「フランス『っぽい』女優」讃歌。

最近夜に為ると、ヘルズ・キッチンに在る我が庵「地獄宮殿」の内部は、強烈な赤や青の光に包まれる。

それは我が家の真正面、2ブロック南に在る旧メルセデス・ベンツ販売所の社屋屋上で開催されて居る、NBCの新しい生放送クイズ番組「The Million Second Quiz」の所為で(拙ダイアリー:「『謎の屋上建築』と『オークション・スニーク』」参照)、番組を盛り上げる為の強烈なカラー・ライトが室内迄届くからだ。

この番組はたった2週間だけ放映される、テレビ番組史上最高賞金(最高1000万ドル:何と10億円!)の掛かったクイズ番組で有るが故に、如何にテレビ局から「ご迷惑をお掛けします」メールを貰っても、窓を開ければ聞こえる観客の大歓声も騒々しいし、室内を貫通する派手なライトも鬱陶しい。

況してやたった2ブロック先で、億万長者の誕生を大歓声と共に知るで有ろう事には本当にウンザリするが、これもニューヨークに住む者の宿命…仕方が無い。

そして今日12年目を迎えた「9・11」の前夜、オバマはシリアへの「攻撃猶予」を宣言し、その前々日には、2020年の東京オリンピック開催が決まっ仕舞った…決まって仕舞った事は仕方が無いが、個人的には幾つかの大きな危惧が有る。

先ずは、云う迄も無く「福島」。

これから開催迄の7年の間、一度足りとも大きな地震が起きない事を「他力本願」的に、また汚染水問題が早急に解決する事を「自力本願」的に祈るしか無いが、それにしても、首相や都知事に拠る「安全だ」との言明を信じたIOC委員達は、何ともお目出度い連中では無いか!

何故なら、この点に於いて安倍総理は件のIOC総会でのスピーチで「『嘘』を吐いている」からだ。それは彼が "I ensure that the situation is under control" と述べている箇所で(東電ですら、首相の発言を否定している)、汚染水が未だダダ漏れ状態で、海洋汚染の実状すら正確に把握出来て居ない現状の、何処をどう見たら "under control" 等と呼べるのか…福島の漁民や住民は激怒して居るに違いない。

もう1点は「金」と「人」。今迄東電に丸投げして居た癖に、1度の落選を含めた都のオリンピック招致に費やし、これから国も更に使い捲るで有ろう膨大な金を、何故福島のフィックス、そして2年半経っても未だ29万人が避難している被災者の為に使わないかと云う事と、唯でさえ遅れている復興に必要な、例えば建設業やボランティア等の人手をオリンピック・インフラに取られて仕舞うのでは無いか、と云う危惧だ。

日本を含めた世界の全てのマスコミは、「もし開催迄の間に『何か』が起こった時、誰がどう責任を取るのか?」と云う事を、日本政府及び都に明確にさせて置く義務が有るだろうに、そんな質問をするメディアが一社も居ない事に、激しく落胆する。

事の序でに云えば、以前にも此処に記したが、「オリンピックの開幕式を、一体誰が仕切るのか?」と云う事も気に為るが、此処に、東京芸術文化評議会に於ける「オリンピック文化プログラムの具体化」に就いてのリンクを貼って置く(→http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/bunka/hyougikai/17kai/index.html)。

未だ7年先の事とは云え、議事録を読むと唖然とする箇所も多いが、1つだけ云わせて貰えば、評議員(リンク中「資料1」)の平均年齢が少々高過ぎるのでは無いだろうか?…これから7年後の事を議論するには、若い世代が必須だろう。

そして如何に「秋葉原」が東京の1地区だと云っても、「あれ」だけは勘弁して欲しい(7年後迄人気が持つかも疑問では有るが)…が、どうせ権威主義的且つ商業的な視点の「政治的判断」とか云う奴を以ってして、総合プロデューサーもアーティストも決まって仕舞ったりするのだろう。今から考えただけでウンザリするが、せめて世界に恥ない、アーティスティックな物に為る事を祈りたい。

それにしても、一国のリーダーが全世界から注目される舞台で、平気で「嘘」を付く…日本国民よ、「嘘のスピーチ」で招致されたオリンピックに、そんなに浮かれて本当に良いのか?

