「憂国」と「幻想」な日々。

あれだけ長かった日も短くなり、朝起きても未だ外が暗い最近のニューヨーク、今週は夜の予定も多い。

月曜の夜は、某米美術館学芸員とのディナー後、タイム・ワーナー・ビル地下に在る「ホール・フーズ」のビア・バーで飲んでいた、西野達さんとコウスケ&アネタ(&ハナ)、写真家の剛君とGion氏、デザイナー後藤氏、そしてクサマヨイの面々と10時前に合流。

達さんの恐るべき「記憶力」の話で非常に盛り上がったが(笑)、暫くすると今ベルリンで活動しているアーティストの鬼頭健吾君から連絡が有り、その後鬼頭一家も合流して久々の再会、話に花を咲かせた。

翌火曜の夜は、嘗て「Haunch of Venison」が在ったバーリントン・ガーデンに開店する「Pace London」で、来月4日から開催されるオープニング展「Rothko / Sugimoto:Dark Paintings and Seascapes」の為、ロンドンに向かう直前の杉本博司氏をチェルシーのステュディオに訪ね、氏に「或る事」に就いて逆取材される。

ステュディオでの取材を終えると、氏と2人で近所のイタリアンへと出かけたが、食事と共に始まった話は、氏が手掛けたクリスティーズ・ジャパンの新オフィス(極く最近、「重要文化財」の近代建築のビルに移った)や骨董談義、新作能等から、ワインが進む程に徐々に雲行きが怪しくなり(笑)、結局最後は毎度の事ながら国を憂う展開に…。

例の「歌」を歌わずに終わったのは、此処がニューヨークのイタリアン・レストランだったからだと思うが(笑)、しかし我が国の伝統文化を世界に知らしめ、後世に残す為には、そして日本国が生き残る為には、氏の様な方が今当に必要なのである…氏には裏舞台・表舞台に関わらず、積極的に発言して頂かねばならない。

そんな話をしていたら、5人の立候補者が立った自民党総裁選が終わり、決選投票の末、初の「返り咲き」を果たした安倍晋三氏が総裁に為った事を知った。

この総裁選の結果と石破氏が負けた経緯は、如何にも「派閥的」「永田町的」と云った自民党に残る「レガシー」の為せる業だと思うが、「またか」「あーあ、やっぱり…」感のみが残る、何ともウンザリする結果で有る。

これで解散総選挙に為り、自民が勝ってしまったりすると大変な事に為るが、地方票を無視し安倍氏を選んだ自民党議員は、その事を肝に命ぜねばならない。しかし山口県民の方々は、この結果にさぞお喜びだろう…「歴史は繰り返す」とも云うが、今度こそは命を賭して役職を全うして下さるだろうから。

しかし全く以て、日本の将来は暗い…やはり「アレ」しか手は無いのか?

そして昨日は昨日で、ジャパン・ソサエティーで始まる琳派展の為に日本からいらした、来年秋に箱根に開館する岡田美術館館長の小林忠先生と、静嘉堂文庫の長谷川祥子先生、同展ゲスト・キュレーターのマシューとそのパートナーの亨君、そして我ら地獄夫妻と云うメンバーで、最近発見した超ウマの中華「C」へ(前回のダイアリー参照)。

相変わらず旨い料理を、今回は「スウィート・ポテト・パンケーキ」や「ジンジャー・ソルべ」等のデザート迄をも頂きながら、此処でも話は美術から最近の若者の礼儀作法、日本の外交・政治に及び、連日「憂国の会」の様相を呈して来たが、最後は美術の話に戻り、何故かホッとする(笑)。

さて此処で話はガラッと変わり、最近メトロポリタン美術館で「Regarding Warhol」展が始まった。

展覧会が始まってからと云うもの、筆者が訪れる有りとあらゆるウェッブ・サイトに、この展覧会の「ウォーホルの顔付きMETメンバーシップ広告」が出て来るが、これでもかと云うその投下量に「またか」とうんざりする…ホイットニーでの草間展の影響なのか、展覧会・美術館広告の打ち方の変化を感じるのは気の所為だろうか?

そしてそれと前後して、ウォーホルに関しての「一大ニュース」が世界を駆け巡った。

それは「Andy Warhol Foundation for the Visual Arts」が、数年に渡って所蔵するウォーホル作品をクリティーズで売却する事に為った、と云うニュースで有る。

このプロジェクトは、その売却益で財団の基礎ファンドを増やし、奨学金プログラム等を充実させる目的で行われるのだが、クリスティーズはこのプロジェクト・セールスに関して、考え得るマルティプルな販売経路全てを活用する事を発表。

それは例えば、初の「シングル・アーティスト・ライヴ・オークション」や「オンライン(のみでの)・オークション」で有り、「プライヴェート・セール」等で有る訳だが、このマルチ・セールスと共に展開されるプロモーションは、嘗て無い程の規模で世界のアート・ラヴァーズの注目を集め、ウォーホルの作品が史上最も人目に触れる機会に為る事は間違いないだろう。

売却される作品は絵画、版画、写真、印刷物やノベルティ等多岐に渡り、価格帯も数千ドルから数百万ドル迄、かなりのレンジに為る筈だが、今回のこのプロジェクト・セールに因って、「『Pop Art』の神」としての作家自身の制作理念通り、その最も信頼できる「来歴」を携えつつ、ウォーホルの作品は「世界で最もポピュラーな美術品」と為るかも知れない。

そして注目される第1回目のオークションは、今年の11月12日にニューヨークで開催される、「シングル・アーティスト・ライヴ・オークション」。その後「オン・ライン」でのセールは来年2月から始まり、プライヴェート・セールもその都度行われる予定。

"Everybody must have a fantasy."  by Andy Warhol

「ウォーホルと暮らす」と云う「ファンタジー」を充たす、絶好の機会で有る!…と、お勧めしながらもイマイチ「ファンタジー」に浸りきれない、憂国な日々なので有った(笑)。