「芸術至上主義」な年の瀬。

愈々年の瀬、で有る…歳の所為、では無い(笑)。

が、歳の所為とも思えるのが、体調の回復の遅さで何とかお腹の具合は治った物の、咳は未だ少し残る。そんな中でも懲りずに、ここ数日もお出掛け三昧をして仕舞った。

先ずは作家S氏夫妻と息子さんのM君と、下北のトラットリアでディナー。S氏は酷い風邪の病み上がり、そして奥さんのHさんも転んで骨折したてと云う満身創痍での再会だったが、最初は静かだったS氏も次第に調子が出て来て、食事後全員が初めて入った「建築バー」では、何時ものノリで爆笑の連続…S先生&Hさん、来年も宜しくお願いします!

その翌晩は、中学の同級生で現在N響のイケメン・チェリストF君と、渋谷の高層ホテルの最上階、夜景の美しい最高にロマンティックなバーの、窓際の席で再会。

「此奴等、出来てるんじゃないの?」との疑惑もご尤もだが(笑)、当初ハチ公前の待ち合わせも検討したのにも拘らず、2人共渋谷の飲み屋を全く知らない事に気付き、寒空の中若者に邪魔っけにされながら、行く宛無く彷徨いたく無かっただけの話なので、悪しからず。

久し振りに会ったF君は、相変わらずのイケメンだったが、頭が真っ白に為って居て、所謂ロマンスグレーの長髪に赤縁のお洒落なメガネ…如何にも音楽家、と云う感じに為って居て、デコから禿げて来たワタクシとしては、マジに羨ましい。

F君は子供達の為に、今年は毎年恒例大晦日の「ベートーヴェン交響曲全集」への出演を止めたそうだ…そして話は、昔話や近況報告、F君が「最近」聴き始めたフレディー・マーキュリーの話等尽きる事が無かったが、来年の再会を約して別れる。

そして昨日の昼間は、再び渋谷に出掛け、「芸術至上主義者」の映画を観る…ギュウチャン(篠原有司男)と乃り子さん夫婦をフィーチャーした(拙ダイアリー:「百雑砕」参照)、本年度サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門監督賞受賞作「キューティー&ボクサー」だ。

ニューヨークに40年住むギュウチャン夫婦とは、勿論何回かお会いした事も有るが、しかしこの映画の素晴らしい所は、感動的な場面も勿論有っても、彼らの生々しい生活や率直な心情に全く脚色や妙な思い入れが無く、サラッとした処だ思う。

この篠原夫妻は、日本の人からすると確かに超個性的に見えるだろうし、確かに彼等が過ごして来た時代も特別だが、こう云うアーティストは今迄ニューヨークにごまんと居たし、今も居る。例えば畏友の現代美術家西野達氏も、何方かと云うとその「芸術至上主義」な考えや生き方だし、個性も凄く強く、映画中のギュウチャンを見ていたら、達さんとダブって来て仕舞った程だ。

また、美術史家富井玲子さんやギャラリストのイーサン・コーヘン、グッゲンハイムのアレキサンドラ・モンロー等の知り合いも「如何にもこの人」と云う素で出て居るので、見て居て好感を持ったが、何しろ本作は「ニューヨークで、アーティストが生き続けるのは難しい。が、『芸術至上主義者』なら生きられる」と云う好例を見せて呉れる、素晴らしいドキュメント・フィルムで有った…必見である!

その後の夜は夜で、今年の忘年会の「オオトリ」…青山の一寸淫靡な高級カラオケバー「A」で開催された、アーティスト杉本博司氏主催の大カラオケ忘年会へ、イザ!

此方はもう凄いメンバーで、杉本氏と小柳女史と親交の深い、例えば女性建築家S女史や写真家S氏、現代画伯Y氏や現代木彫アーティストのS氏、大現代美術コレクターのT氏やO氏を始め、能楽囃子方プリンスのK氏、Y女史やU女史、古美術代表のT氏や一寸「2丁目」なN氏、ニューヨークから駆け付けたY氏ご家族等のギャラリスト達、美術ジャーナリストや杉本氏行き付けのスナックの歌友達迄、もう皆芸達者の50人(位だったか…)。

筆者も2曲程歌ったが、ワタクシ等はフツーも良い所で、では昨晩のメンバー中最も秀逸だったのはと云うと、これはもう間違い無くY画伯が歌った堀江淳の懐かしの名曲「メモリー・グラス」。もうご本人かと思う程の上手さで、吃驚…いやぁ、Y画伯、素晴らしいエンターテイナー振りでした!

で、大晦日の今日は、これから九段の美味しい蕎麦屋「I」で年越し蕎麦を食べ、夜は谷中の禅寺に除夜の鐘を突きに行く予定。

と云う事で、今年のダイアリーもこれでお仕舞い。

上に記した様に孫一の年の瀬は、最後の最後迄、アートとアーティストと過ごす事に為ったのだが、今年も素晴らしいもアートや文学、音楽や舞台、ファッションやデザイン、そしてそれ等をクリエイトしたアーティスト達と出逢う事が出来た。

来年も、素晴らしいアート&アーティストと出逢えます様に…と祈りつつ、皆さんもどうぞお元気に、良いお年をお迎え下さい!

See you next year !!