表する有名ギャラリストシドニー・ジャニスのコレクションから出品のイヴ・クライン立体作品「Sculpture Éponge Bleue Sans Titre, SE 168」(Estimate on Request→http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2013/may-2013-contemporary-evening-n08991/lot.12.lotnum.html)。そしてバーネット・ニューマンの大作「Onement VI」とリヒター「Domplatz, Mailand(Cathedral Square, Milan)」、ベーコン「Study for Portrait of P.L.」の3点が各々3000-4000万ドル、ポロックの「Blue Unconscious」が2000-3000万ドル、スティルの「PH-21」が1600-2000万ドル、トゥオンブリの「Untitled (Bolsena)」が1000-1500万ドル、クーンズの「掃除機」(タイトルが長すぎるので)の1000-1500万ドルの計8点が1000万ドル以上の作品…もう筆者の若い頃とは、時代も値段も全く違う(笑)。

そして、対する15日開催のクリスティーズは72点のオファーで、此方のトップ・ロットはキャステリとガゴシアンが嘗て扱ったリキテンスタインの「ピカソ」、もとい「Woman with Flowered Hat」で、Estimate on Request(恐らく3500万ドル位→http://www.christies.com/lotfinder/paintings/roy-lichtenstein-woman-with-flowered-hat-5684070-details.aspx?from=salesummary&intObjectID=5684070&sid=0fe74eec-46da-4916-a053-1c94bc510267)。以下、ポロックの「No.19」とバスキアの「Dustheads」で各2500-3500万ドル、またベーコン「Study for Portrait」が1800-2500万ドル、スティルの「PH-1」とロスコ「Untitled (Black on Maroon) 」が各1500-2000万ドル、リヒター「Abstraktes Bild, Dunkel (613-2)」が1400-1800万ドル、デ・クーニングの「Woman (Blue Eyes)」とリキテンの「Nude with Yellow Flower」が各々1200-1600万ドルと、此方は計9点が10億円以上のエスティメイトが付いている、モンスター・セールと為っているのだ!

そんな来週の「コンテンポラリー・ウィーク」は、或る意味両オークション・ハウスのトップ・ロットの持つ「来歴」対決と云っても良い。

それは何故なら、サザビーズのクラインとクリスティーズのリキテン作品が持つ来歴中の、「ジャニス」、「キャステリ」と「ガゴシアン」と云う3人のアート・ディーラーこそ、20世紀後半の現代美術業界を牽引し、今のホットなマーケットの「礎」を作った者達と云っても過言では無いからで、彼らの「過去の『眼』」が「今の評価」を与えられるからだ!

1989年に亡くなったシドニー・ジャニスは、元来裕福な衣料関係の会社を持つコレクターだったが、1948年にニューヨークにギャラリーを開く。当初はミロやクレー、モンドリアン等を扱っていたが、その後ポロックやデ・クーニング、フランツ・クラインやロスコを扱い、今で云う「コンテンポラリー・マスターズ」を、価格的にも美術史的にもピカソマティスのレヴェル迄引き揚げた重大な功績を持つ。

レオ・キャステリは'99年没だが、ラウシェンバーグやジャスパーが画廊に属した1958年以降、ポップ・アートとミニマル、コンセプチュアル・アートに特化し、リキテンスタインやウォーホル、ジャッド、トゥオンブリ、セラやコスース迄、超一流の作家を扱ったモンスター・ディーラーで有る。因みにソナベンド・ギャラリーのイレーナ・ソナベンドは、キャステリの元夫人で有った。

そして1945年生まれのガゴシアンは、云う迄も無く、現在世界最強のアート・ディーラー。過去30年間に及び、ピカソやベーコンを始め、クーンズ、グルスキー、リチャード・プリンス、村上隆等のアーティスト、またアヴェドンのエステイト迄をも扱うが、世界至る所(ニューヨークに3箇所、ロスに2箇所、ロンドン2箇所、パリ2箇所、ローマ、アテネジュネーヴ、香港)にギャラリーを持つ為、時差の関係上「ガゴシアンに『夜』は来ない」(笑)と云われている、恐るべきディーラーだ。

そんな「対決」からも目が離せない現代美術セールの下見会は、PULSEとFLIEZEの両アート・フェアと共に今週末から…2つのオークション・ハウスで、1点10億以上の作品が「17点」も出品されると云う何とも末恐ろしい「イヴニング」の2日間だが、ストック・マーケットも未だに新記録を出し続けて居るので、きっと物凄く売れるのだろう…正直、嬉しいような、怖いような、で有る(笑)。

オッと、その前の13日には「レオ様」のチャリティー・セール「11th Hour」@クリスティーズ(→http://www.christies.com/sales/eleventh-hour-new-york-may-2013/)も有るし、「1230 Avenue of Americas」の20Fに在るクリスティーズの「Private Sales Gallery」で今月一杯開催されている、日系アメリカ人彫刻家、ルース・アサワ(Ruth Asawa:1926生まれ)の展覧会 "Objects & Apparitions" も忘れてはならない…彼女の創る、メタルの細密工芸的アートも必見!