「黒白歌合戦」と「至福のひと時」。

2014年も後数日…今年も大変お世話になりました。

さて先週はクリスマス・ウィークだったが、イヴとクリスマス当日が平日だった所為か、街は何と無くそんな雰囲気も少なく、静かな気がした。

そんな世の中は兎も角も、僕の方はと云うとこのイヴの晩は大変な一夜と為って仕舞って、それは何故かと云うと、西麻布に在る「新世界」なるライヴ・ハウス・バーで開催された、「紅白」ならぬ「黒白歌合戦」(笑)に参戦したからで有る。

この「黒白歌合戦」、云って仕舞えば単なる「忘年カラオケ大会」な訳だが(笑)、この会が世界的現代美術家S氏と著名写真家/編集者のT氏の共催と来れば、単なるカラオケ大会で無い事は想像に難く無いだろう。

然もこのワタクシ、1週間前位から風邪を引いて仕舞い、何と本番2日前迄殆ど声が出なかったのだから、堪らない…そんな「歌を忘れたカナリア」状態だった僕の声が、「歌合戦」当日に何とか出る様に為って居たのは、歌神様のお陰に相違無い(笑)。

20時から開演予定の「歌合戦」、その頃に「新世界」に行ってみると未だ人はそれ程入って居らず、然し共催者のお2人は、舞台上で進行のチェックに余念が無い様子。会費を払って入場し、立派なライヴハウス会場を見渡すと、ふと奥の方に2人の美しい女性が立って居るのを見つけた。

目を凝らすと彼女達は「人」では無く、何とこの晩特別参加の「バニー・サオリちゃん」と「芸者・トモコちゃん」と云う名の「(ラヴ)パーティー・ドール」達で、彼女達の服を捲り、露わになった左の乳房を揉むと、サオリちゃんの右の乳房からは赤ワインが、トモコちゃんの右乳房からは日本酒が出ると云う仕掛けに為って居る。

一杯500円のチケットを買って早速やって見ると、乳房は流石超一級品らしき素晴らしい感触だったが(笑)、下戸の僕はその「絞り立て」の一杯を知人の女性に差し上げるしか無かった(涙)。

さてこの「歌合戦」で僕は、ニューヨークと東京での2度に渡るリハーサルでブラッシュ・アップした「替え歌」をS氏とデュエットする筈だったのだが、S氏に拠ってより一層過激に再々変更された歌詞を、会場で初めてご本人に渡される…これではもう、アドリブで言葉数等を調整しながら歌う羽目に為って仕舞い、えらいこっちゃでは無いか!(笑)

そうこうして居る内にS&T氏がステージに上がり、「黒白歌合戦」がスタート!

先ずはゼネコン系の社長さんやお嬢様に拠る演歌や、有名アーティストのパンク・ロックから始まった老若男女約50人が入り乱れてのカラオケ大会は、途中でチンドン屋も出て来て大盛り上がり。

そして、S氏と僕の替え歌デュエット「金がない」のご披露も何とか無事に終わり、その後は会場に来ていた作曲家S氏が伴奏し、そのガールフレンドで元アイドル歌手のNさんが歌うと云う「サプライズ・ギグ」も有ったりして、大盛況の内に11時頃終了。

が然し、その晩は当然それで終わる由も無く、翌日ニューヨークに戻ると云うS氏&K女史を含むアーティスト、ギャラリスト、茶人、コレクター等10名が近所のカラオケ・スナック集まり、夜中2時過ぎ迄の大熱唱…正直、可也り疲れました(笑)。

そんな疲労困憊の夜を越えた翌クリスマス・デイには、お茶碗を一碗抱えて、お昼前に宗匠を訪ねる。

その茶碗とは、見た目も何処と無く僕自身に似ている上に、手触りも掌中のサイズも抜群だったので、勿論会社勤めの僕が買える範囲の価格だった事も有り、最近教えを乞うて居る茶道具屋さんから手に入れたモノ…宗匠にその茶碗の話をすると、「一度拝見して、一服点てて進ぜましょう」と云う事に為ったので有る。

さて、日頃他人様の美術品の鑑定を生業としているワタクシでは有るが、茶道具に疎い自分が買ったお茶碗を高名なるお茶人に見て頂く時程、緊張する事も無い。

況してやその数日前、初めてそのお茶碗で自服した時、きちんと濡らしてから頂いた筈の茶碗の内側に、乾くに連れて茶色く細かい数知れぬ斑点の様な物が出現し、すわ「この茶碗には何か問題が有るのでは?」と慌てふためいて宗匠に連絡すると、「それは長年の茶渋では無いか」と丁寧に説明して頂いた上に、「孫一さん、初心者らしくて可愛いですねぇ…」と迄云われて居たからだ。

宗匠のお宅に着くと風呂敷を解き、箱を開けて茶碗を取り出し、箱書等と共にドキドキしながら宗匠の前に並べ終える。そして宗匠が茶碗を手に取ると、その眼がキラリと光った。

「確りとした、良いモノを入手されましたね!」

あぁ、良かった…こう云う経験だけが、僕に作品を鑑定される際の顧客の気持ちを知る、唯一の機会なのだ(笑)。

その後は2人で茶室に入り、宗匠にそのお茶碗で一服点てて頂き、お互いの1年を振り返りながら語らったのだが、「茶碗には、矢張り茶室が一番良く似合う」と云う当たり前の事実を再認識しつつ、年の瀬の忙中、極めて贅沢なひと時を過ごさせて頂きました。

宗匠様、年末のお忙しい中、有難う御座いました!

こうして今年の僕のクリスマスは、人と歌と茶碗とに恵まれた至福の2日間と為った訳だが、今年のダイアリーはこれでお仕舞い。

皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さい!