さて、愚痴は此れ位にして、此処からが今日の本題。

先週の土曜日に香港からの弾丸出張から帰って来たばかりだが、その翌日からはアーティストやギャラリスト達との食事や、Asian Art Week開始に伴うギャラリーのオープニング・レセプション、そして下見会のセッティング、重要顧客に拠る事前下見等で多忙を極める。

が今日は、1人の余りに美しい女優の事を記したい…その女優とは、ジョアンナ・シムカス。この女優の名を知っている人は、かなりの映画ファン、然も大の「フランス映画」ファンに違いない!

ジョアンナはアラン・ドロン、リノ・ヴェンチュラと共演した名作「冒険者たち」等、60年代のフランス映画界で活躍したが、実はカナダ人。26歳の時に「失われた男」で共演したシドニー・ポワティエとその後結婚し、映画界を引退、今はインテリア・デザイナーをして居るらしいが、そんなジョアンナに久し振りに再会したのが、今回の出張のANAの機内で観た「若草の萌えるころ」(原題:「Tante Zita:ジタ叔母さん」)で有った。

本作の監督・脚本は、「冒険者たち」「追想」のロベール・アンリコ。物語は、女子学生が大好きだった叔母が死に瀕して居るのに耐え切れず、一晩中街を彷徨いながら、出逢った数々の男達と「プチ恋愛」を繰り返すと云った物で、スペイン内戦を下敷きにした青春映画の佳作で有るが、当時25歳、主演の女子学生役のジョアンナの美しさには、眼を見張らずには居られない。

彼女の魅力は、筆者のもう一人の御贔屓女優ジャクリーヌ・ビセットにも通じるのだが(拙ダイアリー:「トリュフォーの夜」参照)、フランス人で無いにも関わらず如何にもパリジェンヌらしい(ジャクリーヌもフランス人ぽいが、実は英国人)、細身で物憂げなジョアンナの美貌が堪らない。その上彼女の旦那さんは、黒人初のアカデミー主演男優賞受賞のシドニー・ポワティエですよ、ポワティエ!…そう云った意味を含めて、いや、もうサイコーの女優では無いか!

例えばマリオン・コティヤールエヴァ・グリーン、昔で云えばカトリーヌ・ドヌーヴイザベル・アジャーニ…ワタクシ好みの「フランス女優」の魅力は、此処では語り尽くせないが、ジョアンナやジャクリーヌの様な「フランス『っぽい』」女優」(例えば、若き日のジェーン・バーキンも超カワイイが、実は彼女も英国人なのだ)に惚れるワタクシは、一体何なのだろう?

今日は本題よりも、愚痴の方が長く為ってしまった(涙)…が、中学生か高校生の時に国立スカラ座で観た「冒険者たち」以来、何十年振りに機内で再会した美しきジョアンナ・シムカスは、本当ーに美しかった。

いやぁ、フランス「っぽい」女優って、本当にイイモノですね(水野晴郎風に)!

明後日から、愈々下見会が始まる。


◎筆者に拠るレクチャーのお知らせ
●「クリスティーズ・ニューヨーク日本・韓国美術セール/下見会ツアー」
日時:2013年9月14日(土)、13:00-14:30
場所:クリスティーズ・ニューヨーク@ロックフェラー・プラザ
問い合わせ:日本クラブ(212-581-2223)迄。


●「特別展 京都洛中洛外図と障壁画の美ー里帰りした龍安寺襖絵をめぐって」
日時:2013年11月16日(土)、15:30-17:00
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=220110&userflg=0
問い合わせ:朝日カルチャーセンター新宿教室(03-3344-1941)迄。


奮ってご参加下さい